月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2022.04.28

ケガ人続出の苦境に光を照らすアルバルク東京のヤングカルテット

 アルバルク東京がホーム、アリーナ立川立飛にレバンガ北海道を迎えたB1第34節。チャンピオンシップのシード順がかかったこの試合は、A東京にとっては是が非でもモノにしたいものだったと共に、主力の多くが欠場する正念場のゲームともなった。

 

 この試合では、ジョーダン・テイラー、アレックス・カークの外国籍2人と、帰化選手のライアン・ロシターがケガによりロスター外に。ローテーションビッグマンがセバスチャン・サイズ1人という中で、ルカ・パヴィチェヴィッチHCは、これまで以上に積極的な選手起用で応戦。結果的には82-73で接戦を勝ち切り、緊急事態を見事に乗り切った。

 

 この試合ではベンチ入りした10人中、菊地祥平を除く9人を起用し、内8人が10分以上のプレータイムを獲得。24得点の田中大貴、19得点、16リバウンドのサイズを軸に全員で40分間を戦い抜いた。その中でも光る活躍を見せたのは、4人の若手選手たちだ。

 

得点源の一人として、攻防に奮闘した小酒部

 

 今季19試合目のスターター起用となった小酒部泰暉は、序盤から積極的にリングにアタック。ファウルを獲得してフリースローにつなげたり、外で待つ味方にキックアウトをしたりと奮闘。ディフェンスでも寺園脩斗ら北海道のプレーメイカーやスコアラーをガードする場面も多く、14得点、6アシストという数字以上のインパクトを残した。

 

 その小酒部と共に今季初のスターター出場となった吉井裕鷹も、体を張ってスクリーンをかけ、ディフェンスでもダニエル・ミラーやショーン・ロングら自分よりもひと回り大きな相手ビッグマンに対しても一歩も引かず。3Qにはロングを相手にオフェンスリバウンドをもぎ取って貴重なセカンドチャンスポイント。約18分間のプレーで4得点と2つのオフェンスリバウンドを記録した。

 

スタッツには残らない吉井の活躍が北海道にダメージを与えた

 

 

 そして、リバウンド面で奮闘した選手がもう1人。平岩玄だ。200cmのビッグマンは手薄なインサイドをカバーすべく1Qからチャンスをつかむと、出場した約19分間の全てで相手ビッグマンに果敢に立ち向かった。5つを使い切ってファウルアウトとなったことも、その奮闘の証しと言える。ハイライトプレーは前半終了のブザーと共にティップショットを決めたシーン。満員のファンを前に最高の形で後半にバトンをつなぐことができた。

 

 吉井と平岩の活躍には、敵将の佐古賢一HCも「本当に2選手とも能力が高いので、ある程度の予測はしていましたが、特にオフェンスリバウンドのところで絡まれたのが、我々にとっては痛い部分でした。警戒していた中でも彼らは絡んできたという印象です。ディフェンスもすごくハードに、良いディフェンスをしていたと思うので、我々もそういうところは見習いたい」と、リスペクトを込めた評価を下している。

 

平岩はファウルアウトになるまで相手ビッグマンに果敢に挑んだ

 

 そして、4人目はこの試合で田中、サイズと共にゲームMVPに輝いた笹倉怜寿だ。「人数が少ない中で主力をどれだけ休ませるのか。僕が出場していたときは耐える時間帯でしたが、耐えるだけでなくどれだけチームに勢いを与えられるかが大切でした。持っているものを全て出そうと思っていたので、それが結果につながって良かったです」と、振り返った24歳のPGは、出場時間は約8分と他の3人に比べるとワンポイントの起用ではあったものの、なかなか点が伸びない時間帯にポンプフェイクからショートジャンパー、さらにペイントにアタックしてスクープショットをヒット。北海道にとっては痛い場面での得点を2度演出したことが自身初のゲームMVPという形で評価された。

 

限られた時間で最大限のパフォーマンスを見せた笹倉

 

 若手選手の活躍には、パヴィチェヴィッチHCも「日本人ビッグマンはサイズも経験もスキルも、外国籍選手と比べると低くなってしまいます。その中で吉井選手、平岩選手がファイトしてくれて、良いプレーをしてくれました。外国籍選手のマッチアップにも負けずに39分間リードしていたので、今後もこの活躍を続けてほしいです。笹倉選手もローテーションに入れるかはまだ分かりませんが、今日は彼にもプレッシャーをかけていて、良いパフォーマンスをしてくれたと思います」と高評価。「試合に出る選手、特に若い選手には『思い切ってプレーしてほしい』と常に伝えています」という日々の声かけが、彼らのアグレッシブな姿勢を生み出したのだ。

 

 そんな若手選手の関係性について、笹倉は以下のように答えてくれた。

 

「練習や苦しいときを一緒に切磋琢磨して過ごしている仲間なので、お互いの活躍はすごくうれしいです。先ほど吉井と話したときにも僕の活躍を喜んでくれて、そういうお互いを高め合っていける仲間なんです」

 

 ケガ人の復帰時期は今のところ未定となっており、チャンピオンシップに向けて苦しい状況であることに変わりはない。しかし、そんな状況下でも若手が着実に自信を付け、成長している事実がチームにまばゆい光を照らしている。

 

取材・文・写真/堀内涼

 



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