月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2021.12.05

試行錯誤が続く千葉ジェッツ、“チャンピオンチームのディフェンス”を手に入れるために

 

 千葉ジェッツの魅力といえば、富樫勇樹を起点としたハイスコアでアップテンポなバスケットだ。今季も茨城ロボッツとのゲーム1を終えた時点で平均得点は88.9と、リーグ2位。今日のゲーム2でも大量111得点で勝利を収めた。

 

 しかし、今季は失点の面で課題が見受けられる。

 

 振り返れば、昨季の千葉が100失点以上を記録したのは12月20日の富山グラウジーズ戦(129点)と、5月2日のアルバルク東京戦(109点)のみ。しかも、この2試合は延長を戦っており、4Qのスタッツで見たらどちらも100失点未満だ。それが、今季はここまで2試合の3桁失点を許し、この試合の失点は今季ワーストの103と、ディフェンス面でリズムを掴むことができていない。

 

 試合は開始から佐藤卓磨の2本の3Pシュートやジョシュ・ダンカンのミドルシュートなどでリードし、最大14点の差をつける場面もあった。しかし、そのたびに茨城は平尾充庸のピックプレーを起点に鶴巻啓太やマーク・トラソリーニがリズムよく加点。前半を終えて54-44と、離しては詰め寄られるどこかスッキリとしない展開が続いていた。

 

茨城では福澤が3本、トラソリーニが6本の3Pを射抜いた

 

 後半開始早々、福澤晃平に2本の3Pを含む8連続得点を許し、タイムアウト。結果的にこのタイムアウト明けにラインナップチェンジをして以降、流れを引き戻すことができたが、大野篤史HCは「メンバーチェンジがうまくいったのかは分かりません。ストレートにいかれそうだったので、まずは流れを切りたかったのが選手を代えた一つの理由です。ブレイクも出ていて(オフェンスは)悪くなかったので、もっとディフェンスにフォーカスしなさいと伝えました。リバウンドを取って走りなさい、と。そこだけでした」と振り返る。

 

 ここで流れを引き戻したかと思われたが、茨城が再び詰め寄る。トラソリーニが3本の3Pをヒットすれば、鶴巻も力強いレイアップでアンドワン。2ポゼッション差に迫る場面が何度もあった。

 

苦しい時間帯に見事なパフォーマンスを見せたムーニーは、この試合27得点

 

 千葉もこの日、フィールドゴールノーミス(12/12)のジョン・ムーニーがオフェンスを引っ張るが、ディフェンスでは「オーバーヘルプで簡単にノーマークの3Pを打たれたり、1対1でミドルを抜かれたり、そういう失点が多かった」と大野HCが振り返るように、根本的な解決には至らず。勝ち星を挙げながらも、バイウィーク明けの初陣は課題が残る結果となった。

 

 ただ、これは生みの苦しみでもある。

 

「バイウィーク前に『このディフェンスでは絶対チャンピオンになれない』と選手に伝えました。(日本代表の活動で)原(修太)と(富樫)勇樹がいない間は徹底的にディフェンスのところやってきて、今はそれをチャレンジしてる最中です。うまくいかないことも出てきているけど、自分たちの現状を把握するにはやってみないと分からないので。この苦労を今しなかったら、2週間前のディフェンスとなんら変わらないです。努力に即効性はないので、すぐ結果が出るものではなくて、努力し続けることが大事」(大野HC)と、レギュラーシーズンが終わった先の完成形にフォーカスしている。

 

 試合終盤には茨城・平尾にピックから簡単なレイアップを決められるシーンが何度かあったが、そうしたエラーについてもコーチ、選手間でのコミュニケーションを欠かさない。

 

富樫ら選手の意見も取り入れながら完成形を探っている

 

 試合後には、その場面で平尾にマッチアップしていた富樫が大野HCと長く会話をしているシーンがあった。そこでは「勇樹からもう少しディフェンスのカバーのところで変化を与えてほしいというお願いをされました。ハードショーだったりトラップにいくとか、そういうところの変化がほしかったという話をしていました」というやり取りがあったそうだ。

 

 大野HC自身も選手の声を聞き入れながら、試行錯誤を続けているのだ。

 

 今節で各クラブがシーズンの1/4を消化した。千葉が目指しているのは昨季と同じ場所に再びたどり着くこと。つまりリーグ連覇である。大野HCは言う。「(レギュラーシーズンの)60試合が終わったときに、自分たちのディフェンスのクオリティがどれだけ上がったかは、今からやる努力の結果」

 

 もちろん目先の勝ち星を重ねることが、目標地点へ到達する上での絶対条件となる。ただ、その過程でトライ&エラーを繰り返しながらどれだけチームを成熟させていけるのかが、チャンピオンシップ獲得の最終的なカギを握る。それは彼ら自身が昨季身をもって体感したことのはずだ。

 

“チャンピオンチームのディフェンス”を手に入れるべく、試行錯誤のシーズンは続く。

 

写真/©︎B.LEAGUE

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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