Bリーグ

Bリーグ

2022/09/29

佐藤誠人(横浜エクセレンス#14)、2022-23シーズンの夢構想

――「ハマのダンカー」的横浜エクセレンス2022-23シーズン展望

 

 

衝撃的スラムダンクを見逃すな

 

 恵まれた才能を持ちながら、それが世間に知られることなく消えていくということは、これまでに何度あったのだろうか。日本のバスケットボールの歴史を変えるような逸材がいたにもかかわらず、小柄だから、実績がないからと表舞台への推薦を得られずにいる間に花盛りの年齢を過ぎてしまったり、無理な訓練で体を壊してキャリアを終えなければならなかった無念のタレントが、数えきれないほどいるだろうことを我々は直感的に知っている。


 佐藤誠人――横浜エクセレンスが2022-23シーズンに飛躍を期待するスモールフォワード。身長189cmはこのスポーツ、このポジションにおいてプロの舞台では小柄だ。しかし佐藤には、尊敬してやまない両親が授けてくれたまじめさと研究心、果てしなく夢を追いかけていける強い心、そして「夢のような」と形容したくなる驚くべき跳躍力・身体能力がある。それらを武器に佐藤は、バスケットボールの世界で注目を浴びる立場となった。


 バスケットボールの神様は、佐藤誠人に宿った驚異的な能力が埋もれてしまうことを望まず、その才能がもたらす喜びを人々と分かち合おうと決めたようだ。そして来るべき2022-23シーズンは、前シーズンに続いて横浜の人々が、その喜びを最大限に味わえる特等席に座る権利を持っている。

 

 


 佐藤ならではの衝撃的なスラムダンクを目の前で見せてもらった。シンプルなトマホークさえものすごい。勢いよくゴール方向に走りこみ、空中高く舞い上がり、かなり長い時間滑空し、その間わしづかみにされたボールはリムのはるか上をスー…っと移動していく。ゴールに襲いかかる直前、佐藤の体は背中の方向に弓のようにしなり、渾身の力とともに振り下ろされるボールがガツンという鈍い金属音とともにネットを通過し、床にたたきつけられる。


 空中でボールを振り回すようなアクションで叩き込むウィンドミルダンク、マイケル・ジョーダンばりにボールを空中でゆりかごのように揺らしてから決めるクレイドルダンク、さらには「オフザウォール(Off The Wall)」と自ら名付けたトリッキーなオリジナルダンク。成功するたびに、見ている方は踊りだしたくなるような衝動に駆られてしまうのだ。

 

 

総合力を高めて“ネクストレベル”にチャレンジ

 

 佐藤の魅力が広く知られるようになったきっかけは、間違いなくこのスラムダンクだった。ソーシャルメディアに投稿した自身のダンク映像が広まり、さらには昨シーズン中、コロナ禍で中止となったBリーグオールスターに代わって開催されたオンラインイベント「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2022 IN STUDIO」の中で行われたべストプレーヤー投票のダンク部門で、佐藤のダンクが4位として紹介されるという流れを生み出したのだ。横浜に“鳥人”佐藤誠人あり――ダンカーとしての佐藤の名は、こうしてバスケットボールコミュニティーで知れ渡ることとなった。


 ただし、それだけで生きていけるほど、この世界は甘くない。昨シーズン横浜エクセレンスに移籍して来る段階で、佐藤自身それをしっかり認識していた。トライフープ岡山で過ごした2019-20シーズンからの2年間、佐藤の出場試合数は23試合、平均4.1分にとどまっている。その最大の要因がディフェンスだった。「横浜エクセレンスでは石田さん(石田剛規GM兼HC)がディフェンスに重きを置く方だと聞いていたので、ディフェンスができないと試合に使ってもらえないとわかっていたんです」


