月刊バスケットボール6月号

【ウインターカップ2021】今大会開花したエースナンバー”14”

 さかのぼること1年前のウインターカップ3回戦。福岡大附属大濠は、後に準優勝する東山に28点差(65‐94)で完敗を喫した。この試合、27分間の出場で僅か6得点に抑えられ、「先輩たちにたくさん支えてもらったのに、コートの上でプレーで返すことができなかったことが悔しいです」と、悔し涙を浮かべていたのが当時1年生だった湧川颯斗だ。昨年のインターハイはコロナ禍で中止となったため、湧川にとっては高校初めての全国大会だったが、苦い結果となってしまった。

 

 新チームに代替わりし、2年生になった湧川は、かつて杉浦佑成(三遠)や横地聖真(筑波大)らが着けてきたエースナンバー“14”を片峯コーチから託された。そして「一つ一つのプレーに背番号の重みを感じながら、責任感を持って戦っていきたいです」と固く決意。

 

 

 だが、インターハイでは準決勝で中部大第一に敗れ、ウインターカップ県予選でも福岡第一に敗れるなど、今季ここまで思うような結果が出なかった。県予選では苦しい時間帯でエースガードの⑬岩下准平に頼ってしまう場面もあり、湧川は「『自分が』となり過ぎて周りが見えなくなったり、行くべきところで迷ったり、判断が悪くてターンオーバーが多くなってしまいました」と反省の弁。ただ、だからこそ「ウインターカップでは先生からも『1、2年生に懸かっている』と言われていて、僕ら3人の成長がチーム力の底上げにつながると思うので、責任感を持って頑張りたいです。3年生に引っ張られてばかりではなく、むしろ『自分たち3人が3年生に優勝をプレゼントするんだ』という気持ちで練習から取り組みたい」と、優勝への思いを新たにしていた。

 

 

 そして迎えた今大会。大一番となった中部大第一との3回戦では前半ファウルトラブルでほぼ出番がなかったが、後半から吹っ切れたように積極性を見せ、結局19分間の出場で22得点。夏のリベンジに大きく貢献し、翌日の正智深谷戦でも開始すぐさまバスケットカウントを決めるなど、湧川は中部大第一戦の後半からの好調をうまくつなげていた。準決勝の仙台大明成戦では、38得点をたたきだした⑬岩下に次ぐ24得点。さらにディフェンスでも集中を見せ、5スティール、3ブロックとハイレベルな一戦を制する原動力となった。

 

 大会最終日、決勝の帝京長岡戦では、独特の緊張感もあって互いに得点が伸びない重い展開に。それでも湧川は要所で果敢にドライブを仕掛け、夏から課題にして猛練習してきた3Pシュートにも成功。1点リードの場面で迎えた最後のオフェンスでは、リバウンドをタップして値千金の決勝点を挙げ、チームを勝利に導いた。

 

 

 

 最終スコアは59‐56。湧川は「展開が重くはなってしまったのですが、我慢強く戦えたことが勝因になったと思います」と試合を振り返る。そして「このチームは(⑬岩下)准平さん、(④大澤)祥貴さんをはじめ、3年生のみんながみんなリーダーシップがあって、支えられてやってきました。この3年生と一緒に優勝できたことが本当にうれしいですし、来年は自分が准平さんのような頼もしい選手になって、またこの舞台に立って2連覇したいです」と、早くも来年を見据えて意気込みを語っていた。

 

 片峯コーチによれば、来年は卒業する岩下の背番号“13”を受け継がせる予定だという。2年生エースから、絶対的リーダーへ――。今大会で一皮むけた湧川の、ラストイヤーの戦いぶりも目が離せない。

 

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取材・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)



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