月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.10.01

丸山太陽というダイヤの原石 - B3岐阜スゥープス期待のスイングマン直撃インタビュー

 バスケットボールとの出会いは小学校4年生のときだった。当時から背が高かった少年の心はすぐにその虜になった。有力校の勧誘を受け、高校バスケットボール界での飛躍を夢見たが、部活は肌になじまず一度は褐色のボールに背を向けた。


アイツ、逃げ出したんだってな――そんな言葉に心臓がギュッと締め付けられた。トライアウトで3x3の渋谷フューチャーズに加わり、5人制の相模原プロセス(地域リーグ)でもプレーを再開。向き合いなおしたバスケットボールは、やっぱり楽しかった。


丸山太陽。身長197cm。軽々両手でダンクをぶち込み、アウトサイドからも得点をねらえ、走れる。どのチームも大型化が進んでいる中、このサイズで2番、3番での活躍を期待できるダイヤの原石が、この秋B3の岐阜スゥープスで眩しく輝こうとしている。

 

©岐阜スゥープス


3x3の世界からB3への新たなチャレンジ

 

――岐阜スゥープスへの加入を決めた決定的な要因は何でしたか?


6月にTokyo Samurai(東京を拠点に活動するAAU[Amateur Athletic Union=若年世代の育成に主眼を置くアメリカのスポーツ団体])のショウケースに参加させていただいた際に、複数のエージェントの方から声をかけていただきました。その中でとても丁寧に接してくださった方がいて、その方のお話の中で早い段階に持ってきてくださったものの一つが岐阜スゥープスでした。実際、話してみたいと言ってくださった最初のチームが岐阜で、GM兼選手の田中昌寛さんと那須史明社長のお二人と、ズームでお話しさせていただいて、その後練習にも参加させていただきました。田中昌寛選手、荒川凌矢選手、増本優太選手、杉本憲男選手とマネジャーの中野大介さんが一緒で、よくしていただきました。

 

 まだ自主練だけだったので、全体の雰囲気はわかりませんでしたが、一緒にプレーさせていただいてベテランや年上の方々に親切に接していただきました。案内していただいた町も魅力があるなと感じたし、僕もできれば時間をおかずに決めたいなとも思っていたので、その帰り道にはもうエージェントに「ここでやりたいです」と返事をさせていただきました。

 

――Samurai Showcaseがきっかけということですか?


そうです。あの機会がきっかけで決まりました。


――Tokyo Samuraiとはどんなご縁だったのですか?


あのとき初めて接点を持ちました。きっかけは、当時所属していた3x3のプロチーム、渋谷フューチャーズの兼子勇太GMの紹介で、チームから僕とユッケさん(藤村祐輔)で挑戦してみようということになりました。


――渋谷フューチャーズは丸山選手の5人制での挑戦を応援してくれていたんですね。


そうですね、トライアウトの段階で「Bリーグは目指さないの?」と聞かれていて、僕も「3x3からBリーグ入りを目指したいです」と伝えていました。最近そのような例も増えているなと思っていたので。兼子GMからも「機会があったら知らせるから」というような言葉をもらっていました。


――そうしたら本当に良かったですね! 早々に話が進められたということですから。


そうですね! 本当に運が良かったです。 


――岐阜に移り住んで、バスケ以外で「ここはいいところだな!」と気に入ったことや、お気に入りの場所は見つかりましたか?


今はコロナ禍の影響もありますし、自宅と練習場の往復だけなんです。岐阜城など気になっているところはありますが…。でも、こちらにきて約2ヵ月、見るものがみな新鮮で楽しいです。静かなところが気に入っていますし、東京とまったく違う雰囲気です。


――岐阜スゥープスはどんなチームですか?


高飛車なプライドとは違う高い意識を持っていて、選手側からも意見を出せる雰囲気があります。まだ僕自身はキャリアも知識も先輩方と差があるのであまり発言していませんが、ベテランに対して若手からとか、外国籍選手たちも通訳を介したり身振り手振りを交えて頑張って伝えています。すごく雰囲気が良いチームだと思います。

 

☆次ページ: 後半「二度とやらないつもりだったバスケが、やっぱり楽しい


プレースタイル的には、ディフェンスにプライドを持って取り組むということが、B3参入前からの岐阜スゥープスのチームカラー。まずはディフェンス。その意識をベースに、走る、セカンドチャンスで粘る、サードチャンスも粘る。全員が絡んでいく。


オフェンスでは決して焦らない。得点機には積極的にゴールに向かうのは当然だが、時間をかけてモーションオフェンスを展開することで、その機会を生み出す。田中 聡HCのバスケットボールは攻守とも丁寧に戦うのが特徴だ。セットオフェンスよりも原則を基に状況判断を求められるオフェンスで、身体的な強さ、心の強さ、そしてバスケットボールIQを含めた総合的なスキルの高さが求められる。


田中HCはその中で、身長197cmで走力もある丸山には、失敗しても構わないから思い切ってプレーするように激励しているという。

 

©岐阜スゥープス


二度とやらないつもりだったバスケが、やっぱり楽しい


――天皇杯はホーム開幕戦の相手となるアルティーリ千葉との試合でした。出場がありませんでしたね。


今の時点では、まだ僕は力不足です。アルティーリ千葉はどの選手を見ても、経験豊富なベテランや活躍が期待される若手ばかりです。外国籍プレーヤーもB1にいたプレーヤーですよね。まだちょっと不安要素が多すぎて、それが自分でもわかっていたので、出られなくても正直なところ当然かなと思ってしまいました。知識や技術面もそうですけど、チーム全体で守らなければいけない点への気遣いなどが足りていないので、まだ勉強中というところです。


――特に高めたいのはどんな部分ですか?


