月刊バスケットボール5月号

3Pシュートという新たな武器を備え、世界に挑む川島悠翔「得点王になれるように」

 6月中旬に行われたFIBA U16アジア選手権2022で、歴代最高成績となる銀メダルを獲得し、FIBA U17ワールドカップ2022(7月2~19日/スペイン・マラガ)への出場権を手にした男子U16日本代表。

 

 その原動力となったのが、大会得点王、MVPに輝いた川島悠翔(福岡大附大濠高2年)だ。「世界に進出するチャンスだと思って、自分にできる全てのことをやろうと思っていました」と、全5試合で平均26.6得点、11.2リバウンドをマーク。3Pシュートも全5試合で14/33本(42.4%)決め、スピードあるドライブも含めて内外角からオールラウンドに得点を重ねた。

 

写真/FIBA.U16Asia

 

 そのU16アジア選手権と同時期に行われていた九州大会で、福岡大附大濠高の片峯聡太コーチに川島の活躍について尋ねると「すごくうれしいですね」と顔をほころばせていた。その理由は、川島の影の努力を見守ってきたからでもある。

 

「1年生の頃は、留学生に対してドライブしてアタックすることをテーマに頑張っていましたが、ウインターカップが終わって2年生になってからは、3Pシュートを徹底的に練習していました。いつも朝早くに体育館に来て、本当にずーっと打ち込んでいたんですよ。だからアジア選手権を見た人は『川島ってあんなに3Pシュートが入るんだ』と思われるかもしれないですけれど、僕としては打たせてもらえる状況であれば、あれくらい決められる選手だよなと思っていました」と片峯コーチ。

 

 川島自身は、そうした取り組みについてこう語る。「去年1年間の自分の中での反省として、外からのシュートがあまり入っていない、自信を持って打てていない、という部分がありました。そこはウインターカップが終わってからすごくたくさん練習してきて、アジア選手権では3Pシュートも自信を持って打つことができたと思います。(練習が)つらくなったときなどにはYouTubeで、コービー・ブライアント選手だったり、NBAのトップの選手たちはすごくシューティングを打ち込んでるという動画をたくさん見て。やっぱり自分はほかの人よりももっと努力しないとNBAという最高の舞台には立てないと思うので、それをモチベーションにして頑張ってきました」

 

 猛特訓の結果、自信を持って3Pシュートが打てるようになったことで、ディフェンスを外に引き出すことができ、持ち味の力強いドライブにもさらに威力が増したようだ。そしてアジアで十二分に証明したその攻撃力を、いよいよ今度はFIBA U17ワールドカップ2022で試すこととなる。

 

 高校1年生だった昨夏、U19ワールドカップに出場した川島にとっては、二度目の世界大会。U19日本代表の中で最年少だった前回は、平均10.2分のプレータイムにとどまり、平均2.3得点、1.7リバウンドで「自分は何もできなかったと思っていて、世界の強さ、レベルを痛感した」大会となった。あれから1年。日本国内やアジアで豊富な経験と自信を積んできた川島は、「八村選手と同じように、得点王を取れるように頑張ります」と高い目標を持って決戦に挑もうとしている。

 

 かつて八村がアメリカの大学のスカウトたちから注目されるようになった大きなきっかけが、2014年のU17世界選手権で大会得点王に輝いたことだった。「NBAにつながるようなアメリカの大学に行きたい」と公言している川島にとって、今度の大舞台が自身の存在を世界にアピールするチャンスであることは間違いないだろう。「ワールドカップはNBAの舞台に行くような選手たちばかりで、そういった選手たちと対戦できることがすごく楽しみですし、自分の今の実力を試せるいい機会だと思います。失敗しても何度も立ち向かって、自分の最大限を引き出せるように頑張りたいです」と川島。

 

 来たるFIBA U17ワールドカップ2022では、16チームが4つのグループに分かれてまずはグループラウンドを戦う。日本はスペイン、ドミニカ共和国、リトアニアと同組のグループB。いずれもFIBAの世界ランキングでは格上の相手だが、エース川島を筆頭にどこまで自分たちの力を発揮できるか、戦いの行方に注目したい。

 

取材・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

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