月刊バスケットボール6月号

【四国インターハイ2022】“2年越しの全国の舞台”で強豪相手にあと一歩と迫った四日市メリノール学院

 69‐70。あと1点が届かなかった。

 

 「令和4年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ2022)」大会1日目男子1回戦。この日最終となる5試合目で、初出場の四日市メリノール学院(三重)は、3年ぶり27回目の出場の市船橋(千葉)に惜敗した。

 

 昨年、バスケットボール部が創設されたばかりの四日市メリノール学院には、まだ3年生がおらず、2年生主体のチームだ。エースで、この試合では両チームを通じて最多の28得点を挙げた♯8塚松奎汰(2年)は、「インターハイ予選が終わり、対戦相手が市船橋と決まってからは、ずっと市船橋との戦いをイメージしながら自分たちのディフェンスの強度を上げることを意識してきました」と振り返る。そうして迎えたインターハイ初日は、「自分たちは2年生チームで失うものは何もありません。市船橋という強い相手と対戦できることに感謝して、アグレッシブな気持ちで臨みたいと思っていました」という。

 



写真は上から順に#4岩瀬宙、♯6宇都宮儀飛、♯7沖柑多、♯11小岐須泰惺(いずれもスターティングメンバー)

 

 攻防で一歩もひけをとることなく戦いきった末の結果、あと1点が届かなかった。「オフェンス面で、もう少しチームプレーを焦らず丁寧にやっていたら…」と塚松は悔やみ、「勝つためには、逃げずにリングにアタックすること。そして、ディフェンス面の細かな部分をもう少し意識することが大切だと感じました」と見つけた課題を言葉にした。

 

 敗れたとはいえ、強豪チームを相手に得られた自信も大きかった。「相手のディフェンスが強く当たってきても(ボールを)運べたところ、市船橋のような強いチームを相手にしても、一線二線を抜いてちゃんとリングまでボールを運べたところは自信になりました」

 

 そして、「冬もまた全国の舞台に戻ってくることができるように、チームも自分自身も、これからの練習で鍛えていきたいと思います」と塚松は前を向いた。

 

両チームを通じて最多の28得点を挙げた♯8塚松奎汰

 

 試合後、選手と変わらぬほどの悔しさをにじませていたのが池田大輝コーチだ。「シンプルに悔しいです。2年生チームだからという理由付けはいっさいなく、自分たちは本当に一つのチームとして勝ちに来ていたので、ただただ悔しい」

 

 池田コーチがそれほどまでに悔しさを表に出すのには訳がある。教員3年目の池田コーチは、今回のチームの2年生が中3(四日市メリノール学院中)の時に、中学チームのアシスタントコーチに就任。そして昨年、高校チームが創設されるのに際して同チームのコーチに就いた。池田コーチが教員として、そして中高の四日市メリノール学院バスケ部の指導者として過ごしてきた時間は、常に新型コロナウイルスと隣り合わせだった。

 

 「彼らは本来、中3の時に地元開催の三重全中(2020年)が目標となるはずでした。それが新型コロナウイルスの最初の年で中止となってしまい、ならば高校に上がった翌年の三重国体(2021年)で頑張ろうと気持ちを切り替えたのに、これも中止に…。私としては、1か月でも1日でも早く、彼らを全国大会の舞台に立たせてあげたいという思いがあったので、今回、その舞台に立たせてあげることができたのはすごく良かったと思います。
ただ、1点追い付かなかった、その1点が何だったのかというのが、これから冬に向けて彼らの課題になると思います。フリースローの1点なのか、相手のリバウンドからの得点なのか、自分たちのコミュニケーションミスでの1点なのか、決められるシュートが決まらなかったゆえの1点なのか…多分、そういった1点だと思います」

 

 悔しさをかみ締めながら、最後に池田コーチはこう締めくくった。「今回、勝ち進むことができていたら彼らにはとてもいい思い出ができただろうと思います。これから冬に向けて、彼らとさらにいい思い出ができるように、また頑張っていきたい」

 

 

取材・文・写真/村山純一(月刊バスケットボール)



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