月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.10.02

クレイジーピンクの申し子・田口成浩が帰還した秋田ノーザンハピネッツ、茨城ロボッツとの開幕戦を白星発進!

(写真/©B.LEAGUE)

 

 9月30日の琉球ゴールデンキングス対アルバルク東京の”先出し”の開幕戦を皮切りに、全国各地で新シーズンが開幕したBリーグ。

 

 秋田ノーザンハピネッツはホームでの開幕戦で、B1初挑戦の茨城ロボッツと対戦。茨城はチーム最長身208cmのビッグマン、エリック・ジェイコブセンとアジア特別枠で獲得したハビエル・ゴメス・デ・リアニョを欠く苦しい状況での開幕となった。

 

 試合は1Qは両クラブの力が拮抗。インサイドに分がある秋田がアレックス・デイビスの高さを強調した得点に、田口成浩とジョーダン・グリンがそれぞれ3Pシュートを1本ずつ決めて順調に点を伸ばしていく。対する茨城も平尾充庸やマーク・トラソリーニら既存戦力に加え、B1での試合経験が豊富な多嶋朝飛や西川孝之ら7人が得点に絡むバランスの良さを見せた。ディフェンス面でも各選手がエナジーを全面に出し、B1最高級のディフェンス力を誇る秋田と遜色ないパフォーマンスを見せた。

 

 しかし、ここは経験値に勝る秋田。2Q以降もじわじわと点差を広げ前半で38-29、3Qには一時6点差まで迫られる場面もあったが最終的には63-47と点差を広げ、終わってみれば84-63。課題も見えた中ではあったが、選手とスタッフが全員そろった初めての試合で見事な勝利を挙げた。

 

やはり田口にはクレイジーピンクのジャージがよく似合う(写真/©B.LEAGUE)

 

 秋田にとってはこの試合で22得点、9リバウンドを記録したグリンがシーズンのお披露目となったことや、今季のスローガンに掲げる“ウルトラアキタ”達成に向けた第一歩を踏み出せたことは大きな収穫だったと言える。そして、もう一つのビッグモーメントが2017-18シーズン以来4シーズンぶりの、フランチャイズプレーヤーの復帰だったのではないだろうか。

 

 地元・秋田県仙北市出身の田口成浩が登場した瞬間、会場からは大きな、そして温かな手拍子が起こった。田口のこの試合のスタッツは前述した1Qの3Pシュート1本の成功で3得点、1リバウンド、2アシスト。出場時間は13分35秒と、決して派手なものではない。しかし、最初の3Pは会場も大いに沸き「これぞ田口」というホーム復帰戦でのファーストスコア。スタッツに残らない面でも、千葉ジェッツで鍛え上げたディフェンスで相手のコースを塞ぎ、トラソリーニに対しては見事なヘルプディフェンスで、ファウルにはなったものの、あわやハイライトとなるブロックショットを見舞った。

 

 また、オフェンスではアシストにつながるパスや、状況判断力の高さを見せつける場面が印象的。ベンチでも相変わらずの明るいキャラクターで試合を盛り上げたその姿は、まさにグルーガイ(チームの潤滑油になるような選手)と呼ぶに相応しいものだ。

 

 この試合後の記者会見で田口の声を聞くことはできなかったが、前田顕蔵HCは「チームの輪を考えながらコミュニケーションを取ってくれているので、(田口がいることで)非常に雰囲気が明るくなります。それに彼がもたらす影響はクラブの中だけではありません。ブースターの方々への思いがある選手だと思うので、彼が活躍することでもっと秋田を応援してくれると思いますし、秋田にとっては特別な選手。彼と一緒にこのコートで試合ができて本当にうれしく感じます」と笑みを浮かべた。

 

 前回、田口が秋田に所属していた際は、クラブはB2降格を経験し彼自身も若手の多いチームでリーダーシップを取りながら、プレー面でも平均11.7得点とフル稼働。『絶対にB1に戻らなければ』という見えないプレッシャーとも戦う難しいシーズンだったはずだ。しかし、千葉で優勝を経験し31歳となったベテランは、古川孝敏や伊藤駿、川嶋勇人といった経験豊富なチームメイトを得て新たな秋田のカルチャー構築に一役買っている。

 

 もちろん、それだけが今の田口の役割ではない。「シュートは彼に期待している部分で、今日は相手がゾーンを使ってきた時間帯は彼を起用しました。結果としては落としていましたけど、やっぱり大きな武器になります」と前田HCは田口へのプレー面での貢献も期待しているし、田口自身、単なるムードメーカーとして秋田に戻ってきたわけではないはずだ。

 

 シーズンが深まるにつれて田口自身も今の秋田になじんでいくはずで、スタッツも上向きになってくるに違いない。そしてまた、ゲームMVPに選出されたあかつきには、お決まりの「おいさー!」がCNAアリーナあきたにとどろくのだ。

 

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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