月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2021.10.06

川崎で鮮烈デビューのマット・ジャニング、日本初インタビュー!

 

 9月30日に開幕したBリーグは、シーズンオフに大型移籍が多かったせいか、昨シーズンの上位クラブが敗れる波乱含みのシーズンインとなった。そんな状況の中、昨季東地区3位の川崎ブレイブサンダースは、10月2日、3日の“神奈川ダービー”で横浜ビー・コルセアーズに連勝し、幸先のよいスタートを切った。

 

 今シーズンの川崎は長年チームをけん引してきた辻直人、ベテラン・大塚裕土のシューター陣が移籍してその抜けた穴は大きいと見られていたが、富山グラウジーズから前田悟を、そして新外国籍選手としてマット・ジャニングを補強。両選手ともに開幕節での活躍は見事で、とりわけファンの前で初めてプレーするジャニングのインパクトは大きかった。

 

 見せ場はいきなりやってきた。スターターで出場したジャニングは、第1戦の開始1分40秒、挨拶代わりの3Pシュートを沈め、さらに横浜のタイトなディフェンスに手こずっていた時間帯にも風穴をあける3Pシュートやスティールで勝利に貢献。3Pシュート5本を含む19得点、3アシスト、3スティールの数字を残してデビュー戦を終えた。試合後に行われたクラブが選ぶMVPに選出されると、その第一声は日本語の「はじめまして!」だった。華々しい活躍だったジャニングの記者会見でのコメントを紹介しよう。

 

すでにチームメイトとも自然に打ち解けている

 

「川崎になじむのに苦労はなかった」

 

――今日(10月2日/vs.横浜)の試合の振り返りからお願いします。

 

「今日は特に1Qは自分たちのエンジンがかかるのが遅かったと思います。2Qからはチームとして良いディフェンスができたことが今日の勝利につながったと思います。一点修正することがあるならばオフェンスリバウンドの面ですね。相手にリバウンドを取られてしまっていたので、そこはしっかりと対策してまた良い試合ができるようにしたいと思いますが、まずは開幕の初戦を白星でスタートできたのはとてもうれしいです」

 

――アジャストという意味で難しかったところや、そのために周りが(ジャニング選手に)してくれたことなどはありますか?

 

「特にチームになじむのが大変だとは思いませんでした。その理由としてはこのチームには長年(川崎に)在籍している選手が多く、その選手たちが僕や(前田)サトルら新加入の選手たちをすごく温かく迎え入れてくれたと思っているからです。川崎は元から特別なものを持っているチームです。すんなり受け入れてもらえましたし、チームの一部にしてもらえたという感覚がすごくあるので、このチームになじむのに苦労はしなかったですね」

 

――これまでもヨーロッパなど何チームか渡り歩いてきた中で、ジャニング選手のパーソナリティーが新しいチームにもフィットしやすい人柄であると自覚していますか?

 

「いろいろなチームを渡り歩いてきた経験もあったし、その中でフィットするのに問題もなかったので、自分でも順応するのに時間はかからない選手なのかなとは思います。でも、先ほど言ったように川崎は在籍年数の長い選手が多数いるので、そういった面ではすごくなじみやすかったです。もし、このチームに10人新しい選手が入ってきて新しいチームを作らなければいけないという状況であれば、少しごたついたりしたかもしれませんが、川崎はしっかりとした組織であり、きちんとした待遇も受けられるのでそういった面ではなじむのに苦労はなかったです」

 

甘いマスクの“マット”。今後、ファンのお気に入りになるに違いない

 

――川崎はディフェンスをとても大切にしているチームですが、ディフェンスについてはいかがでしたか?

 

「すごくフィットしやすいと思いました。サイドでディナイするとか、しっかりとボールにプレッシャーをかけるのが川崎のディフェンスのスタイル。チーム全員がハードワークできますし、ディフェンスを徹底してやるのが川崎の特徴だと思っています。それはこれまでも自分がやってきたことなので、すごくなじみやすいです。特にジョーダン・ヒースはゴール周りでディフェンスの存在感をすごく発揮していますが、それでもやっぱりこのチームはみんなで頑張ってみんなでディフェンスをしようという意識がすごく高い。僕にとってこういったスタイルはすごくフィットしやすいです」

 

――とどろきアリーナのファンの前では初めてのプレーでしたが、いかがでしたか?

 

「声援にすごく後押しされたと思っています。50%の観戦者という状況にもかかわらず、ファンの皆さんの応援やクラップが自分たちを後押ししてくれました。これから先、川崎で、このとどろきアリーナでプレーをしていくのがすごく楽しみです」

 

同じく新加入のシューター前田(写真の#13)もジャニングの長距離砲には刺激を受けている様子

 

 また、記者会見で同じシューターの前田がジャニングについてこう話した。「ボールハンドラーとしてももちろんすごいですが、僕が思うにストップがすごくうまいです。トランジションで3Pシュートを打つときもストップがうまいので、しっかり自分のフォームで打てています。これからはシューターとして一緒にチームを引っ張っていくぐらいの気持ちでやっていこうと思います」

 

 ジャニングのプレーに前田も大いに刺激を受けてる様子だ。

 

川崎にシナジー効果をもたらすジャニング

 

 子どもの頃からの夢だったNBAのドラフト指名はされなかったが、NBAの下部組織であるGリーグをはじめ、イタリア、クロアチア、トルコ、イスラエル、ロシア、スペインなどヨーロッパで数々の経験を積んで、今シーズンからBリーグに参戦。北卓也GMが見込んだシュート力の高さは、開幕戦でのプレーを見れば一目瞭然だった。もちろん、シュート力だけが持ち味ではなく、パス、スティールなどでも存在感を見せた。開幕戦では横浜のディフェンス陣がニック・ファジーカスやヒースらのインサイドをマークすれば、外からジャニングの3Pシュートが火を吹き、外に気をとられているとファジーカスがインサイドで攻めるというパターンも多く見られた。ベンチから出てくるパブロ・アギラールも控えており、今シーズンの攻撃力はワンランクアップしている。

 

 ジャニングは8月中旬に来日し、ホテルでの隔離を経て9月2日にチームに合流。隔離期間中はホテルの部屋に持ち込まれた機材を使ってのトレーニングで体作りに余念がなかった。さらに、食事は日本食にもトライ。カツ丼、親子丼、お寿司など生ものにも挑戦するなど、初めての日本の生活に一日でも早くなじむ努力をしていたナイスガイだ。背番号は尊敬するマイケル・ジョーダンと同じ23番。ジャニングの加入が、これから川崎でどんなシナジーを生み出していくのか注目したい。

 

Matt Janning

背番号:23/ポジション:SG/生年月日:1988年6月22日/アメリカ出身/196cm・99kg/出身校:ノースイースタン大/愛称:マット

 

写真/©︎B.LEAGUE

取材・文/飯塚友子



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