月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2021.03.13

序盤からエナジー全開の川崎ブレイブサンダース、シーホース三河を退け2年連続で天皇杯決勝へ

 川崎ブレイブサンダースとシーホース三河。3月12日の天皇杯ファイナルラウンド準決勝のゲーム2でマッチアップした両クラブは、Bリーグ開幕以前のNBL最後のファイナル(2015-16)でも激闘を繰り広げた名門クラブだ。

 

 川崎はBリーグ開幕から昨季までの4シーズンでリーグ、天皇杯を合わせて決勝に三度進出しているが、いまだにタイトルは取れていない。対する三河も2018年の天皇杯では決勝まで進むも、千葉ジェッツに敗れ優勝を逃している。

 

 Bリーグ誕生以来、最高成績が準優勝にとどまっている両クラブにとって、優勝というのは是が非でも獲得したいものだ。

 

攻防にアグレッシブなプレーを見せた藤井

 

 勝利への意欲がコートでより強く表れたのは川崎だった。「出だしが勝負だと考えていたので、一番エナジーを出して走ってディフェンスをハードに試合に入りました」と藤井祐眞が振り返るように、持ち味である激しいディフェンスを序盤から展開し、オフェンスでは全員でパスをつなぎビッグマンのジョーダン・ヒースが3Pシュートを連発。「出だしは全員で(攻撃の)起点を作る中でジェイ(ヒース)の3Pが1本入ったので、そこからはコートの選手たちがジェイにやらせようとプレーコールをしていたと思います。そこのコントロールも良かった」と佐藤賢次HCが振り返ったように、序盤でチームとしてうまくオフェンスが機能したことで三河が後手に回った。ヒースの3Pが前半で5本もヒットしたことが三河にとって誤算だったのは間違いないが、それ以上にボールを散らし、チームとしてよりオープンなシュートを生み出した川崎のオフェンスに翻弄されてしまったのが痛かった。

 

 鈴木貴美一HCも「みんな上がっていたというか、緊張して硬かったように感じました。ヒースに予定外の3Pを何本もやられてしまいましたが、そこを押さえないといけないローテーションもありました。でも、試合の入りはそれが全部できていませんでした」と、1Qで明暗がくっきりと分かれた。最初の10分で22-11。このスコアの差が後々まで響くこととなる。

 

 2Qを45-30で折り返した川崎は、シュートが外れるにしても良い形で打ち切る場面が多く、三河にカウンターを許さない。反撃の糸口をつかめない三河はエースの金丸晃輔も意気消沈し、前半は僅か2得点にとどまった。「流れをつかめなかったのはボールが止まってしまったからです。これがウチにとっては一番良くないことで、ああなるとなかなか自分たちのリズムでプレーできません。僕はスクリーンを使ってディフェンスをかいくぐっていく選手なので、ボールと人が動かなければ僕がいる意味がなくなってしまうし、シュートも思うように打てません」(金丸)。その結果、選手個人のスキルに頼った淡白なオフェンスが増えてしまったのである。

 

金丸の3Pシュートで流れをつかみかける場面もあった三河だったが…

 

 とはいえ、そこは西地区の2位クラブ。後半にはうまくアジャストし、三河らしいオフェンスが見られる場面も増えた。事実、鈴木HCも金丸も「後半は悪くなかった」という旨の発言をしている。15点差前後で推移していた試合も徐々に風向きが変わり、三河が4Qで一時6点差に迫る。しかし、その後のプレーで川崎・藤井が3Pに対するファウルを獲得。フリースロー3本をきっちりと沈めると直後に三河からボールをスティールし、パブロ・アギラールが加点。4Q残り2分43秒で再び2桁差(73-62)を生み出した。実質、この時点で勝負は決し、最終スコアは79-67。川崎が昨年に続いて決勝進出を果たした。

 

チームとして最後まで戦い抜いた川崎。明日のファイナルでも積み上げてきた全てをぶつける

 

「今日の試合は今までチームで積み重ねてきたものと個人が努力してきたものを、明日のことは考えずに全部出し切ろうということでやりました。(明日の対策については)これから考えたいと思っていますが、まず出だしの攻防です。宇都宮は最初からフルエナジーで来るので、それを跳ね返せるメンタルを作って試合に臨めるかが一つ。宇都宮のフィジカルなディフェンス対して、オフェンス面でどれだけズレを作れるかをチャレンジしていきたい」と佐藤HC。

 

 Bリーグ開幕後では4度目のタイトルマッチとなる川崎。藤井は「Bリーグが始まって一番取りたかったのが天皇杯とリーグ優勝です。僕個人としては(決勝でプレーできるのは)B1初年度のファイナル以来なので、まずは楽しんで優勝を狙って頑張りたいです。あの頃とはファンの数なども違います。川崎のファンもこの5年で増えましたし、ファンと一緒に積み上げてきたものがあります」と優勝に懸ける思いは人一倍だ。

 

 この試合のように入りから宇都宮の強度を上回ることができれば、タイトル獲得の可能性は一気に高まる。ハイエナジーのプレーが持ち味の川崎と宇都宮。どちらが先手を取るかが、勝敗を分けるポイントとなりそうだ。

 

写真/JBA

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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