 そのため昨シーズン開幕前には、ワークアウトでディフェンスの土台作りに取り組んだ。「普段の練習からプレッシャーをかけるように意識しましたし、試合中も(スピードのある)ポイントカードにも積極的にマッチアップしました。そうしているうちに少しずつ慣れてきて、試合にも多く出ることができるようになったと思います」。結果として横浜での最初のシーズンは、岡山時代の2シーズン合計の倍近い45試合に出場(うちスターター起用24試合)し、コートに立つ時間の長さも平均14.9分間まで伸びた。


 パフォーマンスももちろん大きく上昇している。平均4.4得点、3P成功率30.1%、1.6リバウンド、0.4アシスト、0.38スティールはすべてキャリアハイ。跳躍力に自信を持っている身からすれば、シーズンを通じて9本だったブロックショットは「もっとできる」と感じたに違いない。しかし実は一昨シーズンは1本もなかったのだから、これもやはり成長の跡を見せている項目の一つだ。


 自身の成長を感じるとともに、佐藤はチーム側からの期待も感じていた。「最初にスターターに使われるようになった理由にはたぶん、『ミスしてもあとで取り返しがつくんだから思いっきりやってこいよ』というコーチ陣の期待や後押しもあったと思います」。そんな期待に応えるために「自分が出た方がディフェンスの士気が高まるなというのを感じてもらえるように、コートに立ったら激しく、相手が嫌がるディフェンスを意識していました」と佐藤は昨シーズンを振り返る。

 

 

アグレッシブさを増したプレーで2022-23横浜エクセレンスの飛躍を支えたい

 

 今シーズンの横浜エクセレンスは念願のB2昇格を目指し、クラブとしての体制を大きく変えている。昨シーズンは19勝29敗(勝率.396)でB3の11位。そこから一転B2昇格を狙うために、大幅なオフェンス力の向上とこれまで通りディフェンス面で高い意識を維持することを掲げ、クラブ全体として新体制を構築し、ロスターの補強を進めた。


 新キャプテンの俊野達彦やベテランの西山達哉らがそろい、石田GM兼HCのオフェンスを適切な判断の下で展開できるポイントガード陣は頼りがいがある。フロントラインには、ライアン・ステファン、ジョーダン・フェイゾンと東京エクセレンス時代にリーグ制覇を果たしたビッグマンが戻ってきた上に、チーム最長身213cmのベイリー・スティールというあらたな得点源が加わった。


 ウイングにも試合巧者の増子 匠や大﨑翔太ら能力の高いタレントがそろう。その一画として佐藤にも、期待とともに昨シーズンよりも大きな責任が課されてくる。「僕としては、積極的ではあっても無理して得点を獲る必要はないと思っています。スクリーンを使って点を獲れるもっとうまい選手がいますから、僕のディフェンスがその選手にヘルプに行くと思うんですよ。その状況で僕は、その選手たちがきついというときに助ける選手になりたいです」というのが佐藤の言葉。「3Pショットを武器に得点も獲れてという強さを見せながら、ほかの選手で点数が獲れているときはディフェンスを頑張ります」


 あらたな責任を感じる中で、オフェンスではミスマッチを突いてペイントアタックからダンクも狙っていく。189cmの佐藤が試合中にペイントアタックを仕掛ければ、当然ながら自分よりも大きな相手に向かって突っ込んでいく状況が多くなる。そのたび佐藤は勇気、どん欲さ、どう猛さなどの心の強さを試される。その瞬間を乗り越えていくには、自分よりも20cm、ときには30cm近く大きなビッグマンを空中で吹き飛ばして道をこじ開ける気迫と、それを実際に可能にする身体能力のどちらも必要だ。


