月刊バスケットボール6月号

中学まで全国不出場。U17ワールドカップに挑むシンデレラ・ボーイ石口直

 

 いよいよ明日、7月2日からスペイン・マラガでFIBA U17ワールドカップ2022が開幕する。日本は6月中旬に行われたFIBA U16アジア選手権2022で、歴代最高成績となる銀メダルを獲得。かつて八村塁(ウィザーズ)が出場した2014年大会以来の、U17ワールドカップ出場となった。

 

 そんなFIBA U16 アジア選手権大会でキャプテンとしてチームを引っ張り、川島悠翔とともにオールスターファイブ入りを果たしたのが石口直(東海大付諏訪3年)だ。

 

写真/FIBA.U16Asia

 石口はアジアの大舞台で、司令塔として、アレハンドロ・マルチネスヘッドコーチの考えをしっかりと体現した。マルチネスヘッドコーチいわく「何よりも大事にしたコンセプトは、ボールをシェアすること。来日して初めて練習を見たときに、ドリブルが多過ぎると感じました。選手たちには『チームとしてボールをシェアすればアジアを勝ち抜くチャンスがあるけど、それができないのであれば、そのチャンスもない』とハッキリ伝えました」。そんな中で、石口は自ら攻めつつ仲間にパスを供給し、平均5.2アシストをマーク。これは大会全体でも2位に入る好記録だ。

 

 石口は東海大付諏訪高でもキャプテンを務めるが、コート上では同級生の高山鈴琉が正司令塔を務めており、180cmの石口はシューティングガードの印象が強い。それでも「東海大付諏訪ではクローズアウトゲーム(ディフェンスが後追いになる状況)を作ることを意識しているので、そうした練習が生かせたと思います」とのこと。ポジション関係なく、正しく状況判断しながらキックアウトなどで味方のノーマークを作る力を培ってきたことが、代表戦でも大いに生きたようだ。

 

 そんな石口は新潟県の上越市立城北中出身。バスケットが盛んな激戦区の中で、全国ミニバス大会や全国中学校大会、ジュニアオールスターには出場できなかった。つまりは高校時代まで全国的には無名の選手だったわけだが、そんなキャリアの無さをものともせず、日の丸を背負ってアジアの列強相手に堂々とプレー。その裏には、ぶれないメンタリティーがあったようだ。「結局、過去のことはどうでも良くて、『今、何ができるか』というところに自分はフォーカスしています。過去の経歴にこだわることなく、このアジア選手権で活躍するんだという目標があって、そういう気持ちが出た」と話す石口。

 

 アジアで確固たる自信を得た石口は、チャレンジャーとしてFIBA U17ワールドカップ2022の舞台に挑もうとしている。「現実的な目標は決勝トーナメントに進出すること。そのためにチームとして、どれだけ最後まで粘り強く頑張れるかだと思います」と意気込みを語る。

 

 来たるFIBA U17ワールドカップ2022では、16チームが4つのグループに分かれてまずはグループラウンドを戦う。日本はスペイン、ドミニカ共和国、リトアニアと同組のグループB。いずれもFIBAの世界ランキングでは格上の相手だが、中でもチャンスが大きいのは初戦(日本時間3日未明試合開始)のドミニカ共和国戦だろう。マルチネスヘッドコーチも「我々に一つチャンスがあるとすれば、ドミニカ共和国との試合です」と初戦にフォーカスしていることを語っており、スペイン戦、リトアニア戦にうまくつなげるためにも、注目の一戦となる。

 

取材・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

写真/FIBA

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