月刊バスケットボール5月号

【ウインターカップ2021】京都精華学園を支えた3年生の存在感

 

 ウインターカップ女子決勝。女王・桜花学園に挑んだ京都精華学園だったが、67-71とわずか4点及ばず、初めての全国制覇とはならなかった。

 

 今年の京都精華学園で脚光を浴びたのは1年生ポイントガードの#17堀内桜花や、同じく1年生でリバウンドでの奮闘が光る#16八木悠香、そして大会ナンバーワン留学生とも称される2年生の#18イゾジェ・ウチェら下級生。本来、注目を浴びるはずの3年生は下級生に比べるとスポットライトの中心に立つことは少なかった。

 

 そんなチームのキャプテンを務めたのは抜群のリーダーシップと非凡なシュート力でチームを引っ張った#4瀬川心暖。その瀬川と前述した下級生3人とともに不動のスターティング5となったのが、もう一人の3年生で職人タイプの3&Dプレーヤー#5植村文音だ。

 

 

 中高6年間でチームを作り上げる京都精華学園だが、山本綱義アシスタントコーチいわく彼女たちの代は「唯一、全中にいけていない代」だそうで、ほかの世代の選手と比べたときの大舞台でのキャリアの浅さが、この1年間のチームビルディングにとっての課題の一つだった。

 

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 それでも、昨年度のJr.ウインターカップで準優勝した堀内らゴールデン世代が入学したことで「本当に(3年生が)自信を持ち始めたのは1年生が入ってきてからでした」と山本Aコーチ。「1年生を大事にしながらチームを、そして自分たち自身も向上しようという気持ちを持ってくれました」と言うように、上下関係の垣根を取り払い、豊かな才能を持ったルーキーたちがのびのびと過ごせる環境を作り上げた。プレー面でも、特に瀬川は1年間で高校トップクラスのプレーヤーへと成長。決勝戦ではゲームハイの17得点をたたき出している。

 

 そして、植村もまた自らのスタイルを確立。チームに何が足りないのかを考え、「ディフェンスはハンズアップなどの細かな部分を心がけて相手の得点源を抑えようと頑張ってきました。3年になってスタメンで試合に出始めてからは特に3Pシュートとディフェンスという意識でプレーしていました。高校3年間で自分のスタイルが固まったと思います」と植村。エースキラーとして数字に表れない部分でチームを支え、彼女の要所の得点はある意味で相手にとって一番ダメージの大きいものだったかもしれない。

 

 

 そんな2人はお互いの存在をこう語る。まずは瀬川から植村。「今日も試合ではオフェンスリバウンドに積極的に絡んでシュートを決めてくれたり、ディフェンスではいつも相手のエースの選手についてくれます。見えないところでチームを救ってくれるプレーがすごく多くて、同じ3年生としてコートに立ててすごくよかったです。自分がダメなときに絶対に植村が背中を押してくれたので、自分にとってはすごく頼りになる存在でした」

 

 植村は瀬川について「瀬川はシュートが入るので、自分たちがしっかりとパスを回して彼女に打たせようと意識していました。速攻などで外にパスアウトしたときにもシュートを決めてくれるので、その信頼があります。精華として初の準優勝で、1年生に助けられた部分は多かったけど、2人で決勝にいけたのでよかったです」と言葉を並べた。

 

 自信というのは経験を重ねない限り決して得られるものではない。高校3年間の、特に最後の1年で大きな成長をのぞかせた2人をはじめとした3年生は、間違いなく下級生の心の支えだった。だからこそ、堀内は大会前に「ウインターカップでは日本一を取って、ラストの大会となる3年生に日本一をプレゼントしたい」と口にしていたのだ。

 

 目立たなくても、スポットライトが当たらなくても、今年の京都精華学園は3年生ありきのチームだった。

 

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取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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