月刊バスケットボール5月号

Wリーグ

2021.10.25

銀メダリストたちの競演。Wリーグのハイレベルな戦いが本格スタート

 Wリーグは10月16日に新潟対アイシン戦で開幕したが、開幕週に行われたのは同カードのみ。多くのチームは10月22日~24日にかけてシーズン初戦を迎えた。今シーズンはFIBAアジアカップに代表チームを送り出したこと、さらにそのメンバーが隔離期間を必要とすることになったために、当初予定していたスケジュールを変更し、イレギュラーなシーズンインとなった。その影響もあり、昨シーズン覇者のトヨタ自動車だけはまだシーズン初戦を迎えていない。

 10月22日には東京羽田と富士通が対戦。このカードでは町田瑠唯(富士通)と本橋菜子(東京羽田)の“銀メダル”司令塔対決に注目が集まったが、本橋は昨年11月の右膝前十字靭帯損傷の影響もあり、スターターを外れ、出場時間も限定した起用となった。東京羽田の新指揮官・萩原美樹子HC(ヘッドコーチ)は、本橋がリハビリを続けながらオリンピックに出ていたことから、「戻ってきてからもう1回しっかりとリハビリに取り組みました。年明けくらいに100%に戻ってくれれば」とエースガードの状況を説明する。

 一方の富士通は東京オリンピックのアシスト王であり、オールスター5に選出された町田だけばなく、3x3代表の篠崎澪、アジアカップにも出場した若手のオコエ桃仁花、さらにENEOSから移籍の宮澤夕貴という4人のオリンピアンを擁し、優勝候補の一角と目される。

 試合は序盤は拮抗していたものの、後半に入ってディフェンスが機能し始めた富士通がリードを広げ始める。4Qに入り、町田のアシストから宮澤の3Pシュートが決まると、試合の流れは決した。76-48と勝利したこの試合で、宮澤は3Pシュートは一本だけの成功に終わったが、BTテーブスHCは「積極的に打ってくれていたので良かったです。それ以外にリバウンドやインサイドでのポスティングなどで貢献してくれました。ENEOSのときとは変わって、インサイド、アウトサイドと両方の役割を担ってもらっています」と話す。

 

富士通に移籍してのデビュー戦に臨んだ宮澤

 

 宮澤自身も「3Pシュートの確率が1/6と悪かったですが、シュートは打てていたので、思い切ってしっかり打って、明日につなげていきたい」と語り、そのうえで「モーションオフェンスの中で止まってしまったり」と課題も挙げた。司令塔の町田も「出だしが重くなってしまい、自分たちのペースがなかなかできなかった」と14得点をあげた自分のオフェンス面よりも、チームの流れを作れなかったことを反省。テーブスHCも「得点だけを見たら良いゲームだったように見えますが、内容としてはフラストレーションの溜まるゲーム」と振り返る。

 この試合、ベンチスタートながらチームトップの15得点をあげたオコエは、オリンピック、アジアカップの両大会に出場、隔離期間があけてチーム合流したのは前日、21日のことだったと明かす。「オフェンスの自分の動きを覚えるので精一杯でした」と話しつつ、優勝を経験している宮澤、中村優花の2人がENEOSから加わったことで「チームの雰囲気は変わった」と今シーズンへの期待を口にした。

 翌23日には、ENEOSが山梨QBと対戦。昨シーズン連覇をストップされたENEOSにとっては失地回復を期すシーズンだが、初戦は大苦戦となった。しかし、この日は、昨年の皇后杯で右膝前十字靭帯を断裂、以降戦列を離れ、東京オリンピック出場も断念した渡嘉敷来夢の待望の復帰戦でもあった。今シーズンになみなみならない意気込みで臨んでいる渡嘉敷は35分の出場で35得点と大車輪の活躍を見せ、最後は95-91とチームに勝利をもたらした。

 どのチームもまだまだ目指すべきチーム状態ではない。代表選手を多く輩出しているチームにとっては、チーム練習もままならない状況でのシーズンイン。それでも久しぶりにファンの前でプレーをした選手たちは、誰もが「楽しかった」「ワクワクした」との思いを口にする。

 東京オリンピックで銀メダル、アジアカップで5連覇を果たした日本女子バスケットボール。世界トップを目指す選手たちの、ハイレベルな切磋琢磨の場であるWリーグのシーズンを通して、チームがどう成長していくか、選手たちがどうステップアップしていくかを注目していこう。

(月刊バスケットボール)



PICK UP