月刊バスケットボール6月号

【東海大会】「個の力」をテーマに戦った中部大第一が桜丘を破り大会制覇!

#7小田晟は中部大第一に流れを呼び込む3Pやバスケットカウントなどを連発

 

 男子決勝の組み合わせは愛知県予選決勝リーグのリマッチ、中部大第一と桜丘のカードとなった。スピーディーな司令塔#6下山瑛司や194cmの大型シューター#5坂本康成らを起点とする中部大第一は、2回戦(津工/103-56)と準決勝(富田/86-59)を順当に突破。

 

 対する桜丘も#1舘山洸騎や#91土屋来嵐らクイックネスとボールキープ力の高いガード陣を軸に、1回戦から飛龍(85-52)、美濃加茂(88-79)、高山西(83-57)を破りトーナメントを勝ち上がってきた。

 

 そんな両者の決勝戦は序盤、中部大第一がリードを奪う。サイズと機動力を生かしたアグレッシブなディフェンスから、#6下山、#5坂本、#7小田晟らが絡む速攻で流れを作ると、中外と万能なプレーでチームを引っ張るキャプテンの#4小澤飛悠もサイズのミスマッチを突いたペイントアタックやミッドレンジなどで得点を伸ばしてゆく。

 

 一方の桜丘も#1舘野のドライブや3Pシュート、#7セイ・パプ・マムウルがインサイドで踏ん張りを見せ、食らい付いていく。それでも、試合全体としては中部大第一がコントロールする時間が長く、小気味良いパス回しから、選手それぞれが自身のストロングポイントを生かすような、満遍なく得点する効率の良いバスケットを展開していた。

 

 ただ、桜丘も黙ってはいない。サイズで劣る分、運動量を増やして前からプレッシャーをかけると中部大第一にもミスが重なり、2桁のリードを2Qで一時2点差まで詰めることに成功。ディフェンスからイージーバスケットを展開できていた時間帯は、ここま勝ち上がってきた桜丘の実力を証明するものだった。

 

派手さはないが、オールラウンドにさまざまなエリアから得点できる#4小澤飛悠

 

 しかし、後半に入ると試合は中部大第一の一方的な展開に。桜丘のディフェンスにハマってしまった時間帯は、個々が孤立して淡白なオフェンスが増え、意思疎通が取れていないように感じられたが、もう一度自分たちの強みを強調。前半で見られたような#6下山や#7小田らが絡むトランジションや、#5坂本や#4小澤がサイズのミスマッチを突いたインサイドポイントやドライブで得点するなど、一気に点差を拡大。3Q終了時点で28点差(62-34)とし、最終スコア87-46で東海大会連覇を成し遂げた。

 

 常田健コーチは「準決勝の富田も決勝の桜丘もそうですが、相手をファウルトラブルにさせたり、自分たちがうまくゲームをコントロールしていくという面では合格点でした。オフェンスに関しては1対1のスキルをかなり上げていかなければ、全国では勝てないと分かっているので、そういうところは小さくまとまらないようにしていかないといけないかなと思っています。オフェンスで1対5になりかけているとき(孤立してしまっているとき)は流れとしては悪い時間帯ですが、最終的にはタイムアウトを取らなくてもその時間帯をクリアできるような力が付いてきていると思います」と手応えを口にした。組織的なオフェンスやゾーンディフェンスなどは使わず、個の力を伸ばすことにフォーカスした今大会で、大きな収穫を得た様子だ。

 

 また、今年のチームのテーマとして「自分たちのやりたいバスケットの中で相手がどういう反応をしてくるのかを判定しなさいと話しています。良くない時間というのは相手のバスケットに自分たちが乗っかっているときなので、自分たちのやりたいことに対して相手がどうしてきているのかのジャッジが必要」と言う。

 

 これは#4小澤や#5坂本が積極的にミスマッチをアタックしたことや、相手ペースの時間帯に中部大第一らしいダイナミックなトランジションから流れを呼び込み、ゲームをコントロールしたことに象徴されている。現時点では、このようなチームとしての決めごとがある中でも、あくまでも個々の能力を引き出している段階だ。

 

個性派集団をまとめ上げる司令塔の#6下山瑛司は抜群のクイックネスを披露した

 

 個の育成をテーマに戦った今大会を終え、本格的に組織的な戦術を落とし込んでいくのはこれから。常田コーチが「去年は個性もあるけれど、それをまとめる選手がいましたが、今年は本当に我が強い」苦笑いを浮かべるほどの個性派集団が、インターハイでどんなまとまりを見せてくれるのか。今から楽しみだ。

 

写真/幡原裕治

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



PICK UP