Bリーグ

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2021/12/24

ショットメーカー、岡田優介(アルティーリ千葉)の職人気質

バスケットボールの教科書に使えそうな岡田優介の3Pショットシーン

 

「彼、スゲーだろ」

 

 もう10年以上も前のある夜、東京都内のとある中学校の体育館で知人のクラブチームが練習をするというので、気晴らしに仲間に入れてもらったことがあった。実際にはかなり練習開始時間を過ぎて到着したために自分自身はプレーしなかったのだが、その日のことを今も忘れずに覚えている。


 スクリメージをひとしきり終えた後、一人の若者がシューティングをしていた。身長も幅も、一般社会人の私より若干デカいかなとは思ったが、ごく普通の若者の風貌だった。ちょっとガタイのいいアスリート系のモデルかな? などと思いながらコートの反対側から遠目で何となく視線をその若者に向けていたのだが、しばらくすると「いや、これは違うな」と思い始めた。


 とにかく入るのだ。リバウンドするパートナーと笑顔で言葉を交わしながら、心地よさそうに、ボールの感触やスウィッシュするときの音を楽しむように、ストロークを繰り返していた。ボールは次々とネットに吸い込まれていく。しばらく見ていた私に、「彼、スゲーだろ」と知人が声をかけてきた。


 「岡田優介だよ」と知人は教えてくれた。


 当時青山学院大学在学中だった岡田優介の名前を私も当然知っていたが、まさかその場にいるとは思いもよらなかった。突如として日本男子バスケットボール界期待のシューターに“変身”した若者に、私は声をかけることもなくとにかく見入った。何度も何度も、ボールはネットを通過し続ける。


 リズムショットが入りやすいのはわかっているが、インカレで優勝を争うチームのシューターってのは、オフの日になるとこんなにも入るものか…。それが正直な感想であり、一言でいえば知人の言葉どおり「スゲー!」と思って帰宅した。


 一目見た人にそんな驚きをお土産として持ち帰らせることができる男。それが岡田優介だと思う。2007年の大学卒業以降積み上げたキャリアは、アルティーリ千葉(以下A千葉)入りした今シーズンで15シーズン目。しかしあの夜感じたのと同じショットメーカーとしての職人気質を、岡田は今でも毎試合発散し続けている。12月19日に千葉ポートアリーナで行われた対横浜エクセレンス(以下横浜EX)戦終了時点での3P成功率42.86%は、チームメイトの大塚裕土の43.93%に次ぐリーグ2位。両者とも期待に応える仕事をしていることがわかるデータだ。

 

岡田のプレーぶりは常に「3Pで飯を食っている」ということを感じさせる

 

2連続で決めるのがポリシー

 

 岡田がB2のアースフレンズ東京Zに所属していた昨シーズン、3Pショットに関するコメントをもらう機会があったのだが、そのとき話していたのが3Pショットを1本ではなく2本連続で決めることの重要性だった。岡田は常にそれを狙っているという。「プロのレベルで3本連続はなかなか許してくれないですが、2本だったら…。自分がその気になって狙っていけば…」と岡田は話してくれた。


 12日の対山口ペイトリオッツ戦では、実際に6点連取をやってのけていた。この試合では全体で5本中4本の3Pショットを成功させて13得点を挙げている。


 19日の試合後会見に姿を見せた岡田に、そうした考え方を含め今シーズンのパフォーマンスに対する感想を聞いた。これまでのキャリアであまり多くはなかったベンチスタートが今シーズンは定着しているが、「このチームで与えられた役割は流れを変えてほしいとか、勝負を決めるというということで、それはこれまでも変わらないと思ってやっています」と出場時間や起用方法については一切ネガティブな捉え方をしていなかった。

 

会見での岡田は2連続・6点連取の意識やチームプレーの中でのシューターの役割、そして長崎ヴェルカとの首位攻防戦への思いを話してくれた


 3Pショットに関してはやはり“2連続”にこだわる。「得意の3Pショットが武器であることはこのチームでも同じなので、常に連続で決めることをポリシーとして狙っています。3Pショットの威力が印象づけられる6点連取というのは大きいと思うんです。それをどこで出すかで流れを変えることができるので、1本目を決めたら必ず次も打ちにいく意識をずっと持っています。それが相手にも脅威になると思うので」


 高確率で決められるシューターは、たとえボールを持っていなくても相手のディフェンスが放っておくことのできない存在だ。すでにその評判がついている岡田の3Pショットは、仮に落ちたとしても打たれたこと自体が相手にボディーブローのように効いていく。今シーズンの岡田は出場時間が10分に達しない試合もいくつもあるが、相手にとってはワンポイントで岡田がコートに出てきてカットムーブを繰り返すだけで、ボールに触りさえしていないのに「放っておいたら80%決められてしまうかもしれない」と警戒しなければならなくなるのだ。

