日本代表

2021.10.02

バスケットボールファミリー皆の力が結集した東京2020オリンピック。その取り組みを評価し次のステップに進もう

日本のバスケットボール界全体の 成長が表れた結果

─他のカテゴリーも目標には届かない部分もあったと思いますが、その戦いぶりはすばらしかったと思います。
「満点ではありませんが、各カテゴリーで、世界の舞台で強豪チームと渡り合うような戦いぶりを見せてくれたと思っています。3x3の女子はアメリカに勝利を挙げました。コロナ禍にあって、コンタクトのある室内スポーツ。しかもチームスポーツですから、簡単な道のりではありませんでした。この結果は正に組織の勝利だと思っています。ですから、三屋裕子会長をはじめとするJBAが女子代表選手たちだけではなく、スタッフにも報奨金を与えるといった評価をしてもらえたことは、とてもうれしく感じています。
こうした評価がないと、次に進むエネルギーが枯渇してしまうでしょう。これは直接的に代表に関わったスタッフばかりのことではありません。私が技術委員長に就任して、オリンピックまで1527日でした。そして1年延期になり1891日になりました。技術委員会を作り、それぞれの委員が自発的に、責任を持ってやるべきことを遂行してくれました。これは誇るべきことです。トップの強化だけでなく、育成年代の取り組み…、マンツーマン促進やリーグ戦文化の醸成、Bリーグのユースチーム創設など、さまざまなことをお願いしてきました。指導者のライセンス制度も、指導力を高めるために努力できるように改訂しました。こうした全ての動きの集大成が東京2020オリンピックだったのです。ですから、2016年のリオオリンピックから2020年の東京オリンピックへの取り組みは、バスケットボールファミリー全体で、自分たちを褒め、良かったと励まし合い、次へ進む糧にしてほしいのです」

─さまざまな施策があり、日本のバスケットボール界全体が成長を見せたということですね。
「満足しているわけではありません。悪いところがあったのは確かです。ただ、粗探しばかりしても進めません。いいものは評価し、悪いものは改善していく。決して満足せず、エネルギーを持ってやれるかどうかが、次につながると思っています。
日本のバスケットボール界は変化して、成長しました。これは痛みも伴うことでしたから、それによく耐え、遂行したと感じています。しかし、これからは、さらに上を目指すには、もっと大変になります。ようやく世界と戦うスタートラインに立てたばかりですから。
オリンピックでは、自分たちのいいところ、ダメなところが明らかになります。世界と戦うための課題と位置が見えたのが何より良かったです。そして忘れてはならないことが国として戦うという意識です。こうしたものは実際にオリンピックで海外の選手、他の競技の選手たちと寝食を共にしたことで、感じることがあったと思います。日本として戦うといった意識が生まれるんだと思っています」


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─日本はチームで、組織力で臨みました。どこよりも準備ができていました。これからは自国大会というこれほどの、サポート、態勢は組めないといった不安はありませんか。
「チームで、組織で戦ったということは間違いないことです。自国開催のオリンピックが特別だったのも間違いありません。ですから、これまでとは同じようにできない部分も出てくるかもしれません。しかし、バスケットボールはそうした負の影響が小さな状況にあります。例えば強化費にしても、伝統的に強い競技ではなく、また国際連盟から事実上の制裁措置を受けていた経緯もあり助成金は多くありません。他の団体では強化費のほとんどを助成金に頼っているケースもある中で、幸か不幸かバスケットボールはそうではないので、これまで同様の強化活動ができる見込みです。そんなことも含めて、自分は強化と事業の接着剤だと思ってやってきていました。お金がなければ、強化ができないのも現実としてあるからです。
事業のスタッフたちと向き合いながら、コートに行けば、技術的なサポートをすることもあります。スランプの選手に進言することもありました。林咲希選手は強化合宿中にスランプの状態でしたが、恩塚亨アシスタントコーチ(現ヘッドコーチ)の協力も得ながら、シュートフォームのチェックをし、アドバイスもしました。オリンピックでは、ベルギー戦の前に、林選手がコートからサムズアップ(親指を立てるグッドサイン)してくれたので、『今日はやってくれる』と思っていたんです。
日本は組織として戦うことができます。積み重ねることができる状況です。ですから、きちっと筋道を立て、やるべきことをやり続けることが重要なのです」

─最後に、バスケットボールファミリーに向けたメッセージはありますか。
「今回のオリンピックの結果は、47都道府県すべてのバスケットボールに関わってくださった人たち、育成で頑張ってくれた先生たち、保護者、そしてファンの皆さんも含めすべての方々の力、たまものなのです。小さな選手でも、力を結集することで世界のトップを狙えるということを、女子代表が見せてくれました。3x3、男子でもその可能性を感じさせてくれたと思います。そうしたことを通して『バスケで日本を元気にする』ということができるのだと思います。その姿、晴れ舞台を会場で見てもらうことがかなわなかったのが、残念でなりません。
私は3Cと言うのですが『change(チェンジ)できるchance(チャンス)にchallenge(チャレンジ)する』のが大切だと思いますし、日本のバスケットボール界はそれができたと思っています。そして、それはこれからも重要なキーワードになります。これからも挑戦を続け、積み上げていくことが日本のバスケットボール界はできると思っています」

(飯田康二/月刊バスケットボール)



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