月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2022.05.28

ビッグランの火付け役となった比江島慎「大事な場面が自分の時間帯だと思っている」

 

 琉球ゴールデンキングスと宇都宮ブレックスによるB1チャンピオンシップファイナル。第1戦は序盤からフィジカルな守り合いの展開となったが、4Qで一気に抜け出した宇都宮が先勝。優勝に王手をかけた。

 

 前半はどちらの流れとも取れない時間帯が続き、スコアは38-35と、我慢比べ。琉球はシュート成功率がなかなか上がらない中でもオフェンスリバウンドで大きな差を付けていたことで接戦に持ち込み、宇都宮としても差を付けられる場面で粘られていたこと、ジョシュ・スコットが第1Qで2つのファウルを犯してしまったことなどで、点差は広がらなかった。

 

 第3Qには琉球の今村佳太が連続得点で流れを呼び込みかけるも、宇都宮も前半で課題となったオフェンスリバウンドからスコットやチェイス・フィーラーがセカンドチャンスポイントをモノにし、54-56。クォーターエンドこそ、やや宇都宮に流れが傾いたが、終盤までもつれるつば迫り合いの展開が予想された。

 

 

 しかし、最終クォーターに入ると、それまでの30分間が嘘のようなワンサイドゲームに。この10分間のスコアは26-5と宇都宮が圧倒したのだ。「トータルではかなりオフェンスリバウンドを取られてしまっていますが、全員で頑張ることを後半もし続けることができました。第4Qに限ってはそこまで取られていませんし、直接点につながるリバウンドが少なくなったのが突き放せた要因」と安齋竜三HCが振り返るように、リバウンドをもぎ取ったことで徐々に流れを引き寄せ、ゾーンディフェンスも機能し琉球のミスを誘発。トランジションからの得点が増加していったことが、ビッグランにつながった大きな要素だったのは間違いない。そんな時間帯で、特にオフェンスの火付け役となったのが、比江島だった。

 

 第3Qを終えた時点での比江島の得点はわずか6点で、フィールドゴールは2/7と今一つ波に乗れていなかった。しかし、第4Q開始早々にこのクォーターのファーストポイントとなるレイアップをアンドワンで沈めると、フリースロー、ジャンプショットと連続得点。極め付けは、コー・フリッピンのダンクの直後のプレーでファウルを受けながら見事なリバースレイアップをねじ込んだ場面だ。

 

 この得点で流れは完全に宇都宮に傾き、追い討ちをかけるようにもう一本比江島がドライブからレイアップをメイク。焦りが見え始めた琉球はタイムアウトを挟むも、今村が「うまくいかない時間帯が出た時に我慢し切れずに個で打開しようとし過ぎて、ボールが停滞してしまった」と振り返ったようにリズムを失い、パスミスから走られる場面が増えてしまった。

 

 最終スコアは80-61。第4Qだけで11得点のトータル17得点と、勝負どころで爆発したエースの活躍に引っ張られた宇都宮が、初戦を制した。セミファイナル後には昨年の苦い経験を踏まえて、「リラックスして試合を楽しむことがカギ」と語っていた比江島。試合後の会見ではそうしたメンタル面での充実を感じさせるような以下のコメントを残している。

 

「前半はなかなか本調子にならない中で、(欠場した喜多川)修平さんの穴は大きかったですが、全員でカバーしてくれて、なんとか相手のペースに行きそうなときにも我慢してくれました。そういうところで、4Qの大事な場面が自分の時間帯だと思っているので、そこまでチームが我慢してつないでくれたので、あとは自分が。4Qに自分らしいプレーができてよかったと思います」

 

 特に、このコメントの「4Qの大事な場面が自分の時間帯だと思っている」という部分には、比江島の決意と自信を感じずにはいられない。失意のどん底に沈んだ1年前の経験から、見事な飛躍を遂げた比江島。誰もが認める宇都宮のエースは、チームを優勝に導くことができるだろうか。歓喜の瞬間まであと1勝だ。

 

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

写真/©︎B.LEAGUE



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