月刊バスケットボール8月号

「やれることを最大限やる」常田健コーチ 昨冬の屈辱を糧にチーム作りを進める中部大第一

 

昨年度のウインターカップ、北陸(福井)に敗れて1回戦敗退となった中部大第一。このときに痛感したのが「最低限の準備しかできなかったこと」と常田健コーチは言う。その反省を受け、今年度はいかにコロナ禍でも最大限の準備をするかがテーマに。新チームが始まってから現在までの取り組み、そして全国大会に懸ける思いについて常田コーチに話を聞いた。

※インタビューは3月27日、4月21日の取材をもとに構成したものです

 

 

「公式戦に飢えている」ことが

新チームの原動力に

 

――昨年のウインターカップは1回戦で北陸(福井)に敗れ、悔しい結果となりました。

 

北陸戦で感じた反省は、“自分たちの準備不足”ということです。あまりスカウティングもできていない中、正直に言えば相手の留学生があそこまでやるとは思っていなかった。もともと外回りのハンドラーの子たちを警戒して守る練習をずっとしてきたので、その計算違いが選手たちを動揺させました。試合の中で修正しようとしたのですが、結局できなくて…。だからこそ今年は、去年の反省を生かしていろいろな手札を持っておこうかなと思っています。自分たちのスタイルを貫くことも大事だけれど、いつ何が起こるか分からない状況ですし、いろいろなメンバーでさまざまな攻防を試していこうかなと。どんな相手が来ても柔軟に対応できるだけの準備をしたいと思っています。新チームになってからは固定して2パターンのチームを作ったり、戦術をいろいろミックスしたりといったことにトライしていますね。

 

――新人戦が中止となり、3月末に開催された京都交歓大会が久しぶりの対外試合となりましたね。

 

うちは日本一、公式戦に飢えているチームかもしれません。去年はインターハイもなくなり、ウインターカップの出場権は東海新人優勝で自動的に与えられたので県予選もありませんでした。そして迎えたウインターカップは1回戦で負けてすぐ終了。つまり今の新2年生たちは、一回しかユニフォームに袖を通さず高校最初のシーズンを終えてしまったんです。ほとんどバスケットの試合をしていない感覚ですよね。そして新チームが始まって『よし、頑張るぞ』と思ったら新人戦が中止に。だから京都交歓大会が、久しぶりにユニフォームを着て強豪校と戦う機会でした。大会中、大盛り上がりだったベンチを見てほかのチームの先生から「なんであんなに元気なの?」と聞かれましたが、そもそも試合ができること自体がうれしいのだと思います。

 

 

――その京都交歓大会では、運動量豊富なバスケットで全勝優勝を果たしました。

 

新チームが始まって以来、特に新人戦の中止が決まってからはハードに足腰を鍛える練習をメインに取り組んできて、あまり組織的な練習はしていません。それは昨年の反省を受けてです。昨年は感染予防のためしばらく練習時間に制限もありましたし、選手たちの免疫力を下げたくなかったので練習の強度をそこまで上げられませんでした。つまり限られた時間で、最低限のチーム作りしかできなかった。それがウインターカップ1回戦敗退という結果を引き起こしたと思います。今年は新人戦の中止が決まった時点で、一度チームをバラして、もう一度基礎からやり直そうと。練習の内容をガラリと変えて、基礎体力の向上や個人のスキルアップための練習を増やしました。去年は感染の不安もあってこういった土台を築く時間があまり取れず、とりあえず何とか試合ができるだけの準備をしただけでしたが、今年は恐れずに一度チームを壊して一からチームを作っていくことにしました。

京都交歓大会では、その成果としてある程度の体力が付いてきたと実感できました。特に決勝前、選手たちに「守るためのゾーンディフェンスではなく、ファストブレイクを出すためのゾーンディフェンスを敷いているんだ」という話をして。それで運動量を多くして、プランどおり走れたかなと思います。まぁうちもケガ人がいますし、本当にチームとしてはまだまだこれから。それは全国のほかのチームも同様だと思うので、春先の結果で満足することはありません。

