その他の海外

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2021/09/25

安間志織 ドイツ女子ブンデスリーガ開幕直前インタビュー - 日本のファンへの想いも込め「私がチームを引っ張っていく」

 このオフにブンデスリーガ(ドイツ国内リーグ、DBBL=Damen Basketball Bundesliga)のアイスフォーゲルUSCフライブルクに移籍した安間志織に、シーズン開幕を前にした心境を聞いた。昨シーズンはトヨタ自動車アンテロープスのWリーグ初制覇に大きく貢献し、プレーオフMVP。実績を手に飛び込んだフライブルクの町で、安間はあらためて日本のファンやチームメイトたちへの感謝を噛み締めながら、あらたなシーズンに向けた力強い抱負を語ってくれた。

 

チーム写真で早くもセンターの安間、笑顔に新シーズンへの期待があふれる(Photo courtesy of  Eisvögel USC Freiburg)


日本人という以上のインパクトをリーグに残す貢献をしたい


--アイスフォーゲルはどんなチームですか?


 若い! 本当に若いチームです。ドイツの選手は10歳代から20歳代前半で、海外からきている選手たちが私と同じくらい。私が一番年上なんですよ(笑) 私ともう一人、アメリカ人の選手(185cmのセンター、ハンナ・リトル)が一番年上です。


--そうすると年齢的にもボジション的にも大変な立場ですね。

 

 そうですね(笑) でも、コーチも私の意見を聞いてくれます。一所懸命に伝えようとしているので。たぶんチームで一番英語が話せないですけど…。英語はまだまだですし、ドイツ語はまったくですが、一番うるさいと思います。もうちょっと皆に声を出すように言っているんですよ。

 トヨタ自動車アンテロープスで通訳をしていた方(現千葉ジェッツの綾部 舞氏)にバスケットボールの英語を教えていただいて、「こう言いたかったんだけど…」と連絡して、教えてもらった表現を使ってみたり。頑張っています。


--プレースタイルとしてはどんな特徴ですか? 先日はカップ戦で2部リーグのヤーンミュンヘンに対し99-50で勝ち、安間選手自身2桁得点だったので、どんどん得点をねらうチームなのかなと想像しました。


 私たちのバスケットボールは、速くボールをプッシュして、ディフェンスもプレッシャーをかけてというスタイルで、トヨタ自動車とほぼ同じだと思います。トヨタ自動車も激しいディフェンスからできるだけプッシュしていくスタイルだったので、私としてはやりやすいです。

 なので私はチームの中心になって、引っ張っていきたいです。コーチも私にはリーダーシップを持ってやってほしいと言ってくれていますし、メンバーも若いので、私が引っ張っていかないといけないと思っています。


-- 他にも候補がある中でこのチームに決めたのでしょうか?


 2-3年前から(海外挑戦を)考えていて、他の国のチームからコンタクトをいただくこともあったのですが、タイミングなどいろいろな要因で話を進めることにならずに過ごしてきました。今回のお話をいただいたのは、日本代表合宿への参加を終えた後です。

 正直、東京2020オリンピックで日本人ができると証明されて、今は状況が変わっていると思うのですが、それまで海外では、日本人をあまり高く評価しない人が多かったと思います。その中で声をかけてもらいました。私は「いいな」と思えるチームなら挑戦するつもりでしたし、ヨーロッパは日本人がいないあらたな舞台です。ハラルド(ヘッドコーチのハラルド・ヤンソン)も「君にとってだけではなく、チームとしても日本人を加えることでどうなるかはわからない。一緒に挑戦したい」と言ってくれたので、心を決めました。


--ヤンソンHCはどんなコーチですか?


 怒るところは、やっぱりコーチらしく怒るんですけど、結構ユーモアがあって冗談を言ったりもしている“みたい”です。私の英語力で聴き取れる限りでは(笑) 皆も笑うところは笑ってという感じです。選手たちにはもうちょっと(練習内容にも)メリハリをつけてほしいと思っていますが…(笑) でも、コーチはしっかりやってくれると思います。


--コート上のコミュニケーションやタイムアウトでの指示の理解と実践など、非常に難しいのではないかと思いますが、その点では問題はなくできている感覚ですか?


