月刊バスケットボール6月号

【ウインターカップ2020】報徳学園、この3年間を未来につなげるために

 

 3年計画。


 #1丸山賢人、#10コンゴロー・デイビッド、#20宇都宮陸の3人が入学した2018年から、報徳学園は彼らが3年生になった今年、全国制覇を成し遂げることに照準を合わせて戦ってきた。

 1年目のウインターカップではいきなりメインコートに立ち、ベスト8。2年目にはインターハイでベスト4に輝き、ウインターカップでも前年と同じベスト8ではあったが、東山に対してもう少しで準決勝に届こうかという接戦を演じた。

 着々と結果を残してきた勝負の3年目。今年は経験値のある3年生に加えて、スーパールーキー#11テーブス流河、堅実なプレーがウリの報徳らしいパワーフォワード#2中野椋太をスターターに起用。

 例年以上の選手層を誇ってウインターカップに乗り込んできた。3回戦までは問題なく勝ち上がった報徳学園は、今日の準々決勝で再び東山と対決。前半、#9ムトンボ・ジャン・ピエールをファウルトラブルで欠く東山に対して、デイビッドを軸にゲームを組み立て、3Q半ばには最大12点のリードを奪った。

インサイドを支配した報徳学園#10デイビッドだが、東山の粘りが上をいった

 

 近畿地区でも負けが続いている東山戦の勝利がようやく見えてきた。が、この直後に悪夢が待っていようとは、誰も思わなかった。

 デイビッドがインサイドを制圧した前半で、東山は#7中川泰志、#4西部秀馬、ピエールに代わってセンターを任された#15矢倉啓輔がふんばり、報徳学園が持っていたはずのアドバンテージを最小限に抑えていた。「前半で15や20点差にされていたら後半ひっくり返すことは難しかったかもしれません。僕としては『この時間帯をどうしのごうか』しか、考えていませんでした」と東山・大澤徹也コーチが振り返ったように、この前半で思いのほかリードを作れなかったことが、東山の選手たちに『まだ大丈夫』という自信を与えてしまった。

 

「ジャンピがいない時間帯に、しっかりと中で勝負にはいったんですけど、向こうのシュート力が上回ったんだと思います。思った以上に(東山のシュートの)精度が高くて、こちらも守っていないわけではなかったけどタフなシュートを決められてしまった」と、田中敬コーチもこの時間帯の戦いを悔いている。

 3Q中盤以降は東山の独壇場だった。司令塔の#11米須玲音が自由自在にコートを駆け巡り、ピエールもデイビッドを後半わずか4得点に抑える堅守に加えて、要所でバスケットカウントを連発。西部や控えPGの#13清水拳にも自由にプレーさせてしまった結果、60-48と12点のリードを奪った場面からファイナルスコアは74-92。約16分間で14-44と悪夢としか言いようがない点差が付いてしまった。

 東山の勢いに圧倒されたことから生じた焦りがチームから冷静さを奪い、ゴール下のイージーショットも寸分の狂いでリムからこぼれ落ちた。どうしようもなかったのである。

ついに日本一にはたどり着けなかった丸山。次のステージでは必ず…

 

 報徳学園の夢はまたしても東山の前に崩れ去ったが、困難な1年を乗り越えたという意味では「今年はコロナ禍で大変な年だったけど、大変な年だったからこそ学べたところもあったので、今年のウインターカップは学びの大会でした」と丸山。「今まで日本一を目指してやってきたので、そこの目標は変わりなく、来年も日本一を目指して頑張ってほしいです」(丸山)と後輩たちに未来を託した。

 3年計画の3年目。彼らの目標はついに実現することはなかった。しかし、短期間でチームとしてここまで成長できた過程は、決して忘れてはならない。

 3本柱はここで引退となるが、テーブスや中野をはじめ、#12高木良太朗、#23溝上恵大など残された下級生たちにも将来性豊かな選手は多い。

 3年間で培った勝つチームの雰囲気。これを新チームに生かし、来年必ずこの舞台に戻ってくること。これが残された者たちに課された次なるミッションなのだ。


写真/JBA
取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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