 これまでも、ウォームアップから全力ダンクを披露してファンを楽しませてくれる存在だったし、昨シーズン終盤の八王子ビートレインズ戦第4Qに叩き込んだ同点ダンクは、昨シーズンのB3リーグ全体を見渡しても最も印象に残る瞬間の一つと言って過言ではない。しかし今シーズンは、さらにチームに勢いをもたらす存在になるためにも、アグレッシブさを高めることが責任の一部だ。「昨シーズンの僕はどちらかっていうとびびっていたところがありました。外国籍選手のブロックに対してダブルクラッチでかわそうとして外したり…、練習中もそうだったんです。でも今シーズンはいけると感じたら思いっきり突っ込んで、ブロックされてもチャレンジしていきます」


 ディフェンスでも、クイックネスにたけたポイントガード相手でもハッスルで魅了したいと佐藤は話す。昨シーズン注目を浴びるようになってみて、B1レベルで活躍できるようになりたいとの思いも膨らんだ。数値面での目標を聞くと、大量得点などよりも試合への貢献度を示すエフィシエンシーでプラスを維持し、「できれば5.0以上」にしたいという。派手なプレーで脚光を浴びようとするようなメンタリティーではなく、総合力の向上を目指し、そのために今の自分に必要な目標設定をできていることが、こうしたコメントから伝わってくる。

 

 

果てしない夢をかなえるために

 

 実はオフ期間に行われていたFIBAワールドカップ2023アジア地区予選やFIBAアジアカップ2022で、須田侑太郎(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)のプレーに強く刺激を受けたのだという。須田は自分が得点できる流れでは次々と3Pショットを沈め、そうではない流れでは、打つべきショットを打つことはもちろんだが、オフェンスで無理をせずディフェンスで的確なハッスルを提供していた。


 目指すところは須田が体現していたような日本代表レベルの3&Dプレーヤーで、その目標に向けた思いは周囲の想像以上に強い。「僕のやりたいポジションには馬場雄大選手とか須田選手がいて、僕より身長が高いし能力も上だとは思っています。でもその人たちにないものを探して、隠された秘密兵器じゃないですけど代表選手も目指したいという気持ちはあります」。こうした思いをわかっているからか、石田GM兼HCも9月6日に行われたクラブの新体制発表会見で、佐藤について「能力は日本代表レベル」と話していた。


 新潟県五泉市立愛宕中学校から北越高校、新潟医療福祉大学と進み、B3の舞台へ。インカレ出場の実績があるとはいえ、率直に書けば無名の立場からプロ入りを果たした佐藤。それ自体が非常に大きな飛躍の物語だが、今シーズン横浜エクセレンスをチームとして躍進させることができれば、そのまま佐藤自身もさらに数段上のステイタスまで到達することができる。


 B1での活躍、日本代表――そうした思いが佐藤の心に沸き起こってくる限り、飛躍の物語は続いていく。実際に佐藤はここまで、夢を夢で終わらせずにやってきた。バスケットボールの神様もきっと、「ありがとう、もう十分だよ」とはまだまだ言わないだろう。

 


☆佐藤誠人からブースターの皆さんへのメッセージ

 

 

 いつも応援していただいてありがとうございます。今シーズンの横浜エクセレンスは昨シーズンからチームも大きく変わって、経験豊富な選手が加わってリフレッシュされたメンバーで、戦術的にも能力的にもすごい見応えのあるバスケットが展開されます。フォーメーションでも様々なオプションがあって、そういった勉強をしたい方にもいろいろと面白く見てもらえると思います。


 個人的には、常に本気のウォームアップダンクはもちろん、試合中も接戦の場面のプレーとか、ディフェンスでのハッスルをたくさん見に来てほしいと思っています。キッズたちには絶対ダンクを見に来てほしいなと思いますので、応援をよろしくお願いします!

 

写真/石塚康隆(月刊バスケットボール)

取材・文/柴田 健(月バス.com)

  • マグダビッドx福岡第一
  • FL-UX
  • NOBIRUNO
  • かみすバスケットボールフェスタ
  • ザムスト×正智深谷
  • ウィンターカップ2022
  • インカレ2022
  • 全中2022
  • インターハイ2022
  • 月バスカップ2022-U15
  • 自費出版のご案内