 聞くのはまあまあ…。私もこれまで海外から来たヘッドコーチの下でプレーしていたので、細かなところで難しいこともありますが、ある程度できています。

 それより自分が言いたいことをまだちゃんと言えていないときがあるんです。いろいろと思うことがありますから、できるだけ単語と単語をつなげて言うようにしているんですけど、皆がそれを理解してくれようとしてくれるので、皆に助けられていますね。私の方は、言いたいことがたくさんあるので、できるだけ伝えようとしています。


--皆さんとどんな感じで過ごされていますか? 先日インスタライブを拝見しました。やっぱり日本の仲間と話すのは懐かしい感じですか?


 懐かしいというか、シンプルに楽しいですね(笑) チームメイトと一緒に住んでいるので、基本的に毎日英語。日本語はないですから。

 でも皆、私が知らない英語もいろんな例えを出して教えてくれたり、「今みたいな状況はこうやって言うんだよ」みたいなこともわかるまで教えてくれて、本当に優しい人たちです。


--ケミストリーができてきている感じですか?


 まだ1ヵ月ではわかりませんが、これから作っていけたらと思っています。でもいい人たちばかりなので、良い感触ですよ。


--チーム内でこの子はいい子だなぁと思うチームメイトはいますか? また、この子はすごいなぁ! と感じるプレーヤーは誰でしょうか?


 アメリカ人の子(前出、ハンナ・リトル)はすっごい皆を笑わせてくれたり、バスケットボールとは関係のない英語を教えてくれたりしますね。皆明るいですけど、この子は特に、スラングを教えてくれたり(笑) そういうのも楽しいですよね。

 なかなかやるなと思うのは、もう一人のアメリカ人のシューター(180cmのガード、クリスタ・リード)です。この子も優しくて、私ともう一人のアメリカ人選手との会話が成り立たないようなときに、さらに優しく言葉を教えてくれるので、プレーだけではなく普段から助けられています。


--2021-22シーズンはどんな抱負をお持ちですか?


 これまでにドイツリーグのチームと練習試合を一度しかしていなくて、まだリーグのレベルが正直わかりません。フランスの2部リーグのチームなんかとはやっていますが…。レベルがわからない中では、もちろん優勝したいですね。

 それと、日本人というだけで注目してもらえると思うのですが、何かリーグにそれ以上のインパクトを残せたらなと。チームを良くできるような貢献をできたらと思っています。

 

安間のリーダーシップに対するチームとコーチからの期待は非常に大きい(Photo courtesy of  Eisvögel USC Freiburg)

 

コロナ禍の急な移籍、ファンの激励が心にしみた

 

--過去2-3年、海外挑戦を考えていた間、その挑戦で目指していたのはどんなことでしたか?


 絶対に海外に! という思いではなかったんですが、何かの形で自分の実力を試したかったですし、日本人が海外リーグにいないじゃないですか。サッカーやバレーボールでは海外に挑戦する女子の選手が多いですが、バスケットボールだとBリーグからの選手はいても、女子のWリーグからはいません。でも私の中では日本の女子はできると思っていたので、私が試せたらなと。チャンスがあれば、という感じでした。


--特に言葉の壁と文化の違いを乗り越えるために、どんな準備をされてきたのですか?


 語学の勉強は3年前から始めていました。週に1-2回学校に通っていたんです。たぶんチームの皆は知らなかったと思いますが(笑)

 皆といるときに海外海外と言いたくなかったんです。それよりもまず、国内で結果を出さないと海外チームに見てもらえないですしね。トヨタ自動車で目指しているものを目指して、自分のやるべきことやればよいかなと思って、あとは代理人の方に動いてもらってというぐらいでした。


--周囲にも言わず、一人でよく頑張れましたね!


