月刊バスケットボール5月号

谷口律(桐光学園)、エースの意地が生んだ逆転劇【インターハイ2021】

 桐光学園にとっては悲願の全国出場となった今年のインターハイ。昨年の夏は大会自体が行われず、冬はコロナの影響で出場辞退と悔しい思いをしてきたからだ。特に今年の3年生にとっては今大会が高校入学以来初の全国大会とあって、懸ける思いは強い。

 

 初戦で大商学園を下して迎えた2回戦。桐光学園は北海道代表の白樺学園と対戦した。この試合では白樺学園のシュートが好調で、前半で20点近いリードを許す苦しい戦い。桐光学園は持ち味の速攻がなかなか出ず、シュートタッチもイマイチと相手のリズムに飲み込まれかけていた。

 

「出だしは自分たちの堅守速攻というカラーが出せずに、3年生の自覚が足りませんでした。昨年はインターハイが中止で、ウインターカップも辞退という形になってしまって…。それなのに、いろいろな人に支えられているという感謝の気持ちが足りませんでした」とエースガードの#5谷口律は前半の戦いを振り返る。

 

 ここで負けるわけにはいかない。そう強く念じた谷口がここから驚異的なパフォーマンスを見せる。タフなミドルジャンパーを皮切りに持ち味の鋭いドライブからのレイアップ、味方を生かす絶妙なアシスト、前半終了間際にはブザービーターとなるフローターを沈めて12点まで差を詰めることに成功したのだ。

 

「自分は昨日の試合がすごくひどくて、下級生に助けられてばかりでした。今日の前半もそれと同じ感じだったし相手も好調だったので、『ここで自分がやらないと』と思って2Q終盤からは点を取ることを意識しました」と谷口。

 

 

 エースの意地に触発されたチームは後半になると息を吹き返し、2桁点差を一気に詰め寄った。谷口自身もさらにギアを上げ、8点差に迫るディープスリー、ワンマンレイアップ、1点差の場面では#14島村俊乃介への見事なアシストがアンドワンとなり、ついに逆転に成功した。

 

「後半は特に堅守速攻という部分が出ましたし、それがいつも通りできてきたので勢いに乗れた」(谷口)というように、完全にリズムをつかんだ桐光学園はそこから白樺学園の反撃を許さず。86-74で3回戦にコマを進めた。

 

「この大会には楽しむという気持ちと全国で自分たちが結果を残すことを意識して臨んでいます。それが昨年の先輩たちへの恩返しにもなると思っているので楽しみながらチーム一丸となって戦おうって。昨日は初戦とあって硬くなってしまったけど、今日は『まず楽しむことを忘れずに、いろんな人の思いも背負っているということを忘れずに』と昨日のミーティングでも話しました。」と谷口。

 

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 1回戦終了後には髙橋正幸コーチから喝を入れられたそうだが、この試合に関しては「谷口様様ですよ(笑)」と髙橋コーチも納得のパフォーマンス。スタッツは驚異の38得点、8アシストだった。

 

 それでも本人は「明日に進めたことは大きかったけど、内容は酷かった」と満足していない。桐光学園の全国最高成績はベスト8。「チームを勝たせられるPGになって、ベスト8の壁を乗り越えたいです。まずはチームの目標であるベスト8の壁を破ってベスト4に行くこと。また、PGとしてチームを引っ張ることと、下級生任せにしないで自分でも点をとっていきたいと思います」と谷口。

 

 彼にとっても、チームにとってもこのインターハイは楽しいものだ。「まだまだ大会を楽しみたいです」。そう言い残し、次戦に向けて谷口はコートを後にした。

 

写真/松村健人

取材・文/堀内 涼(月刊バスケットボール)



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