月刊バスケットボール5月号

Akatsuki Japan女子日本代表、今日からラトビア代表と2試合 - 三井不動産カップ2022(宮城大会)開幕

 バスケットボールの女子日本代表が、FIBA女子ワールドカップ2022を前に国内で行う最後の強化試合となる三井不動産カップ2022(宮城大会)が、8月11日から2日間ゼビオアリーナ仙台で行われる。ラトビア代表のメンバーも公開となり、平均身長182cmという対戦相手の布陣も明らかになった。

 


ワールドカップに向け、女子日本代表の選考も最終段階に入った(写真/石塚康隆 月刊バスケットボール)

 

ディフェンス力、決定力を証明したい日本

 

 恩塚 亨HCは大会を前にした合宿中のオンライン会見で、大事な選考過程でもある今大会で日本のチーム力をしっかり表現することを目標として挙げていた。「世界一のアジリティーで高さを凌駕する」ことをチームのコンセプトとして掲げる女子日本代表のチーム力の土台は、頭脳的に、かつ豊富な運動量を生かして40分間プレッシャーをかけ続けるディフェンス、果敢なペイントアタックと連係の良さを生かし、3Pショットも武器に展開するオフェンスということになるだろう。それらがどんなレベルで達成されるかは、今大会の大きな見どころだ。


今年に入ってからの日本は、2月のワールドカップ予選2試合(カナダ、ボスニア・ヘルツェゴビナと対戦)、5月末から6月頭にかけてのオーストラリア遠征での同国との3試合、6月の三井不動産カップ2022(千葉大会)におけるトルコ戦2試合と国際試合を7試合戦った。戦績は5勝2敗とまずまずだ。


☆FIBA女子ワールドカップ2022予選
対カナダ 〇86-79
対ボスニア・ヘルツェゴビナ ×82-87


☆オーストラリア遠征
第1戦 ×66-72
第2戦 〇56-55
第3戦 〇69-67


☆三井不動産カップ2022(千葉大会) トルコ戦
第1戦 〇77-49
第2戦 〇83-57

 


この間で目を引くのは、7試合の平均失点66.6というディフェンス力の高さだ。逆にディフェンスでこらえきれない試合では苦戦しており、失点が70点以上の試合が1勝2敗。勝った試合はいずれも相手を60点未満に抑えることができていた。いずれも高さのある相手と戦ったオーストラリア遠征と三井不動産カップ2022(千葉大会)では、平均失点が60.0まで下がっており、対応力の高さが非常によく表現されていた。

 


トルコとの一戦で相手に厳しいプレッシャーをかける安間志織(写真/石塚康隆 月刊バスケットボール)


一方気になるのはオフェンス面で、ペイントにアタックした際に相手の高さの前に思うようなフィニッシュにつなげられない場面や、2次的な合わせを経て得点につなげることに難しさを感じさせていたのも事実だ。後者に関してはパスをつないだ後の3Pショットが思うように決められていない。


上記7試合における3Pシューティングを振り返ると、2月の2試合ではカナダ戦が40.0%、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦が46.5%と高確率だったが、以降の5試合はいずれも30%に届かない数値となっている。今回は2月の2試合で50.0%(16本中8本)の成功率を残した林 咲希(ENEOSサンフラワーズ)が故障でメンバーに入っておらず、本番のワールドカップ出場にも黄信号がともっていることを恩塚HCは明かしている。その中で恩塚HCとしては、東藤なな子(トヨタ紡織サンシャインラビッツ)らの奮起に期待するコメントを残していた。


東藤のほか宮澤夕貴、オコエ桃仁花(ともに富士通レッドウェーブ)や平下愛佳(トヨタ自動車アンテロープス)らシューター陣は、合宿を経て調子が上がってきていることをそろって言葉にしている。ただし、オーストラリア遠征以降の5試合に限ると156本中41本成功の成功率26.3%という現実を受け止める必要があるだろう。これは実戦で入れることで証明するほかに威力を表現するすべはない。

 

 恩塚HCによれば、より実戦に近い負荷を高めた3Pシューティング・ドリルを行っている中で確率も上昇しているとのことで、ラトビアとの2試合はこの側面についての大事なテストと言える。安間志織(イタリアリーグ、UMANA REYER VENEZIA)によれば、シューターの確率を高めるためのパスのクオリティーもチームの課題になっているとのことで、どのような連係からオープンルックを見つけていくか、そこでどれだけ「ストライク」のパスを渡せるか、プレーヤーたちにとってはスキルの見せどころであり選考に向けた大事な要素にもなりそうだ。

 


恩塚 亨HCは個々の代表候補たちの仕上がりに自信を見せている(写真/石塚康隆 月刊バスケットボール)


