月刊バスケットボール5月号

【千葉県WC予選男子】過去2年の悔しさをぶつけた市船橋が長狭に会心の勝利!

 

 11月19日、船橋アリーナでウインターカップ千葉県予選の決勝が行われた。1枠の出場権を争う男子決勝は、市船橋と長狭の対決に。5月の関東大会予選3回戦、6月のインターハイ予選決勝に続く、今年3度目の対決となった。

 

 市船橋といえば、言わずと知れた全国常連の強豪校。ただ、昨年のウインターカップは県予選3位で出場権を逃し、2年前のウインターカップは新型コロナウイルスの影響で出場辞退となるなど、ここ2年は不遇の冬を過ごしてきた。「今日(決勝)は悔しい思いをした卒業生も大勢応援に来てくれていて、先輩たちの思いも背負っていました」と斉藤智海コーチが言うように、並々ならぬ覚悟でこの予選に挑んだ。

 

 一方、夏と同じく決勝まで上り詰めた長狭は、過去に市柏や幕張総合を全国に導いた同校OB・飯沼加寿夫コーチが2018年から指導しているチーム。部員がたった2人で廃部寸前だった赴任1年目から、5年で一躍県内有数のチームとなった。特に今年の3年生は下級生の頃から経験を積んできた学年。インターハイ予選では市船橋相手に82ー87と肉薄しており、“勝負の年”に悲願の全国出場なるか注目が集まった。

 

 まず主導権を握ったのは市船橋。硬さからミスも出た長狭を尻目に、#4髙宮大翔が鋭い1on1やスティールからの3Pシュートなどで会場を沸かせ、#7佐々木慎太郎のバスケットカウントや#8羽賀悠眞の3Pシュートも続く。1Qを終えて33-21と2桁リードに成功すると、その後も全員が集中を切らさず次々にシュートを決めていき、ハイスコアゲームに持ち込んで2Q残り6分には53-29と最大24点差を開いた。

 

 

 ただ、斉藤コーチいわく「長狭はとにかく鍛えられているチームですから、20点や30点あけても全くセーフティーリードではない。絶対に簡単な試合にはならないと思っていました」。実際、開き直ったかのようにここから長狭が反撃を開始する。2Q終盤から3Qにかけ、エース#23田中承太朗のバスケットカウントや#81包國康介、#27平井大一の3Pシュートなどで追い上げて7点差に。だが市船橋も#9飯田碧偉の速攻などでそれ以上は詰めさせず、10点前後のリードを保って我慢の時間帯を凌ぐ。85-74で入った4Qには、ディフェンスやリバウンドを掌握した市船橋が再び流れを取り戻し、引き離すことに成功。快調に得点を重ね、そのまま117-99で試合終了となった。

 

 我慢の時間帯を立て直し、インターハイ予選から大きな成長を見せた市船橋。「夏の予選は経験がなくフワフワしたまま40分戦ってしまったのですが、インターハイや関東ブロックリーグ、遠征などでいろいろなチームに胸を借り、経験の浅さが解消されてきました。今日は選手たちが落ち着いて、僕の指示がなくとも自分たちでディフェンスを変えるなど自主性を持って対応してくれた。日頃から求めてきた“自立した選手”の姿が垣間見えたことがうれしかったです」と斉藤コーチは選手たちを手放しに賞賛する。強敵の挑戦を退けて手にしたウインターカップの舞台、過去2年間の悔しさを思い切りぶつけたいところだ。

 

 

 一方、飯沼コーチは「市船には関東予選でガッツリやられたので、逆にインターハイ予選では思い切りのいいプレーができたんです。でも今回は夏にああいうゲームをして、あのときなかった“怖さ”が出てしまいました。序盤から硬くなってしまって、点差が離されてからようやく開き直れましたが、市船の選手は接戦の場面でも思い切り良くプレーしていた。その差が大きかったと思います」と敗戦の弁。

 

 ただ、夏冬と、決してバスケットが盛んとはいえなかった鴨川市に“県準V”という誇れるニュースを持ち帰ったことは確か。飯沼コーチも「もし決勝に行く前にコロッと負けていたら、『夏は勢いだった』とか『たまたまだ』と言われたかもしれませんが、冬も苦しい試合を勝ち切りました。市船には及びませんでしたが、“決勝に進むべきチーム”にはなれたと思います」と奮闘した選手たちに太鼓判を押す。今後に向けて「街を上げて応援してくれていますし、茨の道かもしれませんが、また一からチームを作り直してチャンスをものにしたいです」と会場を後にした。

 

 

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○取材・写真/中村麻衣子(月刊バスケットボール) 

写真/石塚康隆

 



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