 

 

――対外試合でしか見えてこない自分たちの課題なども見付かったと思います。

 

それはありますね。結局、コロナ禍を経験して改めて感じたことですが、自分たちの力を測るためにはほかのチームと対戦することがすごく大事なんだなと。コロナの前までは当たり前のようにいろんなチームと対戦して反省して確認して、その繰り返しでチーム力を伸ばすことができました。これは私の指導力不足もあるかもしれませんが、自チームにこもって練習していても、力を伸ばすのはすごく難しいのだと痛感しています。

課題は、細かいことを言えば切りがないくらいあります。特にディフェンス面で今大会はゾーンを主に使いましたが、ゾーンの精度を上げつつマンツーマンも一から鍛えていく必要がある。オフェンス面ではまだまだ一人一人の球離れが悪いので、もっとボールを散らせたいですね。

京都交歓大会では、ダブルヘッダーや2日間の連戦を経験できたことも大きかったと思います。昨年はやはり、感染が不安だったので練習試合でもほとんど連戦させなかったんです。でも、1日目がダメでも2日目は良くなるとか、逆に1日目が良くて2日目がダメになるとか、そういう感覚を経験させることもすごく大事で、タフな連戦の中で一皮むける選手もいます。だから今年は感染状況次第ですが、より練習試合を増やせたらいいなと。去年はとにかく感染しない、感染源にならないことを第一に考えていて、今年ももちろんその姿勢は変わりませんが、その中でも“やれることは最大限やる”ということを意識してやっていきたいです。

コロナでいつ大会がストップするかも分からない状況ですが、感染予防をしっかりした上で、今年は絶対に結果を出そう、最後まで結果にこだわろうと選手たちには伝えています。選手たちも去年の不甲斐ないシーズンから感じるものがあったでしょうし、試合に飢えている彼らの方が僕以上に勝ちたいと思っていると思います。

 

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主体性を持つために重要な

「どうなりたいか」という目的意識

 

――常田コーチはよく選手たちに「主体性」を求めますが、その点について今年のチームはいかがですか?

 

キャプテンの黒川才徳やエースの田中流嘉洲など、今年は上級生の中に声を出して周りを引っ張っていける選手がいるので、練習の雰囲気は悪くないと思います。

僕は毎年のように、入学してくる1年生にこういう話をするんです。『自分が何年後かにどうなりたいか、という目的意識を持って、そこから逆算して今この時期に何をすべきか考えなさい』と。ただ目の前のことをやっているだけでは、所詮やらされている練習になってしまう。やれと言われなければやらないし、主体的には動けません。それに「どうなりたいか」がないと、例えばユニフォームをもらった途端に努力しなくなる選手や、目先の結果が出なかったら努力しなくなる選手がいる。そうではなくて、どんな結果になろうがずっと主体的な努力を続けていけるプレーヤーが最終的には指導者の信頼を勝ち取ると思うんです。どこで満足してしまうのか、それは個人がどれだけ自分の目指すものについて考えているかに関わってくる。そういうことは1年生によく話しますね。

 

 

――今年のチームの強みは何でしょうか?

 

今年はポジションアップのバランスがいいかもしれません。どういうことかと言うと、うちには留学生がいるので、毎年だいたいポジションがストレッチするんです。中学まで5番ポジションだった選手が4番に、4番が3番に、3番が2番に、2番が1番にって。でもそれは口で言うほど簡単なことではなくて、それぞれが自分にできることを増やすようチャレンジする必要がある。中学時代のように大きいからって試合に出られるわけではなくて、必死に努力しなければいけないんです。そういうチャレンジに挫折してしまう年は、なかなか結果を残せません。その点、今年はバランス良くストレッチできているし、使える選手も多いのでチームを2パターン用意できる。サイズのある布陣や、サイズを少し落として機動力のある布陣など、メンバーによってディフェンスもいろいろ併用できると思うので、うまくいけば面白いチームになるのではと思っています。

 

 

――新型コロナウイルスの感染対策について、改めてどのような取り組みをしているのか教えてください。

 