 自分のことなので、自分で準備しておけばと思い、あえて周囲には言いませんでした。それに、やりたいなと思って海外に行くなら英語は必要になりますし。自分だけで勉強する手もあったと思うんですけど、何から手を付ければよいかわからなかったので、とりあえず学校に行ってみるかなと。練習を終えてからの時間に通っていました。


--Wリーグ優勝にプレーオフMVP獲得も果たし、代表活動も一つの節目だったタイミングでの移籍でしたが、そうしたことが移籍の気持ちを特に後押ししたようなことはありましたか?


 いえ、その流れの影響ではありません。チャンスがあれば行きたいと以前からトヨタ自動車にも伝えて、会社の上の人たちともお話していましたから。

 もちろん昨シーズン優勝して、トヨタ自動車のメンバーも大好きですし、皆と一緒にプレーしたい気持ちも結構強いのですが、年齢的にも動けるうちに挑戦したくて、個人的に今シーズンか、めちゃくちゃ引っ張っても来シーズンまでに行けたらと思っていました。ここがギリギリかなというタイミングでお話をいただいたので、決めました。


--海外挑戦は長期的な考えですか? それとも1-2年で帰国して何かに展開したいお考えですか?


 できるだけここでやりたいですね。ただ、あまり先のことは考えていません。まずこちらで結果を残さないと、日本に帰ってからチームがあるかもわからないですし、こちらでチームを探せるかもわかりません。まずは目の前のチームのために頑張ります。そうすれば、動くとなったときに選択肢も増えるかなと思っています。

 ここでこれまでと違うバスケットボールや環境、文化に触れられることが、今後自分の財産になります。そうなるように、私として頑張りたいですね。


--フライブルクはどんな町ですか?


 すごくゆっくりとしています。町もオシャレですし、気候もいいです。人も優しくて、めっちゃ都会ではなく小さな町ですが、自然も豊かで、私は結構好きです。ゆっくりしていて、チームメイトもいい人たちばかりですし、気に入っています。


--大学の学園都市のような町のようですね。練習は普段大学の施設でやるのですか?


 詳しく把握できていないのですが、大学の体育館のようなところです(笑) チームの専用施設ではなく、年上の方々から小学生くらいの子たちまで、いろんな人の出入りがあります。レスリングなど、ドイツのオリンピアンや代表しか使えない施設も近くにあるんですよ。


--今は、安間選手としては自分のペースを作ってバスケットボールに専念することに意識が向いている感じですか?


 そうですね、こちらでは時間も場所も限られたりするので、今はその中でやっと環境にも慣れてきて、自分の時間に使うことができるようになってきました。ここから自分のコンディションをしっかり整えていきたいと思っています。


--シーズン開幕が楽しみです! 最後に日本のファンにメッセージをお願いします。


 コロナ禍で、日本にいる間にあまりファンの皆さんに会えませんでした。有観客の試合でもファンの皆さんとは接触できなかったり、コミュニケーションをとる機会がほとんど作れなかった中で、私が急に「行ってきます!」みたいな感じで海外にきてしまったので、申し訳ない思いがあります。

 私個人としてもトヨタ自動車としても、Wリーグファンの方々は応援してくださっていて、急な移籍にも「頑張ってください」というメッセージをたくさんいただきました。それが本当にありがたいです。

 引き続きトヨタ自動車を応援していただきたいですし、私個人も応援してもらえたらうれしいです。ちょっと遠いドイツに来て、時差もあって見るのが難しいかもしれませんが、私らしく頑張っていけたらと思っているので、引き続き応援してもらえたらうれしいです!

 

日本のファンへの想いがこもった言葉には、新たな挑戦への意気込みも感じられた(9月23日、ズーム取材より)


 安間が所属するアイスフォーゲルUSCフライブルクのブンデスリーガ2021-22シーズン開幕初戦は、ドイツ時間9月25日(土)午後7時(日本時間26日[日]午前2時)にティップオフ。以降3月半ばまで、14チームでホーム&アウェイの総当たり戦(1チーム26試合)を行い、その後上位8チームによるプレーオフへと進んでいく。

 

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取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)

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