月刊バスケットボール8月号

冬に向けた長期プランでインターハイを迎える正智深谷、狙うは10年ぶりのベスト4

 2012年の北信越インターハイ準々決勝で桐生第一との息詰まる接戦(91-89)を制し、チーム史上最高の3位に輝いた正智深谷。当時から丸10年を迎える今年は、再びの表彰台を目指し、来るインターハイに備えている。

 

「あのとき(2012年)は気付いたら表彰台に立っていたような感じだったので、今回はちゃんと一つずつ計画をして勝っていってまたあの舞台に立ちたいです」と語ったのは成田靖コーチ。今年は1年を通した明確なプラン立てをして夏を迎えようとしている。「まず、インターハイに関しては『ベスト4を目指そう。シードを持っているからある程度の計算もできるぞ』と話しました。そこからの3、4か月できっちり鍛えて、ウインターカップでは初の表彰台を狙おうと。なので、インターハイがチームのマックスではなく、あくまでも“ウインターカップのためのインターハイ”という位置付けで練習に取り組んでいます」

 

2012年の北信越インターハイ準々決勝 vs 桐生第一

 

正智深谷は昨年、一昨年とウインターカップでベスト8入りを果たしたが、準々決勝の壁が大きく立ち塞がっている。今年の3年生はそれを目の当たりにしてきた代だけに、その壁を越えようという気持ちが強いはずだ。

 

 そんなチームの持ち味は、機動力を生かしたハードなディフェンスと個々の能力を最大限に発揮させるべく、スペーシングを重視して堅実に得点を重ねるスタイルだ。昨年は関河虎南(大東文化大)ら3Pシューターが小気味よくアウトサイドを射抜くハイスコアバスケットを展開することが多かったが、「今年はしっかりとスペースを作りながら、1対1でディフェンスを収縮させて外の選手に打たせる、もしくは1対1で攻め切るという感じです。去年のようにシンプルに外から打つというよりも、スペースを大事にしながらオフェンスを仕掛けています」と成田コーチ。

 

 ディフェンス面では、スタメンの平均身長が182cm、最長身でも184cmというアンダーサイズを逆手に取ったかのようなアグレッシブな仕掛けで、ロースコアゲームを演出。実際にインターハイ埼玉県予選と関東大会を合わせても八王子学園八王子戦(89-83で勝利)以外は全ての試合で60点台以下に失点を留めている。




 また、留学生を擁する大型チームに対しては、「基本的にペイントの外で戦うこと。もしペイントアタックしたときは完全にクリーンな状態で打つか外にパスをさばくなど、いかに留学生の影響を受けずにシュートを打つかが大切で、マークされている選手がとにかく動いて足を使わせること。ディフェンス面では必ずリングに背中を向けさせてボールを持たせることにこだわっています。ポストアップされてボールが入る間にダブルチームを仕掛けるようなディフェンスをしていて、もらわれてからはとにかくターンをさせてシュートを打つまでに一苦労させるようにするなど、『留学生を常に動き回らせてバスケットに集中させるな』と選手たちには言っています」と、ポイントを絞りながら最良の策を講じてきた。その一つの成果が関東大会制覇であり、それは選手たちにも大きな成功体験の一つとなったに違いない。

 

 現時点での課題は好不調の波をいかになくすか。ディフェンスをベースにするチームだけに、大崩れすることはないように思うが、「浮き沈みが激しくて、調子が出ない試合では別人のようなバスケットをしてしまうんです。そうなってしまうときというのはディフェンスが安定していないとき。そしてディフェンスが安定しない理由を突き詰めていくと、最終的にコミュニケーションの部分にいき着きます」と成田コーチ。

 

 今年は性格的に真面目で優しい選手が多いそうで、それがコミュニケーションの面でマイナスの結果を生むこともあるそう。そんな中、U16、17日本代表活動を経験したルーニーがリーダーシップや声かけの面で大きく成長したことは、課題克服のための大きなステップになったに違いない。成田コーチが「ルーニーはU16の活動が終わって一旦チームに帰ってきたら、すごくしゃべるようになっていたんです。大きな声を出すわけでないのですが、パっとみんなを集めて指示をしたり。そういう姿を見ると『代表に行ってよかったな』と思います」と、プレー面以上の変化を感じたように、ルーニー自身も自らの経験をチームに還元しようと取り組んでいる。




 目標もチームスタイルも計算された中で迎える正智深谷の夏。彼らが属するトーナメント左下のブロックには仙台大明成や北陸学院といった一筋縄ではいかないチームがそろう。そんな中で成田コーチはこう決意を込めた。

 

「インターハイで強調したいのは、5アウトで一人一人がスペースを作りながら高さに影響されないバスケットすること、そして留学生のいるチームと当たったときには八王子学園八王子戦でやった対策を徹底することです。関東大会で得た成功体験を本番でも生かしていきたいです」

 

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

 



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