去年は選手たちの免疫力を下げたくないということでハードな練習、追い込む練習を正直そこまでやりませんでした。練習したら休ませて、練習したら休ませて…の繰り返し。コロナにならないように、という感染対策から、消極的な姿勢にならざるを得なかったんです。でも今年は去年の反省を受けて、いかに感染対策をしながら強度の高い練習に取り組めるかだと思っています。

そこでやれることはやろうと、年始から練習で着用を義務付けたのがザムストのマウスカバーです。選手たちも「先生、これだったらやりやすいです」と言うんです。普段の学校生活や寮の中では普通のマスクをしていますが、部活中や練習試合ではザムストのマウスカバーを着けていますね。

このマウスカバーをすれば100%感染を防げるというわけでは決してないけれど、感染対策の意識も高まりますし、飛沫を抑えられるので万が一感染者が出たときの被害も最小限に抑えられるのではないかと。それにもともとコロナの前から、うちはインフルエンザにかかった選手が治って練習に復帰してから、念のため数日間はマスクを着けたまま練習させていました。それを全員で日常にした感じですね。

 

 

――今ではマウスカバーを着けてバスケットをすることが当たり前になったのですね。

 

はい。最初は少し違和感がありましたし、ラントレのときなど選手たちはゼェゼェ言っていましたが(笑)、日に日に慣れていきましたね。練習試合でも必ず着けていますし、公式戦が始まってからも着けたまま戦おうと思っています。逆にないと不安というか、着けることで少し不安が軽減されて、練習も思い切ってハードにできるようになりました。

練習試合をするいろんなチームからも、「なんですか、そのマスクは」と聞かれます。そういうときには必ず勧めていますね。自分たちも相手もお互いに着ければ、感染リスクをより抑えられると思いますから。

 

 

 

――これからインターハイ予選、東海大会、インターハイと続きます。最後に意気込みをお願いします。

 

日本一という結果にはこだわるのですが、ここ2年間、うちは全国で満足のいく結果を残していないので、インターハイは本当にチャレンジャーとして挑みたいと思います。真の強豪校というのは、毎年最低でもベスト8に入ってメインコートの雰囲気を味わい、それを伝統として翌年につなげていくものです。でもうちは準優勝したのが3年前で、今いる選手たちはメインコートの雰囲気を知らない子たち。ベンチであの雰囲気を味わうのと、テレビで試合を見るのとでは全然違いますから、そこの伝統が途切れてしまったのはうちにとってすごくマイナス要素です。雰囲気も知らない初の全国のメインコートで、いつもどおりのプレーなんて簡単にはできないと思います。そこも加味して、全国初出場くらいの気持ちで、不測の事態が起きても対応できるようにいろいろ準備していきたいです。

 

 

 

\Player’s voice/

「実際にザムスト マウスカバーを使用している選手に、使用した感想を聞いてみました!」

 

 

1月に先生から着けるように言われたときは、ラントレの多い時期だったので「まじか」と驚きましたが、実際使ってみたら案外平気で、今では着けるのが当たり前になりました。外したのは京都遠征のときだけで、それ以外の練習や練習試合では外したことがないですね。耳も痛くならないし、普通のマスクより通気性が良くて息がしやすくて、声も通りやすいと思います。

 

 

自分がケガで練習に参加できない時期にマウスカバーを着けることになって、みんなが着けながら走っているのを見て「キツそうだなぁ」と思ったのですが、自分が復帰していざ着けてみたらそこまで違和感なく大丈夫でした。普通のマスクより全然呼吸はしやすいですし、口のところに空間があってあまり顔に当たらないのもいいと思います。

 

 

ほかのみんなはどうか分かりませんが、僕は結構鼻が高いのもあって全然ずれ落ちてきません。ランメニューなどのきつい練習時でも呼吸もしやすくて全然気になりませんね。これを着けることによって、感染予防の意識も高まったと思います。黒色もシンプルでかっこいいので気に入っています。

 

 

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・ザムスト マウスカバー ブラック2枚入り

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