琉球ゴールデンキングスvs宇都宮ブレックス - B1チャンピオンシップファイナル展望
初のファイナル進出を果たした琉球ゴールデンキングスと、2年連続3度目の進出で2度目の王座を狙う宇都宮ブレックスが激突するB1チャンピオンシップファイナルが、5月28日に幕を開ける。クラブとしてのカルチャーからしても、また今シーズンを通じての傾向からしても、両チームはフロントラインのフィジカリティーと執拗で抜け目ないローテーションを生かしたディフェンスとリバウンドの強さを一試合を通じて発揮する特徴が似ている。B1歴代最高勝率を記録した琉球にトランジション・オフェンスと3Pシューティングを軸とした爆発力があるのに対して、宇都宮には比江島 慎という確立されたスコアラーがいると同時に、ミスの少ない堅実なオフェンス力がある。
宇都宮のペースをひっくり返した琉球が直接対決では2連勝
両チームはリーグ戦期間中の昨年12月11日・12日に、ブレックスアリーナ宇都宮で2度対戦した。そのときはどちらも、似たような流れを経て僅差で琉球が勝利している。第1Qの接戦から第2Qに宇都宮が抜け出し、第3Qに琉球がしぶとく食らいつき最終クォーターで逆転する流れだ。しかし数字的には、宇都宮が琉球の強みであるリバウンドとトランジションでの威力を一定以上封じており、特に中盤までは自分たちのゲームだった。最終的にどちらも60点台の勝負だったことからも、琉球がやりたいバスケットボールができていたとは言い難い。
昨年12月の直接対決では、アレン・ダーラムの殊勲の活躍もあり琉球ゴールデンキングスが2連勝を飾った(写真/©B.LEAGUE)
宇都宮は初戦で第2Qに17点差、第2戦で第3Q開始早々に14点差と5ポゼッション以上のリードを築いた。また、どちらも第2Qに琉球をフィールドゴール成功1本だけの一桁得点に封じていた。
琉球は、速攻での得点が伸びなかった(初戦が5得点、第2戦が6得点)一方で、ペイントでの得点(初戦28-28、第2戦32-32)でまったく互角の戦いができたのが粘り強く戦えた要因の一つだ。また、リバウンドは初戦が宇都宮43に対し琉球39、第2戦が宇都宮34の琉球36で、前述のとおりフィジカルなリバウンド合戦で思い通りとは言えない展開ではあったものの、大きく上回られたわけではなかった。フィジカルな戦いを引かずにやり切ったことが、琉球の勝利につながったと言えそうだ。
初戦のエンディングはそれを象徴するような展開だった。琉球は62-65と3点差を追う第4Q残り33秒にドウェイン・エバンスがオフェンスリバウンドをつかんでゴール下でねじ込み64-65と追いすがった後、残り1秒を切ってから今度はアレン・ダーラムがインバウンドパスを空中で受けて直接押し込み、66-65のスリリングな逆転劇で勝利をつかんだ。
もう一つの大きなポイントは3Pシューティング。2度の対戦ではどちらも、特に第4Qに琉球の3Pショットがヒートアップしたのに対し、宇都宮側はおとなしくなっていた。特に第2戦では、宇都宮が5本のアテンプトすべてをミスショットで終わらせたのに対し、琉球は7本中5本成功(成功率71.4%)。岸本隆一が4本中3本成功、今村佳太とコー・フリッピンが1本のアテンプトをそれぞれ成功させていた。今村の一撃は60-60の残り1分7秒に決めた値千金の一撃で、最終的にこれが決勝点となっている。
宇都宮は2試合とも3P成功率が30%未満(初戦29.2%、第2戦20.8%)。一方琉球はどちらも35%以上(初戦37.5%、第2戦35.3%)と、宇都宮の厳しいディフェンスをかわして大きなダメージを及ぼす得点機をモノにしていた。3Pショットでの総得点も琉球は初戦で6得点、第2戦で3得点上回った。
☆直接対決ダイジェスト映像(バスケットLIVE)
アウェイで4連勝、好調の波に乗る宇都宮
