月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2022.10.22

川崎に快勝の三河、秘めたポテンシャル開花の時は近いか

 

日本代表の西田優大にシェーファーアヴィ幸樹、スピーディーな細谷将司と長野誠史、KBLから帰還した大型ガードの中村太地と得点力抜群の角野亮伍、そこに大黒柱のダバンテ・ガードナーと元NBA選手のカイル・オクイン––。今季のシーホース三河はベテラン、中堅、若手が絶妙にブレンドされた魅力あるロスターをそろえて開幕を迎えた。

 

しかし、第3節終了時点では2勝4敗と開幕前の期待値に比べるとイマイチ波に乗れない試合が続き、特に得点面では6試合で平均73.7得点とB1で18位と苦しんだ。秘めたポテンシャルは間違いないが、まだそれがかみ合わないような印象だった。

 

【写真】川崎×三河の試合写真をチェック

 

そんな中で迎えたのが第4節の川崎ブレイブサンダース戦。昨シーズンのチャンピオンシップ進出の夢を阻まれた因縁の相手だ。

 

第1戦で先手を取ったのは三河だった。西田の連続得点を皮切りに、アスレチック能力の高いアンソニー・ローレンスⅡのドライブ、途中出場の細谷が2本の3Pシュートを沈めるなど、テンポよく得点を積み重ね、守っても川崎から多くのターンオーバーを誘発。

 

果敢なドライブでペイントをこじ開けたローレンスⅡ

 

後半に入っても集中力を切らさず、オクインとガードナーのビッグマンコンビが徐々に存在感を発揮。加えてシェーファーが3本の長距離砲を射抜くなど2Q以降一度もリードを奪われることなく83-67で快勝した。

 

スタッツを見ても、オクインの19得点を筆頭に、ガードナーが18得点、ローレンスⅡとシェーファーがそれぞれ11得点、細谷も10得点をマークするなど計5人が2桁得点を記録するバランスの良さが目立った。鈴木貴美一HCはこの勝利に対して「川崎さんを相手に83点取れたというのがうれしい」と安堵の表情。若手選手のエネルギーを活かすべく、全員が満遍なくボールに絡むスピーディーな展開からは、昨シーズンから鈴木HCが理想としてきた形を垣間見た。

 

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シェーファーはチーム全体のまとまりという点については「正直、まだまだ」と険しい表情を浮かべたが、この試合に関しては大きな手応えを得ており、「やっと今日(目指しているバスケットが)できたと思います。見れば分かるとおり、このチームはポテンシャルはすごく高いと思っていますし、リーグ屈指のチームである川崎さん相手にこういうプレーができたというのは自信にもなります。この試合で改めて地力があるというのは証明できました。とにかくあとはチームとしてもっと成熟しなきゃいけない」と、快勝の中に光を見いだした様子。

 

「やっと今日はできた」と語ったシェーファー(左)。この試合がターニングポイントとなるか

 

若いメンバーがコアだからこそ、「それがプラスに働くときもあれば、どうしてもマイナスに働くとき、流れを向こうに行ったときに立て直せなくなってしまうこともある」とシェーファーは言う。そういった面も考慮して、鈴木HCは選手の起用法も意識している。川崎との第1戦を含む7試合で西田、シェーファー、ローレンスⅡの3人は不動の先発だが、開幕4試合目からは中村に代えて細谷を、インサイドのポジションでもガードナーに代えてオクインを先発起用しており、この試合では司令塔を細谷から長野に変更している。

 

本来は不動のスターティング5を組めば試合の流れがある程度計算でき、セカンドユニットのメンバーも自分が出場する時間帯や、任される役割がより明確化し、チームビルディングにはプラスに働くことが多い。

 

しかし、鈴木HCは「ラインナップに迷いがあるのでなくて、今は練習で調子のいい選手をスタートで起用することを意識しています。練習でできてない選手が試合のときにできるわけないし、できていたとしても試合でできないこともあります。今は少なくとも練習で調子のいい選手をできるだけ使うように心がけてます」と言う。

 

前半は静かだったガードナーだが、要所で活躍しベテランの存在感を発揮した

 

特にガード陣は経験が浅いメンバーが多いだけに、この起用法は現ロスターのポテンシャルを引き出すためには適正なのかもしれない。もちろん、シーズンが進んでチームが成熟してくるにつれて先発メンバーも徐々に固定されていくはずだが、そこに向けてさまざまなラインナップを作り出せるという利点も生まれる。長いシーズンを見たときに、最終的な期待値は高いと踏んでいるのだろう。

 

それに、試合の後半で一気に存在感を強めたガードナーとオクイン(前者は4Qで11得点、後者は後半で14得点)のように、いざとなれば経験豊富なベテランたちを中心としたプレーも展開できるため、若い選手たちが安定して力を発揮できるようになれば、今年の三河は末恐ろしい存在となるはずだ。

 

シェーファーも言うように、ポテンシャルの高さは誰が見ても明らかだ。だが、それをポテンシャルのまま終わらせるか、開花させるかは選手、コーチ、チームに関係する一人一人にかかっている。まずは本日の第2戦でどのような結果が生まれるのかが興味深いところではあるが、この川崎戦の勝利は“シーホース新時代”の幕開けを告げるターニングポイントとなるかもしれない。

 

取材・文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)



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