月刊バスケットボール5月号

NBA

2022.11.23

渡邊雄太(ネッツ)を手放した理由は不運なコンディションの不安定さ - ニック・ナースHC(ラプターズ)語る

 トロント・ラプターズがブルックリン・ネッツを迎えるホームゲームを前に、ラプターズが試合前日の11月22日(日本時間23日)に行った練習後会見で、ニック・ナースHCが渡邊雄太について言及した。渡邊は昨シーズンまで2シーズンをラプターズの一員として過ごし、ナースHCの下で自身初のNBAのスタンダード契約を手にしている。渡邊がトロントに戻るのは今回が初めて。同日フィラデルフィアで行われるセブンティシクサーズとの一戦の状況によってはリーグの3P成功率1位という肩書きを持ってのトロント凱旋となる。


ナースHCは自身が飛躍の機会を与えたプレーヤーの一人である渡邊について、「いいプレーをしていますね」と話し、渡邊との契約を更新しなかった理由として、コンディション面の不安定さがあったことを明かした。「一番大きかったのは、彼がほとんど健康な状態でいられなかったことです。彼自身は一所懸命に取り組んだし、こちらも彼の育成に注力しました」

 


昨シーズンの渡邊は、出場試合、出場時間とも一昨シーズンより少なかった(前シーズンの50試合から38試合へ、14.5分から11.7分へと減少)。開幕から19試合は故障欠場。その後一時ローテーション入りを果たし、現在までのキャリアハイとなる26得点、13リバウンドというダブルダブルを記録した試合もあったが、再びコロナ陽性判定で4試合を欠場した1月以降はローテーションから外れ、本来の力を出せないままシーズンを終えることとなった。


ナースHCは「彼は不運にも故障が続いてしまったために、良い流れを1度か2度しか作れませんでした。オリンピックから帰ってきてプレシーズンでショットを決めていたので、これはいけると思ったら出られなくなり、その後コロナ陽性の時期もあり良いリズムを作るのに時間がかかりました」とその流れを振り返った。

 

 

 結果としてラプターズは、有能なディフェンダーでありシューターとしての能力の高さを見せている渡邊を手放し、一方でここまでの17試合を故障者続出の中で9勝8敗と勝ち越している。現状がWin-Winと呼べるかどうかは判断が分かれるところだろうが、渡邊にとっては良い方向に状況が動いているのは間違いない。今シーズンの渡邊は、シクサーズ戦を前にして24本の3Pショットを成功させており、あと3本の成功で昨シーズン全体の成功数に追いつく勢いだ。これまでのシーズン最多成功数はラプターズでの最初のシーズン(2020-21シーズン)の36本だが、これも現状のペースを維持すればあと数試合のうちに到達できる数字だ。


渡邊はシクサーズ戦当日となる北米時間22日午後3時30分(日本時間23日午前4時半)付けのインジャリーレポートで、「Right hamstrings: tightness(右ハムストリングスのこわばり)」という理由により出場の可能性が「Questionable(疑わしい)」となっている。最終的な判断は本稿執筆時点では確認できていないが、渡邊とすれば思い出深いトロントの街で恩返しの機会を得るためにも、万全のコンディションを整えたいに違いない。

 

ラプターズ公式YouTubeの会見映像


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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