チャンピオンシップに入ってからはどちらも4連勝。特にワイルドカードで全試合をアウェイで戦わなければならなかった宇都宮は、クォーターファイナルで昨年の王者千葉ジェッツをスウィープした後、今春天皇杯で2連覇を達成した川崎ブレイブサンダースをやはりスウィープで下している。どちらのシリーズも難しい初戦で2ケタ点差をつけて勝利した後、第2戦で接戦を制して勝ち上がった。
得点力のある強敵を平均70.8得点に封じたディフェンスに加え、4試合でチーム最高の平均17.8得点を記録している比江島のオフェンスでの存在感が非常に強い。川崎とのシリーズ第2戦では第4Qにクラッチフリースロー8本すべて成功を含む11得点で、自らの手で勝利をつかみ取ったような活躍ぶりだった。
比江島 慎の勝負強いオフェンスがチャンピオンシップで宇都宮ブレックスをけん引する力になっている(写真/©B.LEAGUE)
要所で3Pショットが決まっていることも大きい。荒谷裕秀(4試合で11本中6本成功の成功率54.5%)、鵤 誠司(同17本中7本成功の成功率41.2%)らが、ボリューム的にも確率的にも試合の流れを持ってくる良い仕事をしている。千葉Jとの第1戦第4Q残り12秒に遠藤祐亮(同17本中6本成功の成功率35.3%)が沈めたクラッチスリーは、シリーズ全体の流れを持ってくるほどのインパクトがあった。
フロントラインの働きぶりには安定感がある。ジョシュ・スコットはチャンピオンシップでの4試合で平均11.8得点、13.0リバウンドとダブルダブルのアベレージだ。
リーグ戦期間からさらに一段ギアを挙げた感があるジョシュ・スコット(写真/©B.LEAGUE)
チャンピオンシップ初出場を果たした2チームを相手に2ラウンドを戦った琉球は、クォーターファイナルで秋田ノーザンハピネッツを、セミファイナルで島根スサノオマジックをともにスウィープで下し、長年壁となっていたセミファイナルで初めてシリーズを制することができた。クラブとしてはもちろんのこと、西地区からファイナルに進出する史上初のケースだ。島根との2試合はどちらも激戦で、特に第2戦は8,309人の大観衆が詰めかけた沖縄アリーナで、70-70の同点からドウェイン・エバンスがブザービーターとなるプットバックを沈めてシリーズの終止符を打つという、これ以上ないほど劇的なエンディングだった。
初戦を含めこのシリーズで特に光る活躍をしたのは今村で、2試合で3Pショットを22本中10本決めて平均23.0得点を記録している。フィジカリティーを強みとする琉球に対し島根が堂々リバウンドでアドバンテージを取り、琉球のオフェンスはどのポゼッションも簡単ではなかったが、得点が停滞しそうな展開の中で今村の1本が何度もチームを救った。
セミファイナルでは今村佳太の攻守の活躍が光った(写真/©B.LEAGUE)
いよいよ頂上決戦
ファイナルに向け「チャレンジャーなので、しっかりチャレンジして楽しんでやりたいと思います」と話した宇都宮の安齋竜三HCは、ファイナルで琉球にどのような戦いを挑むだろうか。琉球の桶谷 大HCによると二人は非常に仲が良く、「お互いのエッセンスが入っているのは間違いありません。やっているバスケットボール、オフェンスとディフェンスのコンセプトがすごく似ている」と話す。「お互いの(持ち味の)消しあいになるのかなと。焦れた方が負けると思っています」
琉球は島根とのシリーズで、ジャック・クーリーをはじめとしたビッグマンに対してぺリン・ビュフォードを中心に島根の機動力のあるプレーヤーがミスマッチを突いてゴールにアタックしていくパターンに苦しめられた。そのような状況を宇都宮が生み出そうとすることも考えられるし、またその状況で両チームが何をするかは見どころに一つになるかもしれない。