あらゆる部分を高めたいんですけど、試合慣れをしていないのもあって、まずはとっさの判断ができるようになりたいです。ゆっくり確認しながらだったらできること、例えばチームで決めているオフェンスをやろうとするときに、相手の激しいディフェンスに対してできるかと言われたら、途中でエラーが起きたり、臨機応変に変えるべきところで止まってしまったり。僕が止まってしまうと全体が崩れてしまうので、「これをされたらこうするのが有効」というパターンをもっと増やしたいですね。


練習中に考えるだけではなくて映像で勉強したいと思って、最近はバスケ関連のコンテンツをよく見るようにしています。まずは状況判断ができないと、個別の技術を身につけてもプレーができないなと感じています。もちろん並行して技術を覚えながらですけど、そこが一番の課題かなと思います。


――田中HCはどんな方ですか?


単に厳しいだけのコーチということではなく、冗談を言って和ませてくれたり、外国籍の選手達にも好かれています。英語が話せなくてもコミュニケーションができてしまうんですよね! 接しやすい方です。


僕はまだまだ知らないことも多いので、練習の合間に声をかけてくれたり、コートの外から指摘してくださるので助かっています。

 

――丸山選手ご自身のプレーの特徴を教えてください。岐阜ではどんなところで貢献できると思っていますか?


この身長で、ブレイクの時に先頭を走れることには自信があります。今はチームの動きの中で「これをやっちゃっていいのかなぁ…」と迷いながらのところもあって練習で出せていないんですけど、ドライブも高校まではすごくやれていたプレーです。自分でも一番好きだったプレーなので、もっともっとだせるかなと。その2つですね。


――ニックネームはありますか?


基本的には「タイヨウ」です。あとSNSなんかでは「マル」と呼ばれることもあります。


――バスケットボールを始めたきっかけはどんなことでしたか?


小学校のとき、クラブ活動がソフトボールとバスケットボールしかなかったんです。その2つを体験してみようと思って、最初はソフトボールから見学をしていたんですけど、同じ日に体育館でバスケもやっていて、中から出てきたコーチに誘われました。子どもの頃からデカかったからでしょうね…! 断トツで座席がいつも一番後ろだったんです(笑) ソフトボールをやる前に体育館に入っていってバスケをやってみたらものすごく楽しくて。


――お子さんの頃から大きいと、ついついインサイドのポジションを任されがちだったんじゃないですか?


そうなんですよ(笑) やっぱりセンターでと言われたんですけど、小さい頃ってどうしても、ガードのすばしこい動きやドリブルして出し抜いて外からシュートみたいなのにあこがれて、「センターだ」と言われているのにだんだん外側に出てきたりしちゃって(笑) でも、あまりガチガチな厳しいチームではなかったので、自由にやらせてくれました。「中! 中!」と言われるんですけど、「ヤダーッ!」と返して外でプレーしていました(笑)


――今ランニングプレーが得意と言えるのは、その頃の名残かもしれませんね。


そうじゃないかな…と思っています!

 

――新たなシーズンを向えるにあたり、個人的に、またチームとして2021-22シーズンにどんなことを成し遂げたいと思っていますか?


今年がルーキーイヤーで、5人制に復帰してすぐにB3でプロになりました。だからまずは、プロ独特の雰囲気に慣れてプレータイムを少しでももらえるように。シーズンは長いので、焦らずにどこかのタイミングで「俺はこれができるんだ!」という自信を得られたらいいのかなと思っています。


――バスケットボールにおけるキャリアで、こんなふうになっていきたいなという将来像はありますか?


僕は高校バスケから離れたとき、もう二度とバスケはやらないと思ってやめたんです。やめてから間もない頃は、周囲の人たちから「えぇぇっ…もったいないね」と気を使った言葉をよくかけられたんですけど、そのうちチラホラと「アイツは逃げたんだ」というようなことを言われるようなことがあって、それにムカッときて…。


だから最初に復帰したときは、そういう人たちを見返してやりたいような気持ちが大きかったんです。でもやっぱり始めてみたら、バスケって楽しいんですよね。今はもう純粋にそう思えるようになったし、そんなこととは関係なくもっとうまくなりたいなと思うようになりました。


今はまだ自分のゴールがここだと明確になっていないんですけど、日本で言ったらB1が一番上なので、そういうところでできるようになって、そこにいるだけではなく試合に出られるような選手になりたいということを思っています。


――岐阜のファン、これまで応援してきてくれた方々にメッセージをお願いします。


時間はかかるかもしれないですけれど、絶対に貢献して「太陽がいて良かったな」と言ってもらえるような選手になれるように取り組みます。必ずそうなりますので、ちょっと気長に待っていてほしいな…と。僕としてはできるだけ早くそうなれるように頑張りますので、応援をよろしくお願いします!


丸山が所属する岐阜スゥープスの2021-22シーズン開幕初戦は10月1日(金)。アウェイの横浜武道館で横浜エクセレンスが相手だ。ホーム開幕戦はその翌週10月9日(土)で、天皇杯と同じアルティーリ千葉をOKBぎふ清流アリーナに迎えて行われる。

 


丸山太陽/TAIYO MARUYAMA
PF, 197cm/86kg
2000年6月18日生まれ(東京都大田区出身)

 

取材・文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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