月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2022.05.28

逆境にも前を向く今村佳太「誰も成し遂げられなかったことにチャレンジできる」

 

 B1チャンピオンシップファイナルは、宇都宮ブレックスが80-61で第1戦を制し、優勝に王手をかけた。

 

 敗れた琉球ゴールデンキングスとしても、持ち味のリバウンドでは45対35(オフェンスリバウンドは22対8)と大差を付け、第4Q以外の時間帯では、ボールムーブメントもよく随所に琉球らしさを見せていた。全体的なショット精度に苦しんだこと、それが影響してか、コーナースリーのチャンスがある場面でもカウンタードライブを仕掛け過ぎ、最後にはタフショットで終わってしまう場面が目立ったことは次戦への課題となったが、点数ほどの差はなかったように感じられる。

 

 この試合で琉球のトップスコアラーとなったのはジャック・クーリーで17得点、そこにドウェイン・エバンスと今村佳太が10得点と続いた。中でも今村は今シリーズのキーマンに挙げられるスコアラーの1人。こと爆発力という点において、現リーグで彼と肩を並べられる選手は少ないだろう。この試合でも拮抗した第3Qには、ドライブ、3Pシュートなどで連続8得点を挙げ、琉球がリズムをつかむきっかけとなった。最終的には宇都宮のディフェンスと、今村自身がマッチアップしていた相手のキーマン比江島慎の活躍が上回ったが、初めてのファイナルの舞台でのパフォーマンスと考えれば、悪くないものだったと言えるだろう。

 

 今村自身も「もっと得点で引っ張れればベストでしたが、自分がアタックしていく中で、たとえシュートを外してもジャック(クーリー)のプットバックなどが生まれていたので、直接点には結び付きませんでしたが、アタックする気持ちは示せたと思います」と、アグレッシブな姿勢を継続できたことには一定の自己評価を下している。

 

 

 ホーム、沖縄アリーナで行われた秋田ノーザンハピネッツとのクォーターファイナル第1戦から島根スサノオマジックとのセミファイナル第2戦までの今村の得点は順に10得点、12得点、21得点、25得点と右肩上がりに調子を上げていることもあり、東京体育館という初めての環境にアジャストできれば、さらなる爆発を見せてくれることにも期待ができそうだ。

 

 とはいえ、ファイナルは2戦先勝方式と、琉球にとっては後がない状況。試合後の会見で桶谷大HCが「宇都宮のディフェンスでストレスがかかる中で、メンタル的にもきつい中で40分間戦うのはタフですが、それを乗り越えないと勝利はないので、明日もう一度準備したいと思います」と気を引き締め直したように、遂行力の高さがモノをいうシリーズだけに、チーム全体に、そして今村自身にもより精度の高いプレーが求められる。

 

 そんな極限のプレッシャーの中でも今村は、逆境を楽しむかのようなこんな言葉を残した。「苦しいファイナルのスタートですが、自分たちが誰も成し遂げられなかった第2戦と第3戦に勝って(逆転)優勝することにチャレンジできるのは楽しみだと思っているので、切り替えて明日もう一度宇都宮にチャレンジしたい」

 

 一発勝負から2戦先勝方式にレギュレーションが変更された昨年のファイナルは、第1戦を制した千葉ジェッツが優勝しており、もし琉球が0勝1敗から逆転優勝すれば、文字通り初めてのこととなる。他のリーグでは劣勢からカムバックして優勝するケースも少なくなく、日本でもNBLラストシーズンとなった2016年には東芝ブレイブサンダース神奈川(現川崎)がアイシンシーホース三河(現三河)に2連敗からの3連勝で逆転優勝、NBAファイナルでも東芝の優勝と同年の16年にクリーブランド・キャバリアーズが1勝3敗から大逆転を果たすなど、バスケットボール界にそうした歴史があることは事実だ。

 

 そうした歴史を鑑みると、第2戦の行方がさらに楽しみになってはこないだろうか。それに、今村が発したこの言葉は、琉球がシーズンを通して積み重ねてきた自信を具現化したようにも感じられる。島根とのセミファイナルでも大差からのカムバック、ギリギリのクロスゲームをブザービーターで制してきた琉球。逆境を乗り越えてきたチームの真価が次戦で試されることとなる。第2戦は明日、16時5分にティップオフだ!

 

 

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

写真/©︎B.LEAGUE



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