一方宇都宮は、波に乗っている今村をはじめとした琉球の3Pショットの確率をいかにして低下させることができるだろうか。琉球の3Pショットはチャンピオンシップの4試合で、今村が37本中15本成功の成功率40.5%、岸本が34本中12本成功の35.7%と好調。加えて11本中8本成功の成功率72.7%を記録している並里 成、5本中4本成功の成功率80.0%の小野寺翔太ら、バックアップのプレーヤーたちも比較的少ないアテンプトながらダメージの大きな仕事をしているのだ。
並里 成はチャンピオンシップを通じて堅実な貢献を続けている(写真/©B.LEAGUE)
最後に、不確定ながら無視できない、毛色の異なる要素もあることにも触れておきたい。琉球にとって初のファイナルという事実がどんな影響を及ぼすかだ。シーズン成績、直接対決の戦績とも琉球やや優位。勢いではほぼ互角。しかしファイナルの場数を踏んでいる宇都宮に、経験値の点でアドバンテージがあるのは間違いないだろう。しかも琉球はホームから中立地への“ダウングレード”、宇都宮はアウェイからの“アップグレード”だ。
26日時点ですでにシリーズ3試合のチケットは予定数をすべて完売とのことだが、両チームのブースターがどのような情景を生み出すだろうか。桶谷HCが指摘しているとおり焦れずに40分間全力で戦い続けることが要求されるシリーズで、両チームがその期待に応えるパフォーマンスを発揮できるかどうかには、両チームのブースターと日本全国のバスケットボールファンの力も大きく影響しそうだ。
☆琉球ゴールデンキングスvs宇都宮ブレックス ファイナル日程(会場:東京体育館)
5月28日(土) 12:00
5月29日(日) 16:05
5月31日(火) 19:05
☆対戦成績
2021-22リーグ戦 琉球2勝、宇都宮0勝
12月11日(ブレックスアリーナ宇都宮) 宇都宮×65-66〇琉球
宇都宮 65(20 12 19 14)
琉球 66(17 05 21 23)
12月12日(ブレックスアリーナ宇都宮) 宇都宮×62-65〇琉球
宇都宮 62(12 15 21 14)
琉球 65(15 04 17 29)
☆両チームのリーグ戦キースタッツ
※各項目とも数値の右のカッコ内はリーグ順位
※ターンオーバーは少ない方から上位
琉球
西地区1位/二地区間1位 49勝7敗(勝率.875=B1全体1位)
平均得点 84.4(5位)
フィールドゴール成功率 47.4%(6位)
3P成功率 36.5%(5位)
フリースロー成功率 73.4%(15位)
平均リバウンド数 40.9(1位)
平均アシスト数 21.1(8位)
平均スティール数 7.6(4位)
平均ブロック数 2.4(15位)
平均ターンオーバー数 12.0(9位タイ)
ファイナル進出を決めた後の沖縄アリーナのブースターの様子(写真/©B.LEAGUE)
宇都宮
ワイルドカード上位(東地区4位) 40勝16敗(勝率.714)
平均得点 79.8(13位)
フィールドゴール成功率 46.6%(9位)
3P成功率 34.5%(9位)
フリースロー成功率 72.7%(17位)
平均リバウンド数 38.3(4位)
平均アシスト数 20.4(13位)
平均スティール数 6.9(11位)
平均ブロック数 3.1(3位)
平均ターンオーバー数 10.9(3位)
川崎ブレイブサンダースとのシリーズはアウェイだったが、たくさんのブレックスブースターが来場していた(写真/©B.LEAGUE)
☆両チームのリーグ戦トップパフォーマー
琉球: ドウェイン・エバンス(平均17.1得点=リーグ9位)、岸本隆一(3P成功率38.4%=リーグ9位)、ジャック・クーリー(平均10.4リバウンド=リーグ3位)、コー・フリッピン(1.4=リーグ5位)
宇都宮: ジョシュ・スコット(平均9.8リバウンド=リーグ5位、平均1.3ブロック=リーグ5位)、比江島 慎(3P成功率42.0%=リーグ6位)
(月刊バスケットボール)