月刊バスケットボール5月号

大学

2021.12.13

【インカレ2021】男子3位決定戦/笑顔と涙で締めくくった両キャプテンの思い

前半の11点差を3Qでばん回し

筑波大が専修大に逆転勝利

 

 12月12日、インカレは最終日を迎えた。前日の準決勝で東海大に敗れた専修大と、白鷗大に敗れた筑波大。両チームともに相手を苦しめながらもあと一歩及ばず、最終日は銅メダルを懸けて3位決定戦に回ることに。5連戦とあって両チームともに満身創痍、また惜敗から気持ちを切り替えるのも難しい状態だったが、泣いても笑ってもシーズンを締めくくるラストゲーム。負けられない一戦となった。

 

 

 前半、長くペースをつかんだのは専修大。1Qの開始3分間は無得点だったものの、体を張ったディフェンスで我慢。オフェンスではケガで欠場した#13クベマジョセフ・スティーブの分まで#0ケイタ・シェイクブーバガーがダンクを決めて気を吐き、#95齋藤瑠偉の3Pシュートや#23キング開のバスケットカウント、#1山本翔太の4点プレーなどで逆転からリードを奪った。4点リードで入った2Qも、筑波大#34三谷桂司朗に連続得点を許して一度は同点に追い付かれたものの、専修大はインサイドで力強さを発揮し、自分たちの流れを引き寄せる。#16淺野ケニーのリバウンドシュートや#46寺澤大夢のゴール下でリードを広げ、34‐23で試合を折り返した。

 

 

 だが後半に入り、流れが一転する。筑波大は準決勝での「相手の圧に押されて消極的になってしまった」(吉田健司監督)という反省を生かし、「最後に後悔だけはしたくないと思った」という#23半澤凌太がドライブやジャンプシュートで反撃。スコアラーの#13二上耀はファウルトラブルでベンチに下がるものの、同じく4年生の#75井上宗一郎がインサイドを攻め立て、相手のファウルを誘う。フリースローでコツコツと点数を伸ばし、残り3分にはついに逆転。筑波大#7浅井修伍のバスケットカウントで3点リードに広げて3Qを終えると、4Qも勢いは止まらなかった。専修大も苦しい流れの中で#44米山ジャバ偉生のリバウンドシュートなどで食らい付くものの、5~7点差が追い付けない。反対に筑波大はコートに戻ってきた#13二上が息を吹き返し、リバウンドシュートやドライブで得点をけん引した。そのまま筑波大が逃げ切り、最後は69‐58でタイムアップ。両チームともに涙で目を赤くしながら、互いに抱き合って笑顔で健闘をたたえあった。

 

 

 

後悔なく終えた

両チームのキャプテン

 

 試合後、「後悔したままシーズンを終えるところでした」と明かすのは筑波大のキャプテン#23半澤。準決勝では考え過ぎて消極的になってしまう場面が多かったため、「最後は後悔だけはしたくないと思ったので、自分の気持ちを強く持って、考え過ぎずにというか、理屈ではなく気持ちで戦いました」とラストゲームを振り返る。筑波大はリーグ戦中、ケガ人が続出して苦しんだが、今大会はほぼ復帰し、チームで戦って関東2位の日本大をダブルオーバータイムで破るなど大会に爪痕を残した。#23半澤は「自分がキャプテンらしいことができたかと言えば、そう言い切れないですし、今までの牧さん(隼人/2019年度卒/琉球)や暉さん(菅原/2020年度卒/群馬)のような頼もしいキャプテンにはなれなかったと思います。でも宗一郎(#75井上)や耀(#13二上)、同級生みんなが支えてくれて、昨日も今日も下級生が活躍してくれて…。チーム一丸となって戦えたので、キャプテンをやって良かったです」と語っていた。

 

 

 一方、敗れた専修大のキャプテン#23キングも「準決勝から簡単に気持ちを切り替えられるゲームではなかったんですが、最後の試合だったので笑顔で楽しんで終わろうと。チームのみんなは全員よく戦ってくれました」と、すがすがしい表情だった。準決勝では終盤に驚異の追い上げを見せて東海大を苦しめたが、その諦めないメンタリティーの中心こそ#23キング。「チームというのは、キャプテンが諦めたらそこで終わってしまうと感じています。チームがどんな状況でも、最後のブザーが鳴るまで自分が一番諦めないというのを意識して、その姿勢をみんなに共有してやってきました」と、心身ともに頼もしいキャプテンだった。高校時代はそこまで名の知られた選手ではなかったが、「プロになりたいという夢を高校生の頃から持っていて、そのチャンスをつかめるかどうかは大学での自分の努力次第だと入学したときから分かっていました。(佐々木)優一さん(監督)もそれを認めて自分をガードにコンバートして使ってくれて、本当に感謝していますし、お手本となる先輩たちからたくさんのことを学べたのは自分の財産」と#23キング。「バスケットボール選手としても人としても、この大学4年間が一番成長できました」と振り返った。

 

 

 キャプテンとして苦労しながらも、この1年間を全力で走り切った筑波大#23半澤と専修大#23キング。惜しくも準決勝で行く手を阻まれ日本一の夢はかなえられなかったが、それぞれ充実の4年間を終えて新たなスタートを切った。

 

取材・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

写真/山岡邦彦



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