月刊バスケットボール5月号

ディフェンスに活路を見いだし結果を残した萩原来夢(岐阜女)、相手エースを完封し4強入りに貢献!【インターハイ2021】

 強いチームには必ず優れたロールプレーヤーがいるものだ。主役を引き立て、チームの土台を底上げするそうした選手の存在が、勝利に結び付く。

 

 準々決勝で開志国際と対戦した岐阜女の#9萩原来夢は、それを象徴するようなパフォーマンスを見せ勝利(56-40)に大きく貢献した。この試合、岐阜女にとってポイントとなったことの一つが、開志国際のエース#4堂脇さちへの対応。そのマッチアップを任されたのが#9萩原だった。

 

 試合開始から#4堂脇に対してフェイスガードでぴたりとマークし、ボールすら満足に持たせない好守を披露。エースが思うようにオフェンスに絡めない開志国際は、「相手の4番(堂脇)は得点能力が高くて彼女をどう止めるかが勝負の中で欠かせない部分で、チームとして彼女に点を取らせないのがうちのプランだった」という安江満夫コーチの思惑通り、なかなかリズムに乗ることができず。逆に自分たちは#8アググア・チカ・チュクウのインサイドの得点をベースに、1Qの開始4分間で10-0のランを作り上げた。

 

#4堂脇(右)への守りは見事だった

 

 それでも、「前半はタフショットでも決めにいこうと思っていた」という#4堂脇も#9萩原の密着マークをかい潜って、少ないチャンスを得点に結びつけ、前半で9得点を記録。

 

 ただ、その内容は#4堂脇にとって決して気持ちの良いものではなかったはずだ。「4番(堂脇)が相手の得点源で、そこを止めれば相手のやりたいプレーを止めて自分たちの流れになると思ったので、絶対にやらせないようにという意識でやりました」と#9萩原。打たれたショットの多くはタフショットであり、仮に打たれるにしても最後までチェックにいくなど、できうる最大限のディフェンスを徹底し自らの役割を淡々とこなした。

 

 筆者にはその姿がバスケ漫画『スラムダンク』の湘北vs.山王工業戦で三井寿に密着マークした一之倉聡に重なって見えた。

 

 

「自分にできることは大事な場面で体を張って、誰よりもディフェンスやルーズなどを頑張れることだと思っています。得点にはつながらないけど、そこを絶対に誰にも負けないようにやってきました」と#9萩原。

 

 そんな#9萩原だが、スタメン入りしたのは今大会からで、当時2年生だった昨年のウインターカップではメンバー入りすらできていなかった。激しいチーム内の競走を勝ち抜くためにはどうすればいいのか…その答えがディフェンスだったのだ。

 

「もともとディフェンスはそんなに得意ではなかったです。でも、自分がすべきことが何かを考えたときにディフェンスしかなかった」と#9萩原。チャンスを勝ち取るために「ディフェンスのメニューのときにただやるだけじゃなくて、『この選手はこれが得意だからこう守ろう』とか、『絶対にこの人にはやらせたくない、この人には負けたくない』という思いでやってきました」と、日々の練習からディフェンスに対する意識を徹底して取り組んできた成果が、大舞台で表れた。

 

 最終的にこの試合では出場したほとんどの時間で#4堂脇にマッチアップし、後半は僅か2得点(計11得点)に抑え込んだ。もちろん、チームメイトのカバーあってこそのものではあったが、彼女がマンツーマンで#4堂脇をマークできていなかったら、試合展開は大きく変わっていただろう。

 

 約29分間の出場で2得点、3リバウンドとスタッツ上でその活躍が目立つことはない。それでも、この試合で誰よりもインパクトを与えたのは#9萩原だったのかもしれない。

 

写真/松村健人

文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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