もう一つ、ペイントアタックした際の対応について、オーストラリアとの3試合に関してボックススコアとショットチャートからペイントでの決定率を手計算で出してみると、以下のような数字となった。

 

☆各エリアでの決定率
第1戦 ペイント 59.2%(16/27) その他2P 0.0%(0/6) 3P 25.9%(7/27)
第2戦 ペイント 34.3%(11/32) その他2P 12.5%(1/8) 3P 25.9%(7/27)
第3戦 ペイント 59.2%(16/27) その他2P 37.5%(3/8) 3P 28.6%(8/28)
3試合 ペイント 50.0%(43/86) その他2P 18.9%(4/22) 3P 26.8%(22/82)

 


トルコとの第2戦でゴール下から得点を狙う東藤なな子。こうした場面がどれだけ作れるかも今大会の見どころだ(写真/石塚康隆 月刊バスケットボール)


日本がフィールドゴールを3Pエリアとペイントから、意図したとおり狙うことができていることが、このデータから見えてくる。ただしどのスペースからも満足のいく決定率が出せていない。そのためこれらの3試合で、日本の平均得点は63.7にとどまっている。トルコとの2試合に関してはデータが手元にないものの、ペイントでのフィニッシュや判断がオーストラリア遠征時よりも研ぎ澄まされていた印象はあったが、さらに上昇させられるかどうか。

 

 本番のワールドカップではこれらの数値を高めていかなければ上位チームを倒すのは難しいのであり、それは日本のプレーヤーたちも認識している。宮崎早織(ENEOSサンフラワーズ)はオンライン会見で、ラトビアの長身プレーヤーたち相手にペイントできっちり決めきることへの意欲を語っていた。また、今回2月以来の代表復帰となる身長193cmのセンター、渡嘉敷来夢(ENEOSサンフラワーズ)がどのようなプレーを見せるかも、非常に楽しみな見どころの一つだ。


ワールドカップに向けた最終選考に関しては、WNBAで活躍中の町田瑠唯も含め確定的に言えることは何もないが、傾向としてうっすら見える方向性を挙げるとすれば、以下の点があげられる。上記7試合中の直近3試合では赤穂ひまわり、髙田真希(デンソーアイリス)、オコエ、安間、東藤の5人がスターターを務め、結果としてすべての試合で勝利できており、個々のパフォーマンスとしても光を放っている。赤穂に関しては候補の中で唯一7試合すべてでスターター。直近のトルコとの第2戦で10得点、10リバウンド、2スティールと調子を上げている。

 

 この5人にとっては、安定したパフォーマンスを続けられるかが一つのカギのように思え、その一方で渡嘉敷をはじめとしたそれ以外のプレーヤーたちに関しては、どのような機会を得、どのようなパフォーマンスで応えるかがカギ、というように思える。

 


高さのあるラトビア代表を崩していざ本番


来日するラトビアはFIBA世界ランキング24位で、同8位の日本からは格下となるが、だからと言って高さの面で常にアドバンテージを取られる日本が気を緩めることはまったくできない要注意の相手だ。直近の国際大会であるFIBAユーロバスケット2023予選のグループラウンドでは、最初の2試合に勝利して本戦出場権獲得に向け好位置につけている。

 

 中心になりそうなのは、同大会で現時点まで平均8.5アシストを記録してチームのアシストリーダーとなっているプレーメイカーのエリーナ・バブキーナ(Elina Babkina)。バブキーナは平均12.0得点もチーム3位だ。また、3P成功率60.0%、平均5.5リバウンドがいずれもチーム2位のシューティングガード、イェヴァ・プーヴェレ(Ieva Pulvere)も警戒すべき主力の一人だ。


最長身はセンターのマルタ・クリスタ・ミスチェンコで194cm。NCAAディビジョン1のテキサス・エル・パソ大、ディビジョン2のウィンゲイト大でプレーした経歴があり、現在はスペインのクラブ、エステパナ所属となっている。190cm以上はミスチェンコのほかにカルリナ・ピラベレ、ラウラ・メルデレ(いずれも190cm)と3人が来日している。メルデレはFIBA U17ワールドカップ2018に出場した際、今回の候補に名を連ねている野口さくら(シャンソン化粧品シャンソンVマジック)、平下らを擁した日本と対戦して15得点、18リバウンドを記録したプレーヤーだ(試合には日本が75-57で勝利)。


ラトビアの高さは脅威だが、ワールドカップ優勝を狙う日本にとっては「世界一のアジリティー」で凌駕すべき対象だ。この2試合で実力を証明できれば、本番に向け大きな弾みになることだろう。

 

三井不動産カップ2022公式サイト


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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