月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.02.02

エヴェッサを最もよく知る男・橋本拓哉「6thマンで出て流れを変える責任がある」

 

 将来有望な若手選手が多く加入した今季の大阪エヴェッサの中で、ポイントゲッターの一人として活躍するのが26歳の橋本拓哉だ。

 

 今季はここまでの32試合でスターターはわずか6試合ながら、日本人選手としては金丸晃輔(三河)に次ぐリーグ2位タイの平均13.9得点(全体38位)を記録。今季のFG成功率50.2%、3Pシュート成功率44.1%、フリースロー成功率86.8%という平均スタッツはエリートシューターの指標と言われる"50-40-90"に限りなく近い数字だ。

※50-40-90…FG成功率50%、3Pシュート成功率40%、フリースロー成功率90%以上を記録すること

 

 橋本が大阪の選手としてプロデビューを飾ったのは9年前にさかのぼる。中学からバスケットを始めた橋本は、高校2年時に当時bjリーグに所属していた大阪と教育提携する総合学園ヒューマンアカデミーバスケットボールカレッジに入り、その後2012年のドラフトで大阪に指名された。

 

 17歳11か月でのプロデビューはbjリーグ史上最年少記録で、その後、芦屋大への進学を機に一度はクラブを離れるも大学4年次にクラブに復帰し、現在に至る。アマチュア時代からクラブと関わりがあり、橋本にとっては自身を育ててくれたのが大阪で、現在のロスターの中では最もクラブを知る選手であると言っていい。

 

 第19節の千葉ジェッツ戦でも第1戦で16得点、第2戦でも14得点を挙げる安定感を見せ、チームも強豪相手にアウェイで1勝1敗の好勝負を演じた。今季は中村浩陸(23歳)や角野亮伍(24歳)、エリエット・ドンリー(24歳)ら若手有望株が多く加わったため、必然的に橋本も中堅選手としてのリーダーシップが求められることとなった。

 

千葉戦でも積極的に声を出すシーンが見られた

 

 それについて第2戦終了後の記者会見で橋本に尋ねると「歴が長いのはありますが、今年から急に若手がたくさん入ってきて僕が年上になって、クラブの中でも中堅選手になりました。最初は戸惑いましたが、その中で6thマンとして出るという責任感、流れを変えるという責任感が強いです」という答えが返ってきた。

 

 まだ、言葉で引っ張ることはうまくできないのかもしれないが、その分、6thマンとしてプレーで若手が多いチームを引っ張りたい。橋本はそう考えているのだろう。

 

 天日謙作ヘッドコーチに代わって指揮を執る竹野明倫アシスタントコーチ(ヘッドコーチ代行)は、橋本について「チームのために頑張ってくれていて彼自身もまだ若い選手なので、いっぱい勉強するところもあるだろうし、彼なりにそういうところを考えながらプレーしてくれているのですごく助かっています」と信頼を寄せており、続けて「リーダーシップの面でも、特に高原晟也なんかにはいろいろ言ってくれています。ただ、今はまだそれが良いときもあれば悪いときもあります。そこも橋本が勉強しているところだと思うので、彼の中でも『(リーダーとして)やっていかないと』と感じている部分があるのかもしれません」と少しずつ変化の兆しがあることを示唆した。

 

セカンドユニットのエースとして、責任感は強い

 

 橋本にとっての一番の仕事は点を取ることだ。それについては本人も「開幕前から天日さんから『お前はシューターでファーストオプションはシュート』と言われています。そこを徹底して迷わず打つこと、あとはディフェンス、走ること、トランジションで先陣を切ることが僕の役割です」と認めつつ、チームとしての課題でもあるディフェンス力の向上にも意欲を見せた。

 

 こうした幅広いプレーをこなしていくことが若手の指針ともなり、自身のステップアップにもつながっていく。大阪エヴェッサの顔として、もがきながらも少しずつ新たな役割に順応する橋本。さらなる成長が楽しみだ。

 

写真/B.LEAGUE

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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