月刊バスケットボール6月号

NBA

2022.10.04

ウォリアーズの“未完の大器”ワイズマンは今季のキーマンとなるか

(Photo/Yasutaka Ishizuka)

 

 大熱狂の「NBA JAPAN GAMES 2022」は、ウォリアーズの2連勝で幕を閉じた。プレシーズンゲームの初戦とあって、当然、各選手のコンディションやチームとしての仕上がりはまだまだで、2戦ともベンチプレーヤーを積極的に起用しながらの“様子見”という試合展開だった。

 

 そんな中、久しぶりにコートに戻ってきたジェームズ・ワイズマンがゲーム1でポテンシャルの片りんを見せ付けた。ステフィン・カリーとの息の合ったピック&ロールからのアリウープやミドルレンジジャンパーなどでゲームハイの20得点、9リバウンド。

 

 メンフィス大での1年間は出場停止処分もあってわずか3試合しかプレーできず、ルーキーシーズンとなった2020-21シーズンも出場は39試合止まり。昨季に至ってはケガで全休と本来の力を発揮する場をなかなか得られていなかったワイズマンだが、このNBAジャパンゲームズでついに真価を発揮したと見ていいだろう。

 

(Photo/Yasutaka Ishizuka)

 

 スティーブ・カーHCはワイズマンについて「練習での調子も良くてスペースの取り方、ポジショニングなどが身に付いてきた。ケガをしている間もたくさん勉強してきたんだと思う。(復帰は)彼にとって良いことだし私もうれしいよ」と言い、笑みをこぼした。

 

 機動力と身体能力という面でのポテンシャルは群を抜いており、彼のユーロステップにはヤニス・アデトクンボを彷彿させるような力強さがある。特に221cmのクリスタプス・ポルジンギス相手にゲーム1で決めたダンクは、彼のフィジカルと俊敏性を見せ付けられた瞬間だった。

 

 ケガで苦しんだ期間にもじっくりと準備をしてきた成果は着実に現れている。そして、それを成し得たのはカリーやクレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンらベテランの声を聞き入れたからこそだ。ワイズマンはベテラン陣からの学びについてこう答えた。

 

「彼らから学んだことは忍耐力だ。そして、練習し続けること。淡々と自分の仕事をやり続けるんだ。これは1試合に過ぎない。これをやり続けないといけない」

 

 カリーもトンプソンもケガに泣かされたシーズンから見事にカムバックし、グリーンは主軸2人を欠いたチームで、若手をサポートしながら辛抱強く復活の時を待った。そんな先輩たちの背中を見てきたワイズマンだからこそ、「忍耐力」という言葉には説得力がある。

 

(Photo/Provided by Rakuten Group

 

 第2戦では8得点、3リバウンドにとどまり、ゲーム1でポスタライズダンクをお見舞いしたポルジンギス相手の時間帯には、スキルと経験の差を見せつけられた。最後は6ファウルで退場と、まだまだ粗削りな選手であることは否めない。

 

 ただ、ワイズマンにとっては久しぶりの実戦復帰とあって収穫の方が大きかったのは間違いない。さらに、コロナの影響もあって満員の観客の前でプレーするNBAの試合は、このジャパンゲームズが彼にとってキャリアで初めてのことだったというのだから、なおさら意味のある試合だったはずだ。

 

 ウォリアーズで注目すべきはもちろんカリーであり、トンプソンであり、グリーンである。その中で、今季は“未完の大器”ワイズマンの成長を追いかけてみたら、シーズン終盤に差し掛かる頃にはさらにウォリアーズのゲームを楽しむことができるかもしれない。

 

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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