FIBA女子U19W杯、日本は今後に注視の9位フィニッシュ

 勢いづいたU19日本代表は、次戦でイタリア代表(FIBAガールズランキング5位)に対し88-51で快勝。続く9-10位決定戦では、平下愛佳(トヨタ自動車アンテロープス)の23得点を挙げる奮闘などでフランス代表(同3位)にも68-62と勝利を収め、3連勝で大会を終えた。

 

 大会全日程終了後、薮内HCは「ハンガリーのデブレツェンという素敵な町でワールドカップができて、すごくうれしかったです。皆さんとてもやさしくて、日本のチームのサポートをたくさんしてくれました」と現地での貴重な体験と関係者への感謝を言葉にするとともに、今後の強化・育成に向けた意欲を次のように語った。「大会はとても日本チームにとって厳しい試合が続きました。残念ながら9位でしたが、選手は最後までエネルギーいっぱいでコートを走ってくれました。選手にとっても私にとっても、とても良い経験になりました。この経験を次にレベルアップするために、また日本に帰って頑張ります」

 

平下はオールラウンドな活躍でチームをけん引。最終戦ではフランス代表相手に23得点と大活躍だった(写真/©fiba.basketball)


目を見張る世界の3Pシューティングの成長ぶり


なお、最終的に今大会はアメリカ代表が金メダル、オーストラリア代表が銀メダル、そして開催国ハンガリー代表が銅メダルを獲得した。また、日本がグループラウンドで相対したマリ代表が4位、カナダ代表が5位、チェコ代表が6位という結果を見ると、U19日本代表にメダルをねらえる力があったことが感じられる。

 

 チームスタッツの主要項目ランキングでも、U19日本代表は平均得点(3位、75.6)、フィールドゴール成功率(5位、40.1%)、2P成功率(4位、46.6%)、3P成功率(3位、33.2%)、フリースロー成功率(3位、75.6%)、平均アシスト数(5位、18.0)、さらには平均ターンオーバー数(少ない順で3位、14.9)でトップ5に名を連ねていた。

 

 ただし、A代表が大きな武器としている3Pショットに関しては、世界の各チームが数字を上昇させてきている点が興味深く、今後注視が必要だ。今大会トップのアメリカ代表は40.2%で、2年前の前回大会(2位、29.5%)から10.7ポイント上昇している。前回大会のトップはオーストラリア代表の29.9%だったが、それに比べても伸び幅は10.3ポイントある。また、出場16チーム中、日本を含め5チームが30%を上回る決定率を残していた。

 

 例えば今夏の東京オリンピックでは、日本代表が40%の確率で3Pショットを成功させることが大きな話題となった。しかし今後、その確率は当然のものと認識されるようになっていくことが容易に想像できる。パリ2024に思いを馳せたとき、そこで勝つチームは実戦で強豪相手に50%を決めても驚かないチームなのかもしれない。

 

 日本代表も前回大会(4位、27.9%)に対して5.3ポイント上昇しているが、簡単に言えば、シューティングに関して世界の成長が日本の成長ペースを上回っている傾向だ。また、3Pショット重視でコートを広く使い、チャンスがあればペイントアタックという現代バスケットボールの潮流が、アンダーカテゴリーにも広く浸透していることも感じられる。

 

その中で、サイズがありフィジカルな上位国が、ロングレンジでも信じられないような高確率でゴールを射抜く時代が、近い将来にやってくるのかもしれない。日本はカテゴリーの別を問わず、この流れの中でどのような戦略を持って強化・育成に取り組むか。オリンピックに加えて今大会の総括も急務だろう。

 

「チームの成長を感じた」という薮内HC。今後強化・育成面での手腕に大きな期待がかかる(写真/©fiba.basketball)


☆FIBA女子U19ワールドカップ最終成績
1位 アメリカ
2位 オーストラリア
3位 ハンガリー
4位 マリ
5位 カナダ
6位 チェコ
7位 スペイン
8位 ロシア
9位 日本
10位 フランス
11位 イタリア
12位 エジプト
13位 韓国
14位 チャイニーズ・タイペイ
15位 アルゼンチン
16位 ブラジル

 

☆FIBA U19 女子ワールドカップ 日本代表チーム

■スタッフ
※プロフィールは役職、氏名、所属
チームリーダー 庄子梢枝 JBA
ヘッドコーチ 藪内夏美 JBA
アシスタントコーチ 佐久本 智 ENEOSサンフラワーズ
アシスタントコーチ 石川幸子 日立ハイテク クーガーズ
スポーツパフォーマンスコーチ 佐藤晃一 JBA
トレーナー 志村愛美 愛美鍼灸治療院
トレーナー 山本愛乃 SOL整形外科
マネージャー 高木歩幸 JBA
テクニカルスタッフ 梅津ひなの JBA

■プレーヤー
※プロフィールは背番号、氏名、ポジション、身長(cm)/体重(kg)、生年月日(年齢)、所属(出身地、出身校)

#0 山田 葵(YAMADA, Aoi) PG 166/61 2003/02/10(18) 新潟県 筑波大学1年(新潟県、東京成徳大学高校)
#1 江村優有(EMURA, Yua) PG 160/60 2002/12/04(18) 早稲田大学1年(長崎県、桜花学園高校)
#2 林 真帆(HAYASHI, Maho) SG 174/69 2002/02/22(19) 東京医療保健大学2年(神奈川県、岐阜女子高校)
#5 塩谷心海(SHIOTANI, Kokomi) PF 178/78 2002/01/06(19) 大阪人間科学大学2年(埼玉県、大阪薫英女学院高校)
#9 荻田 美(OGITA, Miyu) SG 175/70 2002/09/13(18) 筑波大学1年(京都府、京都精華学園高校)
#10 舘山萌菜(TATEYAMA, Mona) SF 177/70 2002/11/06(18) 白鷗大学1年(北海道、札幌山の手高校)
#14 平下愛佳(HIRASHITA, Aika) SF 177/71 2002/01/14(19) トヨタ自動車アンテロープス(愛知県、桜花学園高校)
#17 三田七南(SANTA, Nana) SF 178/72 2002/10/02(18) ENEOSサンフラワーズ(新潟県、昭和学院高校)
#36 粟谷真帆(AWATANI, Maho) C 182/75 2002/12/06(18) 筑波大学1年(茨城県、八雲学園高校)
#42 田中平和(TANAKA, Ufuoma) C 181/76 2002/02/10(19) 白鷗大学2年(埼玉県、桜花学園高校)
#52 松本新湖(MATSUMOTO, Niko) PG 166/65 2002/12/06(18) 東京医療保健大学1年(三重県、岐阜女子高校)
#75佐藤多伽子(SATO, Takako) SF 176/66 2002/07/19(19) 白鷗大学1年(栃木県、桜花学園高校)


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)

9-10位決定戦で格上のフランス代表を破り笑顔をはじけさせたU19女子日本代表(写真/©fiba.basketball)

 

8強入りをかけた対スペイン戦、江村の20得点も及ばず日本は惜敗を喫した(写真/©fiba.basketball)

 

田中のフィジカルな奮闘は大会を通じてチームの大きな力となっていた(写真/©fiba.basketball)

 

平下はオールラウンドな活躍でチームをけん引。最終戦ではフランス代表相手に23得点と大活躍だった(写真/©fiba.basketball)

 

「チームの成長を感じた」という薮内HC。今後強化・育成面での手腕に大きな期待がかかる(写真/©fiba.basketball)



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