月刊バスケットボール5月号

男子日本代表、第2戦は中国の高いシュート力に翻弄され33点差の大敗

 ゼビオアリーナ仙台で行われている「FIBA バスケットボールワールドカップ 2023 アジア地区予選 Window1」。11月28日、男子日本代表は中国との第2戦を迎えた。

 

 

【関連レポート】新生・男子日本代表の初陣(vs中国)は序盤の差が響き16点差で完敗

 

またしても課題となった

ゲームの入りのエネルギー

 

 前日の第1戦は、出だしから中国に流れをつかまれて63‐79で完敗。だからこそトム・ホーバスHCは試合の入りを大事にしていたが、この第2戦も序盤から主導権を握ったのは中国だった。中国は前日の第1戦で24得点・12リバウンドを挙げた#15ジョウ・チー(212cm)がケガの影響もあり欠場したものの、前日に続いてスタメンとなった210cmの#21フー・ジンチュウや、前日は登録外だった212cmの#31ワン・ジェーリンがゴール下で猛威を振るい、インサイドを固めればシックススマンの#8ジャオ・レイが3Pシュートで加点。日本は開始5分で4‐16と圧倒され、「自分たちのエネルギーや自信が下がってしまった」(ホーバスHC)とタイムアウトを取らざるを得ない。その後、#15岸本隆一の3Pシュートが決まるもそこから約3分間無得点。終盤は中国のゾーンプレスにボール運びでミスが重なり、結局10‐29と大きく水を明けられて最初のQを終えた。

 

 日本に流れが傾いたのは2Qの出だし。激しいディフェンスで相手のミスを誘い、速攻に走って#20寺嶋良が得点。さらに左ウイングから#51古川孝敏が2連続で3Pシュートを決め、#3ルーク・エヴァンスの得点で11点差に縮める。しかしここからというところでミスが重なり、点差を一桁にはできない。逆に中国は5人一気に選手交代して流れを変え、ガード陣を中心に外角のシュートやドライブ、オフェンスリバウンドから得点を重ねていく。日本は再び点差を広げられ、29‐53で前半を折り返した。

 

 

後半から良いプレーが出始めるも

高確率な中国のシュートを止められず

 

 3Q、#33ウー・チエンの3Pシュートで中国が先制点を挙げ、その後も#8ジャオの鮮やかなドライブなどでリードを広げる。対する日本はフリースローで地道に得点を重ねるものの、気が付けばダブルスコアに。前日の第1戦ではファウルトラブルもあり2得点に終わった#6比江島慎が、3Pシュートやドライブ、ディフェンスを引き付けてのアシストで日本のオフェンスをけん引するものの、息の合った連係で得点を重ねていく中国を止められない。それでも3Q終盤には、カットインから#20寺嶋が得点し、#9ベンドラメ礼生がスティールに成功してアンスポーツマンライクファウルを得るなど良いプレーが続き、最後は#19西田優大の3Pシュートで締めて50‐84で最終Qへ。

 

 最終Q、#3エヴァンスがオフェンスリバウンドで気を吐き、#6比江島がスティールからリバウンドに飛び込んでマイボールにするなど、ハッスルプレーで日本に流れを引き寄せる。3Q終盤から4Qにかけて日本は13 ‐ 0のランに成功し、一時18点差に。中でも#6比江島は、前半からうまく切り替えて後半に好プレーを見せたが、「前半はターンオーバーをしたり、昨日のファウルトラブルを気にしてディフェンスのプレッシャーが足りなかったり、出だしから向こうにリズムを作らせてしまいました。ハーフタイムで(ホーバスHCから)直接『エネルギーが足りない』という指摘もあったので、ファウルをしてもいいから自分からプレッシャーをかけてリズムを作ろうと。オフェンスでは自分の仕事であるドライブでのペイントアタックをもう一回見つめ直して、心がけました」と振り返る。

 

 

 ただ、タイムアウトで落ち着きを取り戻した中国は、好調の#8ジャオが冷静に得点し、鮮やかなパス回しから#7ジャン・ジェイリンが3Pシュートを決める。日本も決死のディフェンスから#20寺嶋が速攻をねじ込み、#19西田がドライブで加点して対抗しようとするが、それでも中国は#8ジャオがこの試合5本目の3Pシュートを沈め、#7ジャンが速攻から豪快なボースハンドダンクでディフェンスを蹴散らす。残り2分半には、#6グォ・アイルンのシュートで得点を100点台の大台に。その後も日本は反撃の糸口をつかめず、73‐106でタイムアップ。前日以上に点差を付けられ、完敗となった。

 

 前日の試合は圧倒的な高さでねじ伏せられた感が強いが、この第2戦ではガード陣のシュート力の差も思い知らされた。中国は結局、流れるようなパス回しから絶好のタイミングで3Pシュートを放ち、58.3%(14/24本)の高確率で成功。前日の課題を踏まえてインサイドの守りを固めた日本をあざ笑うかのように、前日とはまた違った強さを発揮した。2試合ともに、日本は格上の相手にうまく対応され、後手後手の展開になってしまったと言えるだろう。

 

 

苦い敗北から収穫を得て

代表は一度解散してWindow2へ

 

 試合後、「この中国とライバルになるためには、40分間、日本のエネルギー、気持ちを出さなければ」とトム・ホーバスHC。2試合ともに出だしが悪く、良い流れがあってもミスから流れを崩すなど、自分たちの戦いを40分間継続する難しさを痛感させられた。ただ、「悔しい結果ですが、ポジティブなことを探さなければいけません」とホーバスHC。特に前日よりも多くオフェンスリバウンドに飛び込んだことや、この試合で16得点を挙げた#20寺嶋や2試合連続2桁得点の#19西田ら、フレッシュな若いメンバーの活躍を称賛していた。#20寺嶋は「日本代表として初めての試合に臨んで、代表のユニフォームを着ているということが最後までエネルギーになりました。自分らしいプレーも出せましたが、ガードとしてクリエイトできなかったことが課題です。フィジカルの強さや高さは予想以上で、良い経験ができました」と収穫をコメント。

 

 会場に集まった1500人以上の観客や映像で試合を見守ったファンに向け、ホーバスHCは「この2ゲーム、(新体制となった男子日本代表の)スタートはあまり良くなかった。でもみんな我慢してください。間違いなくうまくなります。2023年のワールドカップで、もっともっと良いバスケットを見せます。皆さん応援してください」と力強く飛躍を誓っていた。ホーバスHCや選手たちが合い言葉のように口にするように、この2試合は新生・男子日本代表にとって「旅の始まり」。険しい旅路となりそうだが、日本一丸となってここから這い上がっていくしかない。第2戦の試合後、ホーバスHCは「この経験、気持ちを忘れてはいけない」と選手たちに伝えたと言う。

 

 FIBAワールドカップアジア地区予選は今回のWindow1を終え、これから2022年2月のWindow2、6月のWindow3へと進んでいく予定。満足な準備期間を取ることは難しいが、Window2に向けた2月の強化合宿は代表候補をさらに絞り、より少ない人数で日本らしい戦い方を追求していく旨をホーバスHCは話していた。今回の2連敗の反省を糧にして、チャイニーズ・タイペイ代表やオーストラリア代表に全力でぶつかりたいところだ。

 

 

取材・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

写真/石塚康隆



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