月刊バスケットボール6月号

Wリーグ

2019.10.25

日本女子バスケの強さを支えるWリーグの存在

 9月29日、バスケットボール女子アジアカップで日本が優勝を遂げた。実に4連覇である。中国、韓国の後塵を拝することが多かったアジアの勢力図の中にあって、2013年以来、頂点に立ち続けている。しかも、2017年の前回大会より、アジアゾーンにはオセアニアが加わり、世界ランク3位のオーストラリアがアジアカップに参戦することになった(因みに日本は10位)。前回大会では、そのオーストラリアを決勝で破り、また、今大会では準決勝で破って優勝を果たしている。さらに10月6日にはFIBA 3×3 U23 ワールドカップ2019において、日本女子代表が優勝を果たした。これは日本バスケットボール界の男女全カテゴリー (5人制 / 3人制、アンダーカテゴリー含め)で初となる世界大会での優勝である。

 近年、力を付けつつある日本女子バスケの強さはどこにあるのだろうか。その一つには日本人としては規格外の193cmの身長で身体能力も高い渡嘉敷来夢の存在が挙げられる。渡嘉敷は現在国内のWリーグで11連覇を果たしているJX-ENEOSサンフラワーズの大黒柱であり、Wリーグがオフになる夏場にはアメリカのプロリーグWNBAでプレーしてきてきたワールドクラスの選手である。また、ジュニア育成が連綿と行われてきていることにより、アンダーカテゴリー時代から、国際大会の経験が豊富な選手が多いことも挙げられるだろう。そして、何より代表選手を輩出するWリーグ所属チームの協力体制も忘れてはならない要因だと思われる。

 この夏、Wリーグ20周年記念誌『Wリーグ20年の軌跡』の編集に携り、多くのWリーグ関係者の話を聞いて改めて感じたのが、Wリーグが、日本代表の強化に寄与することを強く意識しているということである。「海外遠征などチームの強化活動が、日本代表の強化に直結すると考えていましたし、それを会社がサポートしてくれた」と内海知秀氏。内海氏は現在レバンガ北海道(Bリーグ)のヘッドコーチを務めるが、2001年からJX-ENEOS(当時はジャパンエナジー/JOMO)を率い、11年間で8度優勝に導き、11連覇を続けているリーグ女王の礎を築いた。同時に日本代表のヘッドコーチとして2004年、2012年と2度のオリンピックに代表を導いてもいる。

 こうした流れはWリーグとなる前、男子リーグと共に運営してきたJBL時代の1990年代より受け継がれてきている。それまで企業スポーツとして支えられてきた日本スポーツ界から、多くの企業が撤退していったのが90年代。そうしたなかで、生き残るためには何をすべきか。男子の競技はJリーグに象徴するようにプロ化が検討されることが多くなり、これはバスケットボールも同様だった(実際には90年代当時は断念したが)。しかし、興行化がより難しいとされる女子においては、国際的競技力を上げるということが使命となった。すなわちオリンピックに出場することだ。1996年のアトランタ大会において、日本女子バスケはモントリオール大会以来20年間遠ざかっていたオリンピックの出場権を得て、7位の成績を残した。この時の日本代表ヘッドコーチは中川文一氏(現トヨタ紡織ヘッドコーチ)で、当時はシャンソン化粧品を率いてリーグで連覇を果たしていた。ジャパンエナジー(現JX-ENEOS)と二強と呼ばれていた時代であり、シャンソン化粧品とジャパンエナジーの2チームから、ほとんどの代表選手が選ばれていたが、この時代もライバルチームのヘッドコーチが指揮を執る代表チームに、ジャパンエナジーは協力体制を敷いた。以来、「WJBL(Wリーグの運営母体)」と女子リーグに特化した組織として独立してから20年。その原則を貫きながら、その上で企業チームとプロチームとの並存を可能にし、エンターテインメント性を追求してきたのである。

 日本バスケットボール協会がFIBA(国際バスケットボール連盟)から制裁を受けた2013年、川淵三郎氏とインゴ・ヴァイス氏を共同チェアマンとするタスクフォースが日本バスケットボール界の問題解決に当たった際、そのメンバーに名を連ねた萩原美樹子氏(元ジャパンエナジー)はこう振り返る。

「Wリーグには理事として長年関わってきていますが、そうした立場から見ても、決して順風満帆というわけではなく、苦労を重ねながらここまで来たのだと思います。川淵三郎チェアマンも、女子サッカーの状況を理解していましたから、企業に支えられているWリーグのあり方を否定することはなかったと記憶しています。結果的にその方が選手たちの立場を守れるという判断だったと思います」

 選手の立場でも、Wリーグと日本代表の関係を理解している。女子バスケ界を長年引っ張ってきた大神雄子氏(現トヨタ自動車アシスタントコーチ)は、「現在の代表ヘッドコーチのトム・ホーバス氏は、多くのチームから代表候補を選んでいますから、Wリーグで活躍することが、日本代表へつながっています」。現役続行を決めた吉田亜沙美選手(JX-ENEOS)も「日本代表に戻りたいと思い、現役復帰を決めましたが、日本代表に選ばれるためには、チームでしっかりと活躍できるようにならなければなりません」とWリーグでのプレーが、代表につながっていることを理解し、意識している。

 そのWリーグは10月26日、27日の週末に各地で開催するゲームを終えると、1か月の休みに入る。11月には女子代表の国際大会が組まれているからだ。同様に2020年の1月から2月にかけても休止期間を設ける。そうして東京2020に向けて、Wリーグをあげて日本代表への協力体制を敷く。そして、バスケットボール女子日本代表はオリンピックで悲願のメダル獲得に挑んでいく。

※Wリーグ20周年記念誌『Wリーグ20年の軌跡』はWリーグの各会場、およびNBPオンラインショップ(http://shop.nbp.ne.jp/shopbrand/wjbl/)で購入できます。

(月刊バスケットボール)



タグ: WJBL

PICK UP