月刊バスケットボール6月号

【ウインターカップ2020】紡がれてゆくライバル関係、洛南の思いも背負い東山がファイナルへ

 

 メインコートで相見えた洛南と東山。京都府内で強烈なライバル関係を築いている両チームの対決が全国大会のメインコートで見られるのは初めてのことだ。

 

 11月の京都府予選で洛南は2018年の近畿大会決勝(68-67)以来、約2年半ぶりに東山の壁を超えた。「府予選の決勝は100%に近い力が出せた」と吉田裕司コーチが振り返る一戦で、宿敵をようやく倒したことで洛南の選手は自信を手に、ウインターカップを迎えるかと思われた。しかし、実際には「予選までは張り詰めた状況で練習に取り組めていました。東山にはここ数年負けているので、(東山に勝つことが)目標でもありましたので。それが終わって少し緊張が途切れたかなって。逆に東山戦が変な区切りになってしまった感じがあった」(吉田コーチ)そうだ。

 

 対して東山は「予選でもっとこうすればと言うものありましたけど、逆に(ウインターカップ前に負けが混んでいる)この状況はウチにとって必要なものだとも思うんです。勝って兜の緒を締めるというよりも、『今お前らにはこれだけ足りないんだ』というのが洛南戦で出ました」と大澤徹也コーチ。周囲から本命と言われる中で、負けが続いたことでより気を引き締めて本戦に向けた調整ができていた。

 

 大会に向けて過ごしてきた過程は違えど、両者は『必ずメインコートで京都対決を』というのを思っていたはずだ。それが実現したことに対して「本当は決勝でやりたかったけど、メインコートで対戦できたことはすごくうれしかったです」と振り返ったのは、洛南#6淺野ケニーだ。

 

懸命なプレーでチームを鼓舞した淺野だが、無念…

 

 この試合、前日の正智深谷戦で足首を負傷したエース#5小川敦也が欠場したことで、キャプテンの#4西村慶太郎、#8大石日向、そして淺野にとっては小川の分も絶対に負けられないという思いがあった。

 

「小川なしでも洛南は強いというのを証明したかったし、これで勝ったら小川を大会ベスト5にすることできました」と淺野。ベンチで見守るエースに勝利を届けるべく、大一番を戦った。

 

 しかし…。

 

 小川を欠く洛南は序盤から東山のウィング陣に得点を献上し、オフェンスでもなかなか点を取ることができなかった。「留学生のいる選手に対しては、それ以上の攻撃力で戦っていなければなりません。でも、今日は小川の縦に割っていくプレーがなかったので、攻撃力が足りなかった。前半で10点差以内くらいだったらって思ったんですけど、小川がいるといないとでは(得点の)計算が成り立たない部分がありました」と、吉田コーチも肩を落とした。

 

米須にとって最初で最後のファイナルがついに始まる

 

 無理をすれば小川は試合に出場できたのかもしれない。しかし、彼は将来のある選手。「ドクターから試合はダメですって言われました。(小川の)親御さんにも確認して、そういうことであればベンチに入れてやってくださいって。もし出して悪化してしまったら…。今の状態なら普通の捻挫なのでまだ治りは早い」と、吉田コーチは苦渋の決断を強いられた。

 

 小川が見守る中、無情にも点差は広がり続け、最大で34点まで拡大。懸命な反撃も虚しく、最終スコア67-87で洛南の冬は終わりを告げた。

 

 勝った東山にとっても小川不在は「複雑な気持ちもありました」と大澤コーチも本音を漏らしていた。府内ではライバルであり、互いに切磋琢磨し合う存在だ。本当はベストメンバーで本気の勝負をしたかったのは洛南だけでなく、東山とて同じだろう。

 

 洛南の思いは東山に引き継がれた。日頃から小川とマッチアップしてきた東山#9中川泰志は「敦也から『頑張れよ』って言われたんです。敦也とはずっとマッチアップしてきて、普段からも話したりして仲も良いです。敦也の、洛南の思いも背負って明日は絶対に勝って日本一になりたいです」と意気込んだ。

 

中川(左)は小川から確かなメッセージを受け取った

 

 淺野も「僕らは府予選で勝って京都1位になったけど、ここで彼ら(東山)に負けたので『お前らが(本当の)京都1位だから頑張ってこい』って米須に伝えました」と、ライバルに思いを託した。

 

 今シーズンの京都対決 最終戦は東山に軍配が上がったが、紡がれてきた府内のライバル対決は今後も続いていく。東山は明日、仙台大明成との決勝戦。勝てば初めての全国制覇だ。

 

写真/JBA

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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