月刊バスケットボール5月号

苦境に立ち向かう大阪薫英女学院の安藤香織コーチ 「当たり前の大事さをしっかりと感じて、できる最大限の準備をする」

 

新型コロナウイルス感染症はいまだ終息の目処が立たず、人々の生活に大きな影響を与えている。高校バスケ界でもその影響は大きく、大阪府では府の新人大会が途中で打ち切りとなった。そんな苦しい状況で日々、試行錯誤を重ねながら日本一を目指す大阪薫英女学院の安藤香織コーチに話を聞いた。

※取材は2度目の緊急事態宣言明けの4月14日に実施

 

新キャプテンも含め

イチから作り上げている今シーズン

 

ーー新型コロナウイルスの影響で昨年、今年と普段とは違った日常が続いていますが、チームの状況や現時点での手応えはいかがでしょうか?

 

昨年もそうだったのですが、新人戦をやってないので、自分たちが今、どの位置にいるのかは正直分かりません。春休み中にようやく緊急事態宣言が明けて、練習ゲームを少しし始めていました。4月上旬に岐阜女さんや倉敷翠松さんと練習ゲームをしましたが、それもひとクォーター8分でのゲームなので本当のところがどうなのかなって。

 

ーー今年のチームスタイルは、昨年に近いディフェンスからトランジションを出していくスピーディーなものになりそうですか?

 

そうですね。ウチは留学生もいないですし、佐藤(双羽/3年生)ともう1人のスタメンのインサイドの子も昨年の木下(風奏/大阪人間科学大/175cm)と同じくらいの身長です。それに安田(茉耶/園田学園女大)のポジションには160cm強くらいの子が入っているので、昨年よりもちょっと小さくなったくらいです。でも、相変わらず外回りの選手が速くて、センターはオーソドックスに、みんなで協力しながら戦っていくと思います。ディフェンス面ではハーフコートに入ってしまうと高さでやられてしまうので、少しでも前からプレッシャーをかけてボールをもらわせるのに労力をかけさせながら、ハーフコートでは5人全員でしっかりと守ることがテーマになってきます。

 

ーー近年は、男女共に留学生がいるチームが全国上位を占めている中で、日本人選手だけで戦うことへのこだわりはありますか?

 

私はそれも良さだと思っているので、日本人だけで頑張って日本一になりたいなって思っているんですよね。高さがあるチームに対しては、ペイントでの得点やリバウンドの面では支配されてしまいます。だからこそ、高さのあるチームと対戦するときはアウトサイドからの得点力が重要になります。昨年のウインターカップでも外が1本、2本入っていれば流れは変わったかもしれません。実際に、うちと同じくサイズの大きくない東京成徳大さんはかなり外の確率が高かったです。今年は選手たちには『外の3点と中の3点(2点+バスケットカウントの1スロー)』と言っています。やられたらやり返す得点力というのを新チームが始まって以降、意識して言うようにしていますね。

 

 

 

ーーアウトサイドの確率アップというのは昨年から引き続き課題なのですね。

 

そうですね。シュートをたくさん打てるように取り組んではいるのですが、どうしても緊急事態宣言発令中は練習時間に制限かかっていたので、たくさんシュートを打つこともなかなかできませんでした。そんな状況だからこそ、もう一度、下半身を作ることを意識していました。(コロナの影響で)大阪府の新人戦が途中で打ち切られてしまいました。(ウインターカップが終わってから)試合に向けて急いでチーム作っていたのですが、それがパッと目の前からなくなってしまったんですよ。大阪府で優勝して、近畿新人で優勝してっていうのを目標にやってきた中での大会の中断だったので、じゃあ何をしようかと考え直したときに、下半身、お尻をしっかり作りたいなって。というのも、大阪の医科学委員会のメディカルチェックを受けたときに選手一人一人の足形を取ったのですが、足の指の形がはっきりと出ない、つまり足の指全てに体重を乗せられていない子が結構多かったんです。

 

だから大会が中断してからは戦術面よりもしっかりとした体作りを優先してトレーニングをこなしていました。そういうときってよく砂浜トレーニングなどをするじゃないですか? でも、冬の寒い時期に砂浜なんて行かれへんし、ドロドロになって帰ってきたら寮も汚れるし、親御さんも大変…。そう思って体育の授業で使う体操用のマットにラダーやミニハードルを置いて、靴下でやるメニューを組んだんです。そうすると靴を履いているよりは足の指を使うので、下半身を作るようなトレーニングができるのかなって。そういった地味なところが最終的には大事になってくるんじゃないかなと思っています。

そんなこんなで緊急事態宣言が明けた3月以降、新入生も合流してようやくチームの戦術的な部分に着手することができたんです。でも、ゲームをする度に課題が出ての繰り返しなので、インターハイ予選に向けてまだまだやらないといけないことがいっぱいありますね…。

 

試合経験が少ない分

全員にリーダーとしての自覚を!

 

ーー具体的な課題を挙げるとすると、どんなところでしょうか?

