月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.03.01

バム・アデバヨ(ヒート)、コービー・ブライアントの教えを胸に奮闘中 - One foot in front of the other(一方の足をもう一方より前に)

 

 2月23日にNBAがオールスター・ゲームに出場する顔ぶれを発表した後、各チームの特に人気の高い主力プレーヤーたちが選出・不選出に関するメディアからの質問を受ける場面がさまざま報じられた。その一人がマイアミ・ヒートのバム・アデバヨだ。
ヒートのフロントラインの主軸として活躍するアデバヨは今シーズン、リーグトップを走る絶好調のユタ・ジャズを倒した26日までの31試合で平均19.6得点、9.6リバウンド、5.5アシストというオールラウンドな活躍を見せている。昨シーズンはバックコートのスターであるジミー・バトラーとともにチームをNBAファイナルに導き、最終的にチャンピオンになったロサンジェルス・レイカーズを大いに苦しめたことも記憶に新しい。そんな実績から考えれば、オールスターに選ばれて何ら不思議はないタレントだ。昨年のオールスター・ウイークエンドでは、スキルチャレンジのチャンピオンになっており、本戦への選出がかなえば名実ともに超一流の仲間入りを強く印象付けることにもなっただろう。
24日に行われたトロント・ラプターズとの試合に勝利を収めた後の会見で、アデバヨに最初に飛んだ質問はこの“オールスター・スノッブ(All-Star snub=オールスターに選ばれず冷遇されること)”に関するものだったが、アデバヨはそれに対し、コービー・ブライアントの名言を引用して答えていた。「これは仕事。最終的にはそう捉えています。前進し続け、一方の足をもう一方より前に出す。亡くなられたコービー“ビーン(ブライアントのニックネーム)”が『一方の足をもう一方より前に。笑顔で楽しく生きていこう』と言っていた、あれですね」
さらにアデバヨは続けた「今日は素晴らしい勝利でした。オールスターはもう過去のこと。気にかけるべきなのは、いかにしてW(勝利を意味するWinの頭文字)を積み重ねるかということです」。もちろん悔しさはあったに違いない。しかしそういった思いはすべて飲み込んで、昨年1月26日のヘリコプター事故で帰らぬ人となったブライアントへの敬意も込め、清々しく力強いコメントを残してみせた。
アデバヨ自身による英文の返答は以下のような流れだった。
“We’re here to do a job. Bottom line. That’s kind of how we look at it at the end of the day. Keep pushing forward, one foot in front of the other. It’s just like what, rest his soul, Kobe Bean says, ‘one foot in front of the other’. We go through life with a smile and just enjoy. It was great to get this win. All-Star is behind us. We’re just going to keep worrying about stacking up these W’s.”
アデバヨがブライアントを尊敬していることは以前から知られている。昨シーズンのプレーオフとファイナルでは、コービーのシグネチャー・シューズでプレーし続け、当時のインタビューでも「僕は大きくなる過程でずっとコービーのファンでした。コービー・ファナティック(Kobe fanatic=熱狂的コービーファン)だったんです」と明言していたほどだ。
一連のやり取りの最後に、それならばオールスター・ゲーム当日の他のアトラクションはどうかと聞かれると笑顔でこう答えていた。「ヒート・ネイション(ヒートのファンコミュニティーの呼び名)は僕に2連勝を期待しているでしょう。でもわかりません。時間はありますよ…」

 

 

エリック・スポールストラHCは「バムとJB(バトラーの呼び名)は明らかにオールスターです」と残念な思いを話した

 

アデバヨと同じく選出に漏れたバトラーは「バムはいけたらよかったですが…。僕は残念ではありません。(そういった感覚は)ゼロです」と笑顔で話した

 

文/柴田 健(月バス/com)
(月刊バスケットボール)



PICK UP