月刊バスケットボール5月号

3x3男子日本代表が始動! 世界基準を想定したオープンレースがスタート

 11月18日、東京都・北区の味の素ナショナルトレーニングセンターにて第 1次強化合宿を開始(11月16日〜19日)した3x3男子日本代表のオンライン会見が開かれた。

 

国内トップ10選手から未経験選手までが

ミックスされたオープンレース

 

 今回の強化合宿にはBリーグの各クラブに所属する選手を中心に総勢16名が参加。10月に行われた「3x3 JAPAN TOUR 2020 Extreme Limited」ファイナルシリーズのMVPで、今合宿最年長、39歳の鈴木慶太から最年少は筑波大1年の三谷桂司朗(19歳)まで幅広い年代の選手を招集した。

 

 その中には3x3未経験のアイザイア・マーフィー(広島)やエリエット・ドンリー(大阪)の名も。今回のメンバー選出についてトーステン・ロイブルディレクターズコーチは「全てのフィールド、3人制特化のフィールドで戦ってきた選手、国内ランキングトップ10の選手、Bリーグの選手の中からは3x3未経験でも上達しそうな選手を選びました。今は長期の活動休止期間を経た中で誰がトップ選手なのかの現状把握をしている段階です」とのこと。現時点では全員がフラットな状態で合宿に参加しているのだ。

 

まずは現状把握。ロイブルコーチ(写真中央)は目を光らせる

 

「オリンピックのメンバー選考で一番重要なのは選手の持つ情熱とやる気です」とロイブルコーチ。3x3は気温が高い屋外(青海アーバンスポーツパーク内の特設コートを予定)での競技開催となるため、それだけでも条件はタフなものだ。そんな過酷な状況を想定して1日2度のハードな練習を積む中で、誰が苦しい中でパフォーマンスできるのか見ているという。精神的に追い込まれた状況でこそ、ロイブルコーチが言う「情熱とやる気」が純粋な実力以上の差を生み出すのだ。

 

 それは、これまでのオリンピック候補選手にとっての警告でもある。大会の1年延期を受けてもう一度公平に、オープンスタンスでメンバー選考を行うことで「(今回の合宿は)昨年までのターゲット選手も『安心してられないよ』というメッセージでもあります。休んでいたら簡単にはいかない。オリンピックでメダルを目指すのはそんな簡単ではないので、そう言う意味も込めて選手たちには厳しい道を与えています。ここで選手たちがハードワークして、(代表選手としての)ポジションを勝ち取ってもらうのが重要なこと」と、ロイブルコーチ。

 

 合宿からより競争力を高めることで、まずは選手個人の意識から世界基準に近付けていくことにつながるわけだ。

 

全員が動く展開を目指す

カギは「アウトレットパスの速さ」

 

 当然、戦術の面でも国内リーグでの戦い方から、世界基準での戦い方にシフトしていく必要がある。約1年3か月ぶりの合宿招集となった齊藤洋介(UTSUNOMIYA BREX.EXE)はそれを念頭に置いて今回の合宿に参加していた。「日本代表が世界を相手に戦うために何が必要かを考えながらここに来ました。昨日の練習終わりにも『こういうところをもっと重視した方がいい』というような話をして、今日はまた違うメンバーと組んで試合をしましたが、みんな理解度が高くて(アドバイスを)3人制に落とし込む能力が高いです」(齊藤)と合宿への手応えを感じている。

 

齊藤の言葉が飛躍のカギになるか

 

 具体的に齊藤がほかの選手へ向けて指摘した内容は「1対1が強い選手は有利ですが、それだけで長く通用ことはないので1対1に頼り切ってはいけません。(国内で)日本人選手がインサイドのミスマッチを攻めているのは、世界ではそうならない、逆にこちらが小さくてミスマッチになることがすごく多いです。当然ミスマッチが生まれればそれを狙うのは当然ですけど、それ対する練習よりも全員で動きながら武器であるスピードを生かしていく意識が必要」であることだ。

 

 もう一つがアウトレットパス。3x3はリバウンドを確保した後に2Pラインの外側に一度ボールを戻す必要がある。当然、相手チームは出所を狙ってくるわけで「そのパスをいかに速く出せるか。どういうコミュニケーションを取ってしっかりとパスを出せるのかをみんなに話して意識した部分です」と齊藤。これは全員が動くスピーディーな展開に持ち込むための基盤となる部分でもある。

 

 彼のアドバイスは3x3経験者の藤高宗一郎(奈良)や松脇圭志(富山)らにも響いたようで「今までやってきた合宿の中でもスペーシングを重視して、日本人が海外の選手と戦っていく中でどうするのかを重視した合宿だと感じています。パスアウトをいかに速くするかが日本にとってはすごく重要なので、そこを意識して取り組んでいる」と藤高。齊藤の言葉がチーム全体でしっかりと共有されているようだ。

 

未経験からの五輪出場を目指すマーフィー

 

 冒頭で紹介したように今回の合宿には3x3未経験の選手も含まれている。その一人がアイザイア・マーフィーだ。幼少期を米軍基地で過ごしていたため、遊び感覚で3オン3を経験したというマーフィーだが、もちろん日本代表レベルともなれば別次元。Bリーグではルーキーながらスケールの大きなプレーで広島を牽引しているが、こと3x3という中では言わば“初心者”というわけだ。

 

 マーフィーは5人制とのギャップについて「ルールの差が一番大きいです。それとコートの狭さ。5人制のハーフコートのサイズよりも狭いので、その辺りに苦労している」。3x3のコートは横15m×縦11mと狭く、5人制のコーナースリーにあたるスポットもない。躍動感あるプレーが魅力のマーフィーだけに、ほかの選手以上にコートサイズは気になるのかもしれない。

 

初の3人制に挑むマーフィー

 

 また、フィジカルコンタクトの面も未経験者がぶち当たる壁の一つ。今回の合宿には参加していないが、3x3の経験豊富な野呂竜人(BEEFMAN.EXE)も過去に「3人制に転向した直後はコンタクトがものすごく激しくて傷だらけになっていました。転倒することも多いです」と過酷さを語っている。

 

 マーフィーも「審判もコンタクトがある程度許してくれますし、そのコンタクトの強さは5人制と大きな違いがあります。そこにアジャストするのにも苦労している」と語る。

 

 それでも「ケガのリスクもあるし、最初は(合宿に参加するか)迷っていました。でも、3人制なら東京オリンピックに出られる可能性がある。オリンピックにはぜひ出たいので、勝ち残れればすごいことだと考えています」とオリンピックへの意志が参加を後押した。

 

 マーフィーの招集についてロイブルコーチは「(2017年の)U19世界選手権で見ていたスラッシャーでリバウンドも強くて想像力の高い選手です。3x3の選手として、プロフィールが合致していて本人もやる気があったので招集しました」と期待を寄せている。

 

 経験者、未経験者問わず3x3向きの実力派が多く選出された今回の強化合宿。最終的にオリンピアンとなれるのはわずか4人だ。「東京2020」改め「東京2021」に向けた戦いがいよいよスタートした。

 

★第1次強化合宿参加メンバーは以下をチェック

 

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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