 

コンビネーションの部分は大きな課題ですし、都野や宮城(楽子/3年生)などは点も取れるのですが、今年から新たにスタメンに加わった2年生2人は経験がないので、初めて試合に出ているみたいな感じです。昨年は全くゲームができない状況で、ようやくウインターカップ予選で試合ができましたが、本戦も含めて『最後は3年生に』っていうのがあったので、彼女たち2人にとってはほとんど中学生ぶりの公式戦ですから。チームとしても『そうか、これもできないんだ』っていう感じで試合をやればやるほど課題が出てきますし、ゲームの流れを読んだり、点差がどれくらいだからこういうプレーをしないといけないとか、そういうことも分かっていないので、まずは10分間しっかり戦って徹底してビデオ見て、「これがあかん、あれがあかん」って言いながら修正して、また次のゲームに臨む。そんな感じです。

 

ーーとにかく試合経験を積み重ねていくことが重要になってくるわけですね。

 

そうですね。ゲームに勝ったり、プレーが成功すれば自信になるし、逆にゲームに負けたり、失敗すれば悔しさや課題も出てくるので。どうしても練習だとそういう経験はできないので、だからこそとなりのコートで大学生が練習していて、ゲームをやってくれるのがありがたいです。毎回悔しい思いをしているだろうし、逆にちょっとでもやれればそれも自信になります。そういう意味ではウチは恵まれていると思います。

 

ーー以前、「キャプテンのカラーがチームのカラーになることが多い」と話していましたが、今年はいかがでしょうか?

 

まあ、今年は都野の後ろに3年生がちゃんと控えているので、都野のカラーを踏まえた上での3年生のカラーって感じです。宮城をキャプテンにしようかとも考えたのですが、彼女はどちらかというと一生懸命努力するタイプで、ちょっと不器用ではあるけど、やり続けるみたいな感じの子です。彼女も佐藤も言葉数が多いわけではないので、ある意味で一歩引いた方が生きるかなと思ったんです。無理にキャプテンとして育てるよりは、プレーだけに専念してほしいなって。逆に都野はポイントガードだけどバーっと言えるタイプではないので、キャプテンとしての仕事を下級生からやらせた方がいいかなと思いました。実際、キャプテンになってからは周囲に言うようになったし、責任感も出てきたと思います。

 

 

 

試合がなくなったのでパワーポイントを使ってリーダー論についての講義を、1回2時間半くらいで3週にわたってやったんですよ。リーダーが何を志さなければいけないのかとか、リーダーの資質とはどんなものなのかとか。でも、都野は昨年の安田や一昨年の森岡(奈菜未/筑波大)ほどのリーダーシップがあるわけではないので、今年はみんなが何かしらのリーダーなんです。

 

新型コロナウイルスと向き合うべく

新たな対策も導入

 

ーーコロナ禍で感染対策もしつつ、新たな試みをいくつも行なっているのですね。

 

そうですね。このザムストのマウスカバーもその一つです。感染対策をしなければいけないけど、バスケットってどうしても大きい声を出さないといけないスポーツですよね。寮生も多いのでコロナだけでなく、冬はインフルエンザもありますし、実際にインフルエンザがはやってしまった年もありました。そういうこともあって、思い切って声を出すために飛沫防止ができるのは魅力だと感じましたし、感染確率をゼロにはできないにしても選手としては少し安心感があるじゃないですか。コロナ禍で練習をやらせてもらっているので感染対策の意識をしっかりと持って、防げる可能性のあるものは少しでも防ぐことが重要です。練習後の手洗いや消毒なんかはウチはめちゃくちゃしています。ウインターカップのときも交代して選手がベンチから出ていくとき、戻ってきたときに必ずアルコール除菌をしていましたし、普段の寮生活でも全員トイレのドアノブ拭いたり、食事も何グループかに分けて、一緒に食べないとか、ずっと消毒しているんですよ。ザムストのマウスカバーもその一貫です。

 昨年は普通のスポーツマスクをしていたのですが、結構苦しいし夏になれば熱中症も心配になってきますが、対外試合や大会となるといろいろなところからチームが集まってくるので、ずっと外しているのもちょっと…。そんなときにこのマウスカバーを紹介してもらって『これなら通気性も良いから着けたままでも大丈夫そうだね』って。だからウインターカップではウチの選手はアップ中にもマスクを着けたままでした。それに今年の新人戦が始まる時期には府内の感染者もかなり増えていたので、これ着けたまま試合に出たんですよ。少しでも予防効果があれば、予防の意識を持てばという気持ちを込めて。

 

 

 

ーー練習中も極力声を出さないようにしている印象を受けました。

 

2回目の緊急事態宣言中は、小さな指示の声は出すにしてもみんなで数を数えることなどはせず、基本的に練習はノーボイスです。今はゲームのときは外して練習のときは着けたままなのですが、熱中症や脱水症状になるのも怖いので、しんどかったら外していいよって言いながらやっています。こまめの水分を取るとか、トレーニングや軽めの練習のときは着けるけど、ハードな練習のときは外すとか。そういった工夫をしながら練習をしていますね。

 

 

ーー安藤コーチ自身はマウスカバーを着けたままで、問題なく指示などはできるのでしょうか?

