月刊バスケットボール5月号

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2022.07.17

町田瑠唯は「進化の過程」 - マイク・ティボーGM兼HC語る

 日本時間7月17日未明(北米時間16日午後)にワシントン・ミスティクスが行った練習後会見で、マイク・ティボーGM兼HCが現地記者の質問に答えて町田瑠唯について言及。現時点での課題や開幕からの成長ぶりについて語った。

 


練習後会見でのマイク・ティボーGM兼HC


町田は開幕以来1試合も欠くことなく、全26試合に連続出場して平均2.0得点、1.2リバウンド、2.5アシストのアベレージ。初めて体験する海外挑戦の環境下、東京2020オリンピックで日本を史上初の銀メダルに導き自らもアシスト王に輝いた実績に肩を並べるまでの際立った数字を残すことはできていないが、バックアップのポイントガードとして堅実なつなぎ役を果たしてこられている。これまでに指摘されている課題としては、シューティングに対する意識があり、また町田本人が時折口にしていたものとしてはターンオーバー数を抑えるという点があった。


こうした課題意識もある中で、町田は直近4試合で出場時間が5分に満たない試合が3試合。コンスタントに15分前後の出場時間を得ていた開幕当初に比べると、活躍の機会が減少傾向にあるのは確かだ。ティボーGM兼HCは、今の町田をどう見ているのか。


まずティボーGM兼HCが語ったのが、プレーメイク面での評価。数試合前の試合後会見で、アップテンポな展開に持ち込む町田のプレーぶりを高く評していたティボーGM兼HCは、町田のこの側面での能力をこの日も高く評価し、出場機会減少は対戦相手とのマッチアップの問題に起因していることを以下のように説明した。

 

 

「彼女のスピード、ボールハンドリングとパスを狙う視野の広さがあります。何よりディフェンスのマッチアップの問題からあまり出場させない試合がいくつかありましたが、非常に大きな相手とのプレーでしたからね。明日はくみしやすいマッチアップが来ます。でも、彼女はリーグでも素早いガードの一人ですし、ボールを持たせたら素晴らしい。それが持ち味です」
“I mean I think it's her speed and her ball handling and passing vision. You know we just haven't played her as much in some of the games because of some of the defensive match-ups more than anything, playing against really big teams. She has better match-ups tomorrow, so.
But you know, I mean she is one of the faster guards and she's you know, great with the ball in her hand. That's you know, what she is.“


町田のアシスト対ターンオーバーの比率(2.14)が、7月15日までの試合を終えた時点でリーグ全体の25位に位置していることは、ティボーGM兼HCのこうしたコメントを支持するデータと言えるだろう。

 


一方シューティングに関しては、町田がパスを第一に考えるタイプであることを理解し、ネガティブに捉えずに見守る姿勢が感じられた。町田のフィールドゴール成功率は30.8%、3P成功率は23.1%で好成績とまでは言えない数字だが、こうした結果にはプレーメイカーとしてのアプローチが内面的に作用しているとティボーGM兼HCは話す。


「(町田がシューティングで)苦しんでいるかどうかはわかりません。彼女はパスを第一に考えるタイプなだけです。パス第一のガードはときどき、自分がオープンでも打たなかったり、うつべきタイミングでパスを考えたり、シュートしながらパスのことを考えてしまうものなんです。それがシュート力に影響することもあるんですよね」
“I don't know about struggle. I mean I know she is a pass-first player. So, when you're a pass-first player, sometimes you pass up open shots or you're thinking about passing while you should be shooting or are shooting. And I think that takes away sometimes from you know your shooting ability.”
「ジムで練習やシューティングドリルに取り組んでいるときは入っていますから。これは内面的な問題で、オープンになっているチームメイトをオフェンスに組み込んで生かそうとする中でシュートを最初に考えないでいると、シューターとしての有効性を落としてしまうことも往々にしてあるものです」
“I mean, you know in the gym here out in practice, shooting drills, she makes shots. But I think it's a mental thing a lot of times when you are trying to get your teammates open and involved and you're not looking for your shot first, I think you know, that takes away you know your efficiency as a shooter sometimes.”

 


最後にティボーGM兼HCは、町田の成長について以下のように語った。


「全体的に、すべてが彼女にとって新しいことで、それまでと違うリーグでより大きな相手とプレーしています。最も学んで成長している点は、それまでにできていたことが同じようにはできないんだということではないかと思います。その中で、自分の強みをどのように発揮するかですね」
“I mean I think you know it was a whole…, everything is new to her. in a sense that you know you're playing in a different league with more size. I think learning…, I think probably growing the most is learning what things that you've done in the past you can't do as easily in this league and I think the other is then how do you play to your strength.”
「彼女は、相手を自分に引きつけない限りはプレーするのが難しくなることを学んでいるはずです。これは進化の過程だと思いますよ。まだこれから…。このリーグでは20試合ちょっとしかプレーしていないので、十分な試合数とは言えません。NBAとは、三分の一程度の試合数でしかないので比べられませんしね」
“I think she's had to learn that you know until you make defenses play you honestly, that it's harder to play you know. That's gonna be an evolutionary process for her. Still it's not… I mean we're talking about only playing 20-something games in this league. It's not a lot of games, you know. In the NBA that would be no even a third of the season. So you know it's a whole lot different.”


ミスティクスのレギュラーシーズン・ゲームはあと10試合。現在15勝11敗(勝率.577)の5位というミスティクスには、順調ならその後さらに緊迫感も高まるプレーオフでの戦いが待っている。女子バスケットボールにおける最高峰の頂点を追い求める道のりで、町田の進化も続いていく。


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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