月刊バスケットボール6月号

中部大第一、我慢比べのロースコアゲームを制し初の日本一!【インターハイ2021】

 54チームが出場権を得て始まったインターハイ男子の部は本日が決勝戦、大会最終日を迎えた。勝ち上がったのは愛知県代表の中部大第一と開催地・新潟県代表の帝京長岡だ。

 

 中部大第一は初戦(2回戦)から日体大柏(107-52)、開志国際(88-76)、北陸学院(92-58)、福岡大附大濠(83-69)を破り2018年以来、3年ぶりにファイナルの切符をつかんだ。エースの#7田中流嘉洲、#5福田健人を起点にアウトサイドから得点を量産する#14坂本康成、208cmの大黒柱#8アブドゥレイ・トラオレをスピードある頭脳派ガードの#11下山瑛司が率いるスタメンは、SGからCまでの4選手の平均身長が198cmという驚異的な高さを誇る。

 

 対する帝京長岡はこちらも2回戦からの登場で富田(86-68)、柳ヶ浦(80-64)、前橋育英(100-55)、仙台大明成(75-73)と強敵を次々に撃破し、夏冬通じて初めての決勝進出となった。泥臭い仕事もいとわず献身的にチームを支える#14コネ・ボウゴウジィ・デット・ハマードが守護神として君臨し、下級生の頃から主力として活躍するスコアラーの#7島倉欧佑と#5古川晟、地元・長岡市出身のキャプテン#4田中空、チームをまとめる司令塔の#8箕輪武蔵という5人に、小柄ながら準決勝で決勝弾を沈めた#11大月舜らがベンチから勢いをもたらす(決勝戦は#11大月がスタメン出場)。

 

 紆余曲折の末に勝ち上がった両者は、どちらが勝っても全国初優勝という中でティップオフを迎えた。

 

 先制点は帝京長岡。#14コネがインサイドでファウルを獲得し、フリースローを冷静に2本沈める。対する中部大第一は、前日の大濠戦でも好調だった#14坂本が3Pでファーストポイントを獲得。中部大第一は新チームになってから取り組んできたゾーンディフェンスとマンツーマンディフェンスを併用し、帝京長岡の得点を封じれば、帝京長岡もインサイドでは#14コネがゴール下のアンカーとなり、アウトサイドではほかの4選手がサイズの差を感じさせない“攻めのディフェンス”で中部大第一のオフェンスをシャットアウト。

 

#14坂本は3P6本の成功でゲームハイの18得点

 

#7島倉はこれまで同様にアグレッシブに攻めたが、チームとしては最後までシュートタッチをつかめなかった

 

 決勝戦らしいディフェンシブなゲームは1Qを終えた時点で15-12と中部大第一が僅かなリードを奪った。初得点を挙げた#14坂本はこのクォーターだけで3P3本をヒットする好調ぶり。帝京長岡も明成戦で23得点を挙げた#7島倉の長距離砲や#8箕輪のペイントアタックで応戦していった。

 

 2Qはさらに重苦しい展開に。帝京長岡が4点のリード(19-23)を奪った残り3分41秒以降、両チームの得点がパタリと止まる。中部大第一は緊張からかプレーが硬くなり、これまで決め切れていた#7田中のインサイドもリングを捉えることができず。帝京長岡としてもアウトサイドがことごとく外れ、中部大第一の不調に付き合う形に。クォーター終盤に#5福田の3Pなどで再逆転した中部大第一が前半を24-23で折り返した。

 

 迎えた後半、流れをつかんだのは中部大第一。前半のチグハグぶりが嘘のように#7田中、#8トラオレがインサイドでイニシアチブを取り、好調の#14坂本も帝京長岡にとっては最悪のタイミングで貴重な3Pをヒット。33-23としたところで帝京長岡にタイムアウトを取らせた。僅か2分の間に9-0のランを展開した中部大第一にとっては、ここで築いたリードは本当に意味のあるものだったのだ。

 

 中部大第一の常田健コーチは準決勝までの試合中に「内容にこだわれ」という言葉を幾度となく口にしていた。この時間帯は得意のトランジションこそなかなか出なかったものの、チーム全体が連動し内容的にも及第点のものだったはずだ。

 

終始安定した貢献をもたらした#5福田

 

地元開催の期待も背負って戦った帝京長岡の選手たち

 

 対する帝京長岡にとっては、前半で互角以上の健闘を見せたリバウンド(前半で33対24)やディフェンスの面で足が止まってしまったこと、そして最後までシュートタッチが戻らなかったのが痛かった。「中部大第一さんの良さを少し抑えられたかなと思います。ただ、3Qの入りのところで足が動かなかった。4Qでまた取り戻して、いけるかなという手応えも感じたのですが、そこでちょっとミスだったり、シュートがこなかったり。終始『どこかで1本入ったらな』というところが入りませんでした」と柴田勲コーチ。

 

 結局、3Qのスコアの差が最後まで尾を引き最終スコアは54-37。中部大第一が我慢比べとなったロースコアゲームを制した。中部大第一にとっては3度目の決勝戦で初めての勝利。前日の準決勝後に常田コーチは「決勝戦で僕は(チームを)勝たせたことがないし、勝たせられる方法も分かりません。そういう中で自分たちができることを精一杯やるしかないんです。相手が強いのは当たり前なので、我慢して自分たちのバスケットを出せるかだけ」と口にしていたが、この決勝戦はまさにこの言葉どおりの展開に。

 

 昨年はウインターカップ1回戦で北陸に敗れ、一度しかユニフォームに袖を通さずに1年を終えてしまった。その悔しさがチームに大きな力を与えたことは間違いない。それだけに、この優勝はチームにとって本当に価値あるものだったはずだ。

 

 一方の帝京長岡にとっても、2019年のウインターカップ以来の全国大会、それも地元・新潟県での開催で初めての決勝戦にたどり着けたことは大きな意味を持つ。

 

 互いのプライドが激突した今大会の決勝戦は、高校バスケ史にまた新たな1ページを記したのだ。トーナメントの勝ち上がりはこちら

 

 

写真/石塚康隆

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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