月刊バスケットボール5月号

【ウインターカップ2020】悔しさが促した確かな成長の跡

 悔やんでも悔やみ切れない敗戦を喫したあの日からちょうど1年。大阪府代表の大阪桐蔭はベスト8を懸けて石川県代表の津幡と対戦した。

 

 昨年のウインターカップ3回戦でも息詰まる大接戦を繰り広げた両チームの戦いは、最後の最後で津幡のエース仲道玲夏(現大阪体大)が値千金のオフェンスリバウンドからファウルを獲得。プレッシャーのかかる場面で2本のフリースローを決め切り、劇的な逆転勝利を飾ったのだった。

 

 昨年、2年生だった#5松川、#6柴田、#7大﨑の3人はあの劇的な負けをスターターとして経験しているだけに、津幡との対戦には並々ならぬ思いがある。「去年1点差で負けた悔しさを知っているのは(スターターの)3年生だけです。勝負どころでは自分が行こうと決めていました」と意気込んで試合に入ったのは松川。

 

 苦い経験を払拭したい桐蔭にとってこれ以上の舞台はない。

 

27得点、10リバウンド、5スティールの大活躍だった松川

 

 試合は予想どおりの大接戦となった。176cmのセンター#9高山を擁する津幡はインサイドを有効に使いながら、#4佐藤、#7竹田らがアウトサイドから加点。対する桐蔭も松川が華麗なドリブルワークで津幡の包囲網を突破すると、外からは大﨑が3Pシュートを射抜く。取っては取られ、取られては取りの大接戦は3Qを終えても桐蔭がわずかに4点リード。勝敗は最後の10分間に委ねられた。

 

 昨年はここから大逆転を許した。最後まで油断はできない。

 

 桐蔭の誰もがこう考えていたはずで、クォーター序盤から松川と大崎を起点に点差を拡大。一時1点差に詰め寄られた場面もあったが、津幡のアクションに対して冷静に対処し試合をコントロールしていった。5分、4分、3分と時計が進み、残り14秒には大﨑が11点差となるダメ押しの3Pシュートをヒット。

 

 このシュートを生み出したのは「いつもの自分からリコ(大﨑)にキックアウトするプレーだったから、絶対に決めてくれると思っていました」という、松川からのアシスト。悔しさを知る2人のコンビネーションが、激戦に終始を打ったのだ。

 

 運命というものが存在するのかは分からない。しかし、同じ3回戦に因縁の相手と再会し、雪辱を果たす。こんなドラマのようなストーリーはそうそう生まれるものではないだろう。頼もしいエースに成長した松川も、シューターとして一皮向けた大﨑も敗戦を糧に成長してきたからこそ、今日の活躍がある。

 

 今度は津幡がこの敗戦を新チームに生かし、ステップアップにつなげていく番だ。

 

 【大阪桐蔭 77-65 津幡】

 

 

写真/JBA

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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