月刊バスケットボール5月号

堂脇さち(開志国際)、試合の流れを一変させたエースの集中力【インターハイ2021】

 3Qを終えた時点でスコアは45-50。

 

 3回戦で小林(宮崎)と対戦した開志国際は劣勢に立たされていた。それまでの三つのクォーターでは小林のゾーンディフェンスとアウトサイドショットなどのアグレッシブなプレーを受け、なかなかリードを取ることができずにいたのだ。

 

「うちの選手よりも個々のスキルや判断力、スピードがあるのは最初から分かっていたので、勝負するところはそこではなくて強さ」と、伊藤翔太コーチが分析していたが、序盤は個々の突破力とコンビネーションを武器に戦ってくる小林に対して相手の土俵で戦ってしまったことがビハインドの原因となってしまった。

 

苦しいときこそチームを引っ張る。これぞエースという活躍だった

 

 しかし、そんな雰囲気を一変させたのが開志国際の絶対的エース#4堂脇さちだった。苦しい時間帯に「自分が打てるチャンスがあるときには点を取りにいこうと決めていた」とアグレッシブにリングに襲いかかり、タフなミッドレンジジャンパーから3Pシュート、ゴール下に切れ込んでバスケットカウントを獲得するなど、連続10得点。

 

 流れを渡すまいと、これぞエースという活躍でチームを勢い付けた。#4堂脇のプレーに導かれたチームは4Qに入ると#5瀬川怜奈がゴール下のシュートをねじ込んでついに逆転。その後は1年生の#7曽根妃芽香が価値ある3Pシュートをヒットするなど、流れを一気に引き寄せ、この逆転以降、小林に再逆転を許すことはなかった。

 

 逆境を救い、チームにリズムをもたらした#4堂脇の活躍には伊藤コーチも「あの時間帯の得点はエースの意地でしたね。決して綺麗なシュートにはなっていませんでしたが、タフショットを入れてくれたので、やっぱりエースの仕事だったと思います」と、賞賛を惜しまない。

 

 

「負けるかもしれないということは考えずに、とにかく勝つという気持ちが自分の中にもチームの中にもあったので、勝つことだけ考えて今に集中しようと思って戦っていました」と#4堂脇。逆転して以降も「全国という舞台では簡単に点差もひっくり返ってしまうかもしれないので、チームの中で『気を緩めずに締めていこう』と言って戦っていた」と最後まで集中力を切らさず。最後は8点差(69-61)で準々決勝への切符を手にしたのである。

 

 次の相手は優勝候補の岐阜女だ。強敵との対戦に向けて#4堂脇は最後にこう語った。

 

「自分たちは練習からリバウンドは徹底してやってきたのでそこをしっかりと最後までやり切って、チームが苦しい状況でもみんなで耐えてすべきことをやり続けようと思います」

 

写真/石塚康隆

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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