月刊バスケットボール5月号

【九州大会】苦しい時間帯を自分たちで立て直した福岡第一が福岡大附大濠を破る!

 3年ぶりの開催となった九州大会(6月18、19日/宮崎県)。男子決勝は福岡第一vs.福岡大附大濠という福岡の“2強”対決となった。

 

 福岡第一は、6月5日に行われたインターハイ県予選の決勝、70-64で福岡大附大濠を撃破。勢いに乗って臨んだ今大会は、FIBA U16アジア選手権に出場する崎濱秀斗とアピアパトリック眞が不在だったが、崎濱に代わってスタメンに抜てきされた#37平岡倖汰が攻防にわたって躍動。また、#72中村千颯や#86川端悠稀ら、セカンドユニットも豊富な運動量でチームを鼓舞し、1回戦(vs.長崎西)を127-74、2回戦(vs.九州学院)を100-53、準決勝(vs.延岡学園)を113-49と、全て100点ゲームで制して決勝に勝ち上がった。

 

 

 一方の福岡大附大濠も、U16日本代表の川島悠翔、鈴木凰雅、渡邉伶音の3名が不在。さらに1回戦の序盤、エースで今年はPGの役目も担う#13湧川颯斗が捻挫で戦線を離脱し、合わせて主力を4人欠いた状態で戦うことになった。

 

 それでも、#5芦田真人や#6柳澤舜、#7広瀬洸生ら、昨年まであまり長い出場機会を得ていなかった選手たちが奮起。激しいチームディフェンスを見せ、1回戦(vs.佐賀北)を73-50、2回戦(vs.長崎工)を106-57、準決勝(vs.柳ヶ浦)を90-56と快勝し、決勝まで上り詰めた。

 

 ライバル対決となった決勝戦は、予想どおり序盤から白熱した展開に。福岡大附大濠はフリースローやリバウンドシュート、息の合った連係プレーで得点を伸ばすが、福岡第一もエースの#8轟琉維、#29城戸賢心がジャンプシュートをピシャリと射抜いて相手の勢いを削ぐ。#72中村や#89ムスタファ・ンバアイら、控えメンバーも活躍を見せ、前半を終えて45-37と福岡第一が8点リードして後半へ。

 

 3Q、大濠は#7広瀬がアシストやバスケットカウントなどでチームをけん引し、追い上げを図る。福岡第一はファウルを吹かれるなど思うように波に乗れないが、激しいディフェンスからブレイクを出して流れを変え、3Q残り4分には59-45とリードを14点に広げた。だが大濠もタイムアウトを挟んで立て直し、#9鬼澤伸太朗や#12岩下愛育らベンチメンバーが果敢にリングにアタックしてチームを勢い付ける。3Q残り1分半には、その差を一時5点(61-56)に縮めた。

 

 苦しい時間帯となった福岡第一。だが、ここで#29城戸が3Pシュートを決め、#8轟もスティールに成功するなど、両エースが頼もしい活躍を見せる。さらにはエネルギッシュな#37平岡がオフェンスリバウンドから得点。68-56と、再び12点差に押し戻して3Qを終えた。

 

 4Qも一進一退が続き、福岡第一は二桁リードをキープし続ける。#12岩下のシュートや#5芦田の3Pシュートなどで反撃を図る福岡大附大濠だったが、その差を縮めることはできずにタイムアップ。福岡第一が、88-77で九州王者となった。

 

 終わってみれば、スタメンに戻した後半、タイムアウトや交代を指示しなかった福岡第一の井手口孝コーチ。「インターハイもありますし、こういう相手とちゃんとした試合をする機会もそうないですから、後半はスタメンの5人に任せたんです。『自分たちでやりなさい』とは言っていませんが、僕は何も言わずに、あえてタイムアウトも取りませんでした。だから良い面と悪い面が出ましたね。その中でいろいろ工夫したり考えたり自分たちでやって、盛り返せたところは、少し価値があるかもしれません」と言う。

 

 一方、主力を大幅に欠く中で準優勝という結果を手にした福岡大附大濠にとっても、今大会で得られた収穫は大きいだろう。「代表組がいない、湧川がいない、と言い訳はいくらでも言えますが、そうではなく今このメンバーで、しっかり“チーム”になることにこだわりました。一人一人は頑張るけれど、それらがまだつながっていないことが今年の課題だったのですが、試合を重ねるごとにチームで戦う姿勢の見える集団になってきたと思います」と片峯聡太コーチ。ここにU16日本代表の川島らが戻ってくれば、チームはさらにレベルアップするはず。インターハイ不出場となる分、今年度から新設された秋のU18トップリーグやウインターカップでは大暴れしそうだ。

 

 なお、九州大会男子は3位・柳ヶ浦(大分1位)、4位・延岡学園(宮崎2位)という最終結果となった。柳ヶ浦はチーム初の九州3位。昨年からメンバーがガラリと変わった今年のチームだが、インターハイに向けて大きな自信を手にしたことだろう。一方、準決勝、3位決定戦と2連敗となった延岡学園。楠元龍水コーチは「僕たちにはまだまだ“タフさ”が足りないと、痛感させられました。苦しいですが、それはここに来ないと、分からなかった部分。この結果を受け入れて、ここからどうもがいていくか。真価が問われるときだと思います」と話し、今大会で見付かった多くの課題を自チームに持ち帰った。

 

取材・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

写真/山岡邦彦



PICK UP