月刊バスケットボール5月号

壮絶なクロスゲームは帝京長岡に軍配!中部大第一との決勝戦はどちらが勝っても初優勝【インターハイ2021】

 王者・仙台大明成に帝京長岡が挑んだ準決勝は、壮絶なクロスゲームとなった。

 

 序盤から一進一退の攻防が続き、帝京長岡#7島倉欧佑が3Pを射抜けば、明成#8山﨑一渉も3Pでお返し。明成はサイズを生かしたトランジションゲームに持ち込みたいが、帝京長岡も激しくプレッシャーをかけ、インサイドには#14コネ・ボウゴウジィ・デット・ハマードが守護神として君臨。互いの長所を出し合っては潰し、潰しては凌駕しというつば競り合いが展開された。それでも、試合のリズムは明成にあったと言える。

 

23得点、10リバウンドを挙げた#8山﨑だったが、試合後には自責の念から涙も

 

 サイズの利を生かしてディフェンスリバウンドを確実に抑え、少ないチャンスの中で#10菅野ブルースらがイージーバスケットを演出。#6内藤晴樹も効果的なミッドレンジジャンパーを沈め、1Qは明成が2点のリードとした。

 

 2Qも#10菅野が3Pで得点を伸ばすと#6内藤や#8山﨑も続く。それでも帝京長岡も明成の背中を捉えて離さない。#14コネが苦しい時間帯に懸命なインサイドアタックで試合をつなぎ、#7島倉も相手の流れを断ち切る3Pを要所で沈めた。また、ベンチから登場した#11大月舜も果敢なペイントアタックで明成ディフェンスをこじ開け、その結果、#14コネやアウトサイドのプレーヤーがチャンスを得た。

 

効果的なシュートを何度も決めた#6内藤

 

 試合展開に変化が見られたのは3Q中盤。帝京長岡が逆転に成功し、51-46となったところで明成がタイムアウト。ここからウインターカップを制したゾーンディフェンスに切り替えた明成が帝京長岡のオフェンスをシャットアウト。好守から走り、その後の約5分間で13-7とリズムを掴んだ。このまま、流れは明成…。

 

 会場の雰囲気がそうなりかけたタイミングで飛び出したのが#7島倉の3Pだった。この一本で1点差に押し戻すと、再びゲームは一進一退に時間帯に。4Qでも常に1ポゼッション差を争う展開は明成が僅かにリードを保持したまま最終盤を迎えた。

 

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 明成のディフェンスに対して果敢にペイントアタックをしていた帝京長岡だったが、最後に試合を分けたのは#11大月の3Pだ。「ドライブが何回も失敗していて中が狭いと思ったので、外から打とうと思いました。思い切り、入ると信じて打ちました」と、ゾーンの縫い目に生まれた一瞬の隙を突いてトップから放った3Pは、綺麗な放物線を描いてリングに吸い込まれた。残り17.7秒で帝京長岡が1点リード。

 

勝敗を大きく左右するビッグショットを沈めた#11大月

 

 後がない明成は昨年のウインターカップでも決勝弾を沈めた#8山﨑にボールを託すが、左45度からのミドルジャンパーはリングを捉えることができず。最終スコア75-73で地元・新潟県代表の帝京長岡が初の準決勝突破、優勝へ王手をかけた。

 

 柴田勲コーチが準々決勝後に語っていた「何しろ明日はリバウンドのところが勝負」という部分に関しては明成の53本(OR20本)に対して帝京長岡は45本(OR14本)と食らい付き、特に#14コネが泥臭くもぎ取った21のリバウンド(OR7本)、そして最後まで気迫を見せた日本人選手たちのハッスルが勝利を手繰り寄せたと言えるだろう。

 

力強くチームをけん引した#7島倉は3P4本を含む23得点と大活躍だった

 

 帝京長岡にとっては夏冬合わせて5度目の挑戦で“準決勝を越えられないジンクス”を破ったことになる。#7島倉は「帝京長岡は『公式戦でどんどん成長していくチーム』と言われていて、一戦一戦試合を戦うごとにチームの士気も高まってまとまってきたなと思っています」と語る。

 

 新潟県生まれ、鳥屋野中出身の彼にとってはまさに地元での決勝戦。「地元開催というので期待とかも大きいと思うんですけど、緊張することがなくて、逆に相手にぶつかっていく気持ちワクワクする気持ちの方が大きいです。今日と同じようにチームを引っ張って優勝に貢献したい」と笑顔で答えてくれた。

 

 明日の対戦カードは中部大第一と帝京長岡。中部大第一にとっては3度目の全国決勝で、帝京長岡にとっては悲願の、初の決勝戦となる。勝てばともに全国初優勝だ。

 

写真/石塚康隆

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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