月刊バスケットボール5月号

3x3男子日本代表、屈辱のW杯全敗で直視すべきデータ

 FIBA3x3ワールドカップ2022において、東京2020オリンピックでの6位フィニッシュという成績からの上昇を狙った3x3男子日本代表は、1勝も挙げることができず4試合中3試合でノックアウト負け、平均得点12.8、平均失点20.3という惨敗を喫した。今大会においてノックアウトで勝負が決した試合は34試合あったが、試合開始からノックアウトに至るまでの時間の短さを順位付けした「ファーステストゲーム」のランキングにおいて、日本がノックアウト負けした3試合が最も短かった15試合の中に入っている。5-22で敗れたラトビアとの試合における17点差は、今大会で2番目に一方的な点差だった。


非常に厳しい結果となった要因は、3x3の専門家の目にはより鮮明に映し出されているに違いないのだが、ここではスタッツデータのいくつかから、そのいくつかを拾ってみたい。

 


©FIBA.3x3WC2022


ロングレンジの精度を欠き、オフェンス面の脅威が足りなかった日本


惨敗の最大の要因としては、5人制の3Pショットにあたる2ポイントショットの確率が低かったことが挙げられる。日本は4人で4試合を通じて41本中5本しか決められなかった。成功率12.2%はブラジルに次ぐワースト2位(上から19番目)だ。逆に相手には49本打たれ14本(成功率28.6%)決められた。この部分だけで点数に換算すると5-28と23点の開きになる。1試合のノックアウト分丸ごと以上の差を2Pショットでつけられていた。


1試合平均10.3本の2Pアテンプト数も出場20チームの平均12.1本よりも少ない。優勝したセルビア(9.7本)よりは多いのだが、セルビアは30.9%の成功率で決めていた。そこにはチームとしての成熟度の大きな差が感じられる。


2Pショットの威力を発揮できなかった日本は、1Pショットと2Pショットのアテンプトを足したフィールドゴール・アテンプトも1試合平均22.3本で、今大会に出場した20チーム中で最も少なかった。ゴールを狙う回数が少ないということは、そのまま「オフェンス面での脅威が不足していた」という言葉で代弁できるように思う。2Pショットはその半分近くに上ったが、結果から見れば決定力不足、良いショットを生み出すプレーメイク力不足は否めない。冒頭で触れた1試合平均12.8得点は出場20チーム中19位。これでは上位進出は望めない。

 

パリ2024への道筋

 

 パリオリンピックは2年後に迫っているが、その舞台でメダルを語るチームを作っていくのは非常に難しいことではないかと、今回の結果から悲観的な見方にもなりそうだ。だが、必ずしもそうではないことも記しておきたい。


そのヒントは今大会のフランス代表だ。彼らはプールラウンドで2敗を喫し、大会を通じて3つの黒星の果てに銅メダルを獲得した。3x3とはそういうゲームなのだ。男子日本代表のノックアウトで負けた3試合目(対中国)と唯一10分間戦い切った4試合目(対オランダ)はいずれも競った展開で勝てる可能性は終盤まであった。それらを確実につかみ取ることはどうしても必要なのだが、観戦した方なら感じられたとも思うのだが、それは決して不可能ではない。今回、日本は「死のグループ」にいたということも、厳しい結果となった要因の一つでもあるだろう。


戦術面で語れることとしては、1Pショットの成功率64.6%は、大会全体の6位の好成績でもあった。特に佐土原 遼のアグレッシブなプレーは有効で、ドライブ9本を含む17本中15本を決めての成功率88.2%は今大会でプレーした80人のプレーヤーの中で3番目、フィールドゴールを10本以上成功させたプレーヤーの中では1位だった。運動能力の高いウイングタイプのプレーヤーのアグレッシブなドライブは間違いなく有効だったのだ。


2Pショットに関しては、メダルを獲得した金メダルのセルビア、銀メダルのリトアニアがいずれも30%越えだったことからも、良いショットセレクションで狙い高確率で決めることが世界で上位を競う条件と言えそうだ。同メダルのフランスも21.6%であり、それが3敗を喫したと同時に銅メダルまで行けた要因の一つとも思える。今回の4試合を見る限り、この側面の強化は必須の要素だろう。特にダメージが大きくなるトランジションからの2Pショットの頻度と精度を高められれば、オフェンス面の問題の多くが解消されるのではないだろうか。


また、検討材料となるだろうことの一つには、3x3の専門性の向上もあるのではないだろうか。東京2020の大会前にも言われていたことだが、強豪チームは年がら年中一緒にプレーし、3x3に特化した生活を送っているチームが多い。それに対抗して上位を目指す以上、彼らならではの、目まぐるしいトランジションの中で得点機を逃さない抜け目なさ、相手の不用意なミスからボールを奪い返し即得点につなげるしたたかさに対抗する術を見つける必要があるだろう。

 

 日本は今大会の4試合すべてでターンオーバー数が相手よりも多く、その中にはトランジションの状況でのものもいくつもあった。ファウル数でも4試合中3試合で相手を上回ったが、5人制とは感覚的に異なるこれらの項目は3x3のゲームを高い強度で数多くこなしていかなければ身につけるのは難しい。パリ2024までの2年間、それらを克服することも強化の大きなテーマとなるに違いない。

 

☆FIBA3x3ワールドカップ2022男子日本代表試合結果
6月22日
ポーランド21-13日本
佐土原 遼 1得点、1キーアシスト、2リバウンド
藤高宗一郎 2得点、1リバウンド
保岡龍斗 7得点、1キーアシスト
落合知也 3得点、1キーアシスト、3リバウンド
日本は1敗


ラトビア22-5日本
佐土原 遼 2得点、2リバウンド
藤高宗一郎 2リバウンド
保岡龍斗 3得点、3リバウンド
落合知也 1キーアシスト
日本は2敗

 

6月24日
日本18-21中国
佐土原 遼 10得点、2リバウンド
藤高宗一郎 2得点、1リバウンド
保岡龍斗 1得点、2キーアシスト、1リバウンド
落合知也 5得点、5リバウンド
日本は3敗

日本15-17オランダ
佐土原 遼 5得点、1リバウンド
藤高宗一郎 1得点、1キーアシスト、4リバウンド
保岡龍斗 5得点、1キーアシスト、5リバウンド
落合知也 4得点、2キーアシスト、2リバウンド
日本は4敗

 

☆プールC最終順位
1位オランダ(4勝)
2位ラトビア(3勝1敗)
3位ポーランド(2勝2敗)
4位中国(1勝3敗)
5位日本(4敗)


☆大会全体の最終順位(上位のみ)
男子
1位 セルビア
2位 リトアニア
3位 フランス

 


☆3x3男子日本代表4試合通算のアベレージ


©FIBA.3x3WC2022

佐土原 遼(広島ドラゴンフライズ) 4.5得点、0.3キーアシスト、1.8リバウンド

 


©FIBA.3x3WC2022

藤高宗一郎(バンビシャス奈良/TOKYO DIME.EXE) 1.3得点、0.3キーアシスト、2.0リバウンド

 


©FIBA.3x3WC2022

保岡龍斗(秋田ノーザンハピネッツ/SAITAMA ALPHAS) 4.0得点、1.0キーアシスト、3.3リバウンド

 


©FIBA.3x3WC2022

落合知也(越谷アルファーズ/ALPHAS.EXE) 3.0得点、1.0キーアシスト、2.5リバウンド

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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