月刊バスケットボール6月号

【熱中症、足つり、スタミナ切れ】しないための正しい水分補給!

知らないだけで損してる!?

部活生のための栄養の知識 

 

 インターハイや全国中学大会などが開催される夏休みは、部活生たちにとって大切な期間だ。その予選に敗れれば次の大会に向け、日々練習に打ち込むことになる。さらに今年の夏は、連日、オリンピックでのトップアスリートたちの躍動が伝えられているだけに、やる気にみなぎる部活生が多いに違いない。

 

 しかし、気持ちだけで、パフォーマンスが向上するわけではない。スキルとともに、体力の向上が必須なのは今更言うまでもないだろう。そして、その体力を作り出すのはトレーニングと食事である。海外で活躍するトップアスリートが専属の料理人を雇っているといったニュースを目にすることもあれば、“勝負メシ”なんて言葉も耳にする。しかし、アスリートにとって食事=栄養摂取がどのくらい大切なのか、どんなものをどのタイミングでどのくらい摂取したらいいのかと、分からないことが多いのが実際のところだ。

 

 そこで、この夏、必死に汗を流している多くの部活生たちに必要な栄養情報を、メジャーリーグで大活躍を見せている大谷翔平選手をはじめ、多くのトップアスリートの栄養サポートを行っている管理栄養士の大前恵(株式会社 明治)さんにうかがった。大前さんは、最近ではバスケットボールの河村勇輝(東海大)選手の栄養サポートも担当しており、アスリートの生の声を知るエキスパートだ。

 

多くのトップアスリートの栄養サポートを行っている大前恵さん (株) 明治 

 

Vol.2 「正しい水分補給」

 

 

──夏場、熱中症にかかる方も多くなってきています。アスリートにとっては、なおさら水分補給の重要性は増すと思いますが、実際、どのような影響があるのでしょうか。

 

 「脱水症状になると痙攣を起こしてしまったりしますが、そこまでいかなくとも、カラダの中の水分が不足すると、まず体温が上昇するということを覚えておきましょう。水分補給が追い付かず、発汗がうまくいかなくなることで、体温が上昇し、インフルエンザにかかって高熱が出ているような状態になり得ます。そんな時にバスケットボールをしましょうといっても、なかなか大変ですよね。ですから、体温を正常に保つために、しっかりと水分を補給する必要があるのです。

 

 また、夏場のように汗がどんどん出ていくような場合では、水ばかり補給していくと、カラダの中のミネラル量が薄まってしまい、足がつりやすくなると言われているので、スポーツドリンクなどで、同時にミネラルを補給する必要もあります。バスケットボールなども汗を多くかくスポーツなので、こまめな水分補給とともに、発汗量が多い時にはスポーツドリンクなどで、ミネラルを補給することを意識したいですね」

 

 

──のどが渇いたと感じる前に、こまめに水分補給をといったことが言われていますが、試合などでは、自分の望むタイミングで水分補給が出来ないことも多いですが、どのように対応していけばいいでしょうか。

 

 「まずは試合の30分前までに500mlの水分を補給して、カラダの準備をしておくことが大切です。実際の試合では、自分の思うタイミングで水分を補給することは難しいので、脱水を遅らせるために必要な準備です。あとはタイムアウトなどのタイミングで補給していくのですが、一度に吸収できるのは250mlくらいなので、それ以上は飲まないようにし、タイミングを見計らって、250mlまでと決め、できるだけこまめに飲むのがいいでしょう。

 

 試合前と試合後に体重を測り、減少していれば、水分補給が足りていないということになるので、減少の幅をできるだけ小さくすることが必要です。そのためには水分をどの程度、どんなタイミングで飲めば足りているのかを日ごろの練習時に、練習前と練習後の体重測定を行い、自分自身で把握しておくことが大切です」

 

 

 

──食事と同じで水分補給についても、練習、準備が必要なのですね。

 

 「そうですね。コートの上に立っていても、ベストのパフォーマンスが発揮できなければ意味がありませんからね。よく、試合の後や練習の後に、1.5ℓ、2ℓのペットボトルを一気飲みしているようなシーンを見かけますが、これは水分補給に失敗している悪い例です。こうした飲み方はすぐに全てを吸収することができず胃がガポガポになってしまうだけで、その後の食事にも影響します。夏休み中は練習が続くでしょうし、大会期間なら、勝てば翌日に試合があることもあります。水分補給を失敗し、食事も摂れなくなってしまうと、カラダに栄養を蓄えることもできなくなり、動けば動くほどダメージを受けるという悪循環になってしまいます。

 

 また、水分が足りない状況になると体温が上昇すると話しましたが、いわゆる夏場の食欲不振も、体温上昇に起因することが多いです。高熱が出たときなど、食事どころではないですよね。これが続けば夏バテにつながってしまうので、スポーツをしているときだけではなく、日常からしっかりと水分補給をして、体温を正常に保つこと。そして普段どおりの食事で、必要な栄養を摂取し、良いコンディションを保つことを心掛けたいですね。私のサポート経験の中に、例年夏場に体重を減らして成績を落としていたプロ野球選手やJリーガーが、水分補給をしっかりすることによって体重をキープすることができ、良いパフォーマンスを発揮できたという例があります。ですから、部活生の皆さんも、日常から水分補給を意識し、良いコンディションで夏を乗り切ってほしいですね」

 

──良いコンディションで練習に臨むことで、上達にもつながりますね。自分の状態を把握するには、体重を測定することが望ましいですね。

 

 「特に夏場は水分をしっかりと補給し、しっかりと食事で栄養を摂取すること。そして自分のカラダの状態を知ることが大切ですね。体重を測るのはその第一歩となるので、チームとして練習前後に計測し、記録していくといいでしょう。それができなくても、自宅で、練習に行く前と、帰ってきてから計測することもできると思いますし、朝、歯磨きをする前など、毎日同じ時間に、同じ条件で測定を続けることも大切です。特に季節の変わり目は、体調の変化が起きやすいので、注意したいですね。体重が減っている時には、何かが足りていないことになります。成長期の部活生にとって、体重を落とすことはコンディションの面でもカラダづくりの面でも何より避けたいことです」

 

資料・写真提供:株式会社 明治

 

\バスケ×食事/ 

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https://www.basketball-zine.com/savas/

 

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