 

 それを承知している岡田は、「プレータイムは自分の良し悪しでそんなに変わらないと思っています。ある程度の時間の中で仕事をする意識ですね。逆にほかのチームメイトの良し悪しで自分のプレータイムが変わることもあるので、あまり『今日は少なかったな』みたいなことで一喜一憂はしません。そういう年齢でもないですしね(笑)」とおおらかに語った。「今与えられた環境でベストを尽くすことがチームのためになるし、そこがコーチに求められていることだと思うので、出たときに得意なことをしようと思っています」

 

岡田のオフボールのカットはアルティーリ千葉のオフェンスの重要な要素の一つだ

 

 岡田によれば、A千葉はフロントラインがリバウンドやスクリーンで奮闘し、シューターに安心感をもたらしていることも好調の要因だという。会見当日の横浜EX戦についても「少し苦しんでシュートも外していたんですけど、今日MVPを獲ったケビン・コッツァー選手やイバン・ラべネル選手が頑張ってリバウンドを獲ってバスケットカウントにしてくれたり、こちらも自信を持ってシュートを打つことができました」と分析していた。


 この試合での勝利でA千葉は通算成績18勝2敗のリーグ2位。12月25日(土)・26日(日)の次節は、19 勝1敗で首位を走る長崎ヴェルカとアウェイで対戦するが、岡田は「来週大事な首位攻防戦がありますので、そこに向けて連勝でホームゲームを終えることができて、チームとしては良い流れで迎えられるんじゃないかなと思います」と士気も高い。

 

首位攻防戦への思い


 長崎との2連戦は、B3公式戦として初めてバスケットLIVEが配信することが決まっており、この一事を見ても世間の注目度が非常に高いことが感じられる。両チームとも、今シーズンからの参戦でありながら首位を争うライバル同士なので、それもうなずけるというものだ。しかし12日の対山口戦後の会見で、アンドレ・レマニスHCは「コーチとしては目の前の試合をいかに戦うかに集中しています」と話し、この対戦を意識していない様子だった。


 プレーヤー側の心境について岡田は、「もちろん目の前の試合が大事というのは間違いないですが、長崎ヴェルカはウチと同じで今年参入して、戦力としても非常に充実している中で良い結果を出しているので、ライバルの一つとして意識しているチームというのはあります」と話した。「ここを倒さない限りB3優勝はありません。避けて通れない道なので、何か特別というよりはそういう事実として選手たちも捉えていると思います」


 A千葉は11月4日の対しながわシティバスケットボールクラブ戦で、それまでチームの核として奮闘してきたレオ・ライオンズが左アキレス腱断裂の重傷を負い、戦列を離れている。新たな補強(当初ワース・スミスを獲得したが、そのスミスも故障離脱したため12月に入ってジャマール・ソープが加入)と戦術的な変更を余儀なくされる事態となったが、岡田は「彼抜きでベストのことをしなければいけない中で、ボールのシェアやテンポの速さの点で成長することができたかなと。5人がしっかり動く本来のフローオフェンスが、毎週良くなってきていると思います」と現状とチームの成長について前向きな見方をしていた。この点はアンドレ・レマニスHCも同じで、チームとしての試練を「進みがいのある道のり(a challenging journey)」と話している。


 そのような中で迎える首位攻防戦は、やはり岡田の存在も一つのカギになりそうだ。レマニスHCによればA千葉はポゼッションあたりの得点(Points Per Possession)が現在リーグ1位。また、長崎に対するA千葉のアドバンテージの一つが「ハーフコート・オフェンスの遂行力とスペーシング」であると話している。プルアップでもキャッチ&シュートでも、ロングレンジから高確率で決められる岡田の投入が及ぼす影響は間違いなく大きくなる。


 対して長崎は、厳しいプレッシャー・ディフェンスからのアップテンポなトランジション・オフェンスが特徴だ。スティールがリーグ1位。これもレマニスHCの分析によれば、オフェンスの20-22%は、ターンオーバーか悪いショットを打たせたところからのトランジションで生み出されている。


 相手のテンポに合わせず自らのテンポで戦えるか、プレッシャーをかけてくる相手のスキをついて、落ち着いて攻め込むことができるか。バックコートのプレッシャーを抜けると、逆にイージーバスケットやオープンルックが見つかるかもしれないとレマニスHCは話す。その場面でフィニッシャーとして機能すべき存在の一人に岡田がいる。


 そこで1本…ではなく2本続けて決めてくる。“職人”岡田はそう意識して長崎に乗り込むはずだ。

 

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