月刊バスケットボール5月号

NBA

2022.11.06

目下3P成功率リーグ2位の渡邊雄太(ネッツ)にジャック・ボーンHC代行も信頼のコメント

 2022-23シーズンの開幕から8試合に出場した渡邊雄太(ブルックリン・ネッツ)が、NBAの3P成功率部門でリーグ全体の2位に躍り出る好成績を残している。八村 塁との日本人対決があったワシントン・ウィザーズとの一戦を終えた日本時間11月5日(北米時間4日)時点までの15本中9本成功、60.0%の成功率は、過去に最も高確率だった2020-21シーズンの40.0%を20ポイント上回るキャリアハイペース。日本時間10月27日(北米時間26日)のミルウォーキー・バックス戦以降の直近6試合では、どの試合でも最低1本以上成功させている。

 


このまま60%の確率を維持することは、過去の上位ランカーの成績(例えば直近10年の3P成功率ランキング1位プレーヤー中の最高確率は2014-15シーズンのカイル・コーバーで49.2%[449本中221本成功])から考えれば極度に難しい。しかし、渡邊の過去3シーズンの成功率は37.3%(177本中66本成功)で、総じてまずまずといえるレベルを保ってきている。現状の1試合当たりの成功数は1.1本だが、これを維持しながら、40%程度の確率を維持していくことは現実的に達成可能な目標に思える。過去のキャリアハイを3%上回ることは簡単ではないが、実績はあるのだ。

 

 今シーズン全体のサラリーが確約されていない立場の渡邊が、上記のレベル(1試合当たりの成功数は1.1本の成功数と40%前後の成功率)を現状ペースの出場機会(9試合中8試合に、平均16.5分出場)で維持して、契約がシーズン全保証になる2023年1月10日(北米時間)を迎えられた場合、渡邊にもネッツ全体にも衝撃的と言えるほど大きな出来事になるだろう。リーグのトップ10入りをシーズンを通じて成し遂げられる可能性も出てくる。


スティーブ・ナッシュがチームを去った後、臨時でヘッドコーチを請け負っているジャック・ボーンは、前述のウィザーズ戦に128-86で勝利した後の会見で「(ダニエル)ギャフォードが出ているときに、ユウタがアドバンテージになると見ていました。シューターを複数投入することで相手のディフェンスを広げることができ、ケビン(デュラント)に密集しにくくさせられるからです(We looked at it as an advantage of having Yuta out there when (Daniel) Gafford was out there. We could stretch the floor, put multiple shooters around and made it difficult for them to contain Kevin [Durant].)」と渡邊に対する信頼と期待する役割を言い表した。前任のナッシュとデュラントも渡邊に対する高評価を言葉にしていたが、それはすでにチーム全体のもののようだ。


渡邊自身は好調なシューティングの要因を有能なチームメイトの存在に起因する自信だと話していた。


「楽に打てますからね。チームメイトにKD(デュラント)やカイ(カイリー・アービング)のようなプレーヤーがいると、相手は毎回彼らをダブルチームしてきますから、誰かがワイドオープンになるんです。僕は相手に開けられることが多いので、練習のように楽に打てます。チームメイトのおかげですね」

“It’s easy when you have teammates like KD or Kai, you know. Because they double them every time. So, someone is going to be wide-open. I’m kind of one who they leave wide-open. So, (I'm) just making wide-open shots just like practice. So, shots I’ve been taking..., it’s like really easy. I appreciate my teammates.”

 

 

 ウィザーズ戦での渡邊の3Pシューティングは3本中2本成功の成功率66.7%。これはオフコートの問題で欠場したアービングのない状況でのものだ。

 

 ボーンHC代行によれば6日のシャーロット・ホーネッツとのアウェイゲームには、故障で今シーズンの出場が1試合にとどまっているシューターのセス・カリーも復帰の見込み。まだ本来の調子ではないジョー・ハリスとカリーがどのように本来の姿を取り戻していくかも、渡邊の出場機会の増減に影響してくるかもしれないが、そこで大きな意義を持つのがディフェンス面での貢献だ。

 

 直近のシカゴ・ブルズとウィザーズ相手の2試合を振り返っても、コーチ交代やアービングの欠場などでチームに激震が走る中で、渡邊はオフェンス面での好調さに浮かれずチームの要求に沿ってディフェンスに注力している。シーズンの約10%を経た現時点から、故障離脱などに見舞われずにこの側面での貢献を継続できれば、出場機会を維持・増加させていく期待も膨らむ。

 

 ここからどのようにステップアップしていくだろうか。「Make-or-miss league(結果がすべてのリーグ)」と言われるNBAで、ここまでは渡邊に結果がついてきている。

 

文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



PICK UP