月刊バスケットボール6月号

NBA

2021.12.14

渡邊雄太(ラプターズ)がキャリア初のダブルダブル、ラプターズは借金完済まであと1に

 トロント・ラプターズの渡邊雄太が、日本時間12月14日(北米時間13日)の対サクラメント・キングス戦で12得点、10リバウンドの自身初となるダブルダブルを記録し、124-101の勝利に大きく貢献した。渡邊はフィールドゴール8本中5本(うち3Pショットは4本中2本)を沈める効率の良いシューティングと、スピードに乗ったカッティングでラプターズのオフェンスに良い流れを生み出し、アシスト2本、スティール1本も記録した。


第2Q序盤には渡邊の時間帯も生み出された。32-25の7点リードで迎えた残り10分43秒、まずはこの試合で自らの初得点となる右コーナーからの3Pショットがきれいに決まる。続くポゼッションでは、ルーキーのスコッティ・バーンズとのオフボールのスクリーンプレーで、鋭いカールカットの動きの中でボールを受けてルックアウェイ・パスでバーンズの豪快なダンクを演出。さらにキングスと1度ずつ攻守をはさんだ後のポゼッションでは、ディフェンス・リバウンドに飛びついた後そのままドリブルでフィニッシュに持ち込みレイアップで5得点目を奪いチームを勢いづけた。


この7-0のランで波に乗ったラプターズは、前半終了までに70-45と大量リードを築き、後半も危なげない戦いで勝利をものにした。今シーズンの通算成績はこれで13勝14敗(イースタンカンファレンス10位)となり、勝率5割まであと1勝。ただし渡邊が復帰してプレーした8試合では5勝3敗と勝ち越している。

 

ナースHCは渡邊を控えの一番手として頼りにしていることを明かした


自信を持ってプレーできている様子の渡邊について、試合後の会見でニック・ナースHCは、「良い本数のショットを打てていますよね。特にリバウンドからそのまま自分で持っていて、状況をうまく作り出しながらステップバックから決めたジャンパー(第4Q開始1分過ぎのプレー)など、本当に自信が感じられたプレーで、絶対に決めてやろうという気持ちが見えました」と高評価。「3Pショットを狙えているのも良いところで、スペースを生んだりカットするプレーがうまいので、毎試合そんな機会を生み出せています。トランジションでタフなフィニッシュもしっかり決めてきたし、今日はいろんなタイプのショットを見せてくれました。上出来でしたね」


ナースHCは渡邊について、複数ポジションにディフェンスでしっかり対応できていることに加えてオフェンス面でも光る存在になっていることをに触れながら、「我々には彼が必要です」と話し、「控えの一番手(first sub off the bench)」と呼んで非常に頼りにしている様子だった。また、この日の出場時間はケガからの復帰後2番目に長い25分56秒だったが、その中で第3Qの残り4分から最後まで、16-17分間を通しでプレーできたことも一つの大きな安心材料だったようだ。


試合後会見には渡邊自身も登場した。昨シーズンは少なかったこうした機会も、今シーズンは当たり前に期待できる。「プレーイングタイムをもらえたら、ある程度のスタッツは残せるんじゃないかという自信があります」という本人のコメントを聞けば、そんな期待はいっそう大きくなる。現地記者の英語での質問には、「I'm proud of myself(自分でもよくやったと思います)」と明るい声で答えていた。

 

試合後会見での渡辺はすっきりした表情で


OGアヌノビー、ケム・バーチ、プレシャス・アチウワとフロントラインの主力3人が離脱中というチーム事情で、前述のとおりナースHCが非常に頼りにする存在となっている中での活躍に、「ケガ人が戻ってきたら僕のプレーイングタイムが落ちる可能性もあります」と謙虚な思いも言葉にしていた。しかし現実的にはシックススマンとしての立場を確立できていると言ってよいだろう。流れを変える、あるいは良い流れをさらに勢いづける存在として定着している。


渡邊の12得点は今シーズンのシーズンハイであり、2桁得点は復帰2戦目の対メンフィス・グリズリーズ戦(11得点)に次ぐ2度目。キャリア全体では2桁得点は9度目で、キャリアハイは昨シーズン中の日本時間4月17日に行われた対ニューヨーク・ニックス戦の21得点だ。リバウンドに関しては、2桁に乗せたのは今回が初めて。これまでのキャリアハイは、同4月3日対ゴールデンステイト・ウォリアーズ戦で記録した8本だった。


「試合に出ればそれだけの数字を残せるという証明を、今できていると思う」。自信を深める渡邊の活躍も光ったラプターズの勝利に、スコシアバンク・アリーナの大観衆はスタンディングオベーションで応えていた。


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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