 

 通りますね! ウインターカップのときとかは結構マスクを下げちゃっている先生もいたと思うんですけど、私は全然通るので着けたままで問題なかったです。実際、今も声は出しやすいですね。不織布のマスクなんか声を出すと全然それが通らないんですけど、これは全く問題ありません。私は試合に出てプレーをするわけでもないので、そこまで苦しくもありませんし(笑)。あと、ちょっと口元のところに空間があるんですよね。どうしても普通のマスクはピタッとくっついてしゃべりにくいんですけど、空間があるとしゃべりやすい印象もあります。

 

 

ーー1年半前には、こんなにマスクにこだわりを持って生活をする日が来るとは思ってもみませんでしたね。

 

ですね(笑)。でも、先ほど話したインフルエンザが今年は一切出なかったんですよ。毎日、体温を測ってちょっとでも体温が高いってだけでも休ませていたので、学校としても風邪を引いているような子はいませんでした。コロナの予防を徹底したことで単純に体調不良者は減ったなと思いますね。

 

 

『鬼滅の刃』にあやかり

全員が自分の武器を持って戦う

 

ーーバスケットの話に戻りますが、今年のチームで目指す完成形はどのようなものでしょうか?

 

ディフェンス面ではもう少し変化を付けたいと思っています。実は昨年も何個かパターンはあったんですけど、それはシュートを決めることで発動するものでした。相手のディフェンスを崩してノーマークにはなったけど、最後のシュートがことごとく外れてしまったので、用意していたものを使えずに終わってしまいました。シュートを決め切れずに、相手に逆速攻を許して簡単にやられてしまう、リバウンドを取られてやられてしまう。そんな中でディフェンスを変えれば余計に混乱してやられてしまう可能性があったので、結局できずじまいでした。チェンジングなども今年は使えたらなとは思っています。

あとはやはりオフェンスですね。どうしてもウチは相手のセンターに20点、30点とやられてしまうことが多いので、外周りの選手のドライブなども含めて、コートに立っている5人がバランス良く点を取れるように、選手それぞれが自分の武器を作ることを徹底していかなければいけません。大流行している『鬼滅の刃』だとみんな武器を持っているじゃないですか。選手にもそんな話をしたことがあって、「あなたの武器はなんですか?」って。そうしたらある子は「私は戦車のように恐れずに戦います」とか、違う子は「私は槍部隊です。先頭でガンガンつつきます」みたいなことを言っていたんです(笑)。そんな話をしたらみんな結構、面白い武器を言ってくるんですよね。ディフェンスでは弱い部分をみんなで守る、みんなで補い合うことが必要ですが、オフェンスでは苦手なことを無理にしなくてもいいじゃないですか。それよりも各々の得意なところを伸ばしてそれを組み合わせることで、誰が出ても点が取れる。たとえ取られたとしても取り返せるっていうのを、今年は追及したいなと思っています。

 

 

“当たり前が当たり前じゃなくなったからこそ、

当たり前の大事さをしっかりと感じて、できる最大限の準備をする”

 

ーーでは、最後に今年の目標を教えてください。

 

やはり日本一になりたいです。こういう時期だからこそ、できることをコツコツやっていくことが日本一になることにつながります。今年度最初のミーティングで選手たちに話したのはとにかく主体的に、自分たちで考えて取り組むこと。それが日本一につながることだよって。それに、たとえ目標に届かなくても、取り組んできた日々は必ず自分の成長にはつながると思うので、「今年もそれを追求していこう」と。私たちが日本一になれるのは本当にワンチャンスなので、そのチャンスをつかむ準備をし続けることが重要です。

この先もどうなるか分からない状況で、明日クラブ活動が禁止になるかもしれないし、また大会がなくなるかもしれません。コロナによって当たり前が当たり前じゃなくなったからこそ、当たり前の大事さをしっかりと感じて、できる最大限の準備をする。その結果、良い結果が付いてくるかもしれないけど、そうでないかもしれない。でも、そこに向かうための準備を、今できることを、当たり前のことをしっかり大事にしてやること。それだけですね。

 

 

\Player’s voice/

「実際にザムスト マウスカバーを使用している選手に、使用した感想を聞いてみました!」

 

通気性が良くて息がしやすいのと声を出しやすいです。ガードは運動量も多い方だと思うんですけど、このマウスカバーを着けた状態でのプレーも結構早く慣れることができました。付け心地もしっかりとフィットします。

 

 

通気性が良くて声も出しやすくてプレーをするのには最適だと思います。それに汗をかいてもあまり濡れたりはしないので、通気性も速乾性もあるように感じます。肌荒れとかも少し気にするんですけど、肌触りも良くていいなと思います。

 

 

練習で声を出すときに普通のマスクだとこもってしまって何を言っているのか分からないことがありますが、このマウスカバーは声もよく通るので快適です。それと、耳のフックのところが柔らかいので、着けていて違和感が少ないです。

 

商品の詳細についてはこちらをクリック!

・ザムスト マウスカバー ブラック(2枚入り)

・ザムスト マウスカバー ブラック/ライトグレー1枚入り

 

 

 



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