月刊バスケットボール5月号

バスケットボール男子日本代表、アグレッシブさを失いオーストラリアに大敗 - FIBAワールドカップ2023アジア地区予選Window3

 富永啓生が3Pショット11本中5本を沈めて18得点を挙げた男子日本代表。しかしチームとしての結果は非常に厳しいものだった。

 

 7月1日にオーストラリアで行われたFIBAワールドカップ2023アジア地区予選Window3で、東京2020オリンピック銅メダリストの同国代表と対戦した日本は、52-98の46点差で敗れた。

 


東京2020銅メダリストのオーストラリアに歯が立たず、日本は46点差で敗れた(写真/©FIBA.WC2023)


☆FIBAワールドカップ2023アジア地区予選Window3、日本代表試合結果(7月1日)
日本 52(13 04 10 25)
オーストラリア 98(22 25 21 30)
日本トップパフォーマー
富永啓生(ネブラスカ大学) 18得点、3P成功率45.6%(11本中5本成功)、1リバウンド、2アシスト、2スティール
藤井祐眞(川崎ブレイブサンダース) 8得点、3アシスト
西田優大(シーホース三河) 9得点、4リバウンド、1スティール
ルーク・エバンス 6得点、6リバウンド


序盤はほぼ互角の展開で、試合開始3分過ぎに吉井裕鷹がトップから3Pショットを成功させた時点では7-5と日本がリードを奪っていた。しかしこの後、長い沈黙の時間が始まってしまう。身長216cmのセンター、ソン・メイカーにテーブス海と吉井が立て続けにブロックショットを食らって以降、得点が止まる一方で、オーストラリアに12連続得点を許し一気に7-17と2桁点差のビハインド。第1Q残り2分を切ってから富永の2連続3Pショットで13-17と食らいついたものの、率直に言って試合になったのはここまでだった。


第2Qは4得点のみ。オーストラリアに次々とペイントを攻略され、3Pショットの“土砂降り”に日本のディフェンスは崩壊した。前半を終わって17-47。富永の2連続3Pショットの後は4-30という一方的な展開だったことになる。第3Qを終わって日本の得点は27。一つのクォーターでも狙えそうなボリュームの得点だった。


試合後の会見で、トム・ホーバスHCは厳しい表情で試合を総括し、以下のように語った。

 

「ご覧のとおり、難しい試合でした。今回、異なるプレーヤーを異なるキャンプに呼んできましたが、練習でできていることを試合で実行する術を理解しなければなりません。練習ではうまくできているんです。それが試合で見られないのはちょっと苛立たしいですね。我々はもっともとうまくできるはずです。練習試合ができなかったからなのか…。いいわけではありません。今日はもう少しうまくできると思っていました。残念です」
“Obviously tough one for us. This has been…, we’ve had different players in different camps. It seems like we’ve got to figure out how to take our practice into the game. We’ve been practicing well. And it’s kind of frustrating to not see it happen in the game. We can play a lot better and I think it’s just something that…, we didn’t have any practice games or anything I’m not making any excuses. I really thought we were going to play a little bit better than we did today. It was unfortunate.”

 


試合後の会見の様子(画像をクリックするとFIBA公式YouTubeチャンネルの会見映像が見られます。ホーバスHCのコメントは23分40秒過ぎから始まります 写真/©FIBA.WC2023)


ホーバスHCが前述のメイカーの2連続ブロック以降の流れについて語った内容を聞くと、敗因の大きな部分は攻め気を削がれたことと、内面的な立て直しに時間がかかったことであるとわかる。


「序盤にリズムを失いました。2本ブロックされてペイントに攻め込むアグレッシブさがなくなり、同時に3Pショットを打ち始めそれが入らないというのはやろうとしたことではありませんでした。リズムを失っていましたね。その後取り戻すのに2つ半のクォーターを要しました。それはこのレベルでオーストラリアに対して、取り返すのが不可能なことです」
“We just got out of rhythm early. They blocked a couple shots and we lost some aggressiveness going into the paint. And then we started shooting threes and we weren’t hitting threes and that’s not what we were supposed to do and…. We just got out of rhythm. So…, and it took two and a half quarters for us to get…, find a way back, which obviously at this level against Australia is…, it’s too much.”


オーストラリアは日本代表よりも平均身長で7cm大きい199cm。初戦ではその高さとフィジカリティーに威圧されてしまい、あらゆる側面でアグレッシブさの欠如につながってしまったと言えそうだ。消極的な状態で狙う3Pショットの精度も、特に前半はホーバスHCが指摘しているとおり16.7%(18本中3本のみ成功)と低かった(試合を通じては37本中10本成功の27.0%)。


また、消極的な内面の状態は、例えば11というファウルの数にも表れているのではないだろうか。3つ以上ファウルを犯したのはエバンスのみ。大きくフィジカルな相手にペイントでの得点で14-42と圧倒されたことを思えば、むやみに増やすべきではないとはいえ、ペイントに侵入される前に流れを切るためにもう少しファウルがあっても不思議ではないだろう。


ホーバスHCは明るい要素として、富永が5人制フル代表デビュー戦で練習どおりの活躍をしたことを挙げ、「本当にうれしいことでした(That was something that I was really happy to see)」と称賛していた。また、試合終了までしっかりと戦ったことも高く評価し、3日(日)のチャイニーズ・タイペイとの一戦に必勝を期すコメントも残している。次戦で必要なのは特別なことではなく、普段の練習の成果を出すことに尽きそうだ。